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さよならマーチェンナイフ  作者: 湯島結代&水鳴倫紅
幼女編
2/28

淡雪と鮮血

冷たい白が、口から漏れ出る。

吐息すらも、凍り付いているという訳か。

「どーするかなぁ……どーすればいいんだろ」

一歩前へ、二歩先へ。ふらふら。

上を見上げると、氷がはりついた樹、それから雪もひとひら、ふたひら。


くいくい、と誰かに服を引っ張られる。

ずいぶん下の方だが、何だろうか。

見下ろすと、白い犬。

真ん丸な目で、見上げてくる。

それからふいっと、私の前を歩き出す。

「待ってよっ!」

私は包丁を持って、犬を追いかけた。


ふいっと、雪に埋もれて(つまづ)いた。

吹き上がる鮮血。そう、私は犬を刺してしまったんだ。

「っぅう!?」

あわてて傷口を押さえる。

傷口は凍り付いてピキピキと音を立てる。

しかしまた鮮血が吹き上がり、しかしすぐに止まった。

「わん」

何事もなさそうに、犬は鳴く。

それから、犬はまた歩き出した。

私は犬の後ろを、一歩一歩付いていった。


「くうん」

静かに、犬は誰かに寄り添う。

それは鎖につながれて雪に埋もれる男性。

ひやりと冷たく、死んでいるかのよう。

目もつぶられている。

眠る王子様、のような……。

キスで起こすのも気持ちが悪いよね!

それに刺したってどうせ、犬みたいに治るんだし!

「ブッ刺しー!」

噴き出した鮮血は、温かかった。

しかし男性は目覚めない。


「うぅー」

どーしたら、良いんだろ……。

犬が私の服をまた、引っ張る。

そしてつながれた鎖をかむ。

あっ、これを切り離せばいいんだ!

包丁を当てると、たやすくそれは切り離された。


「っ、ん……」

ゆるりと男性のまぶたが開く。

「おっはよー!」

なぜか彼を、知っている気がした。

「おはよう、わん。

それから……僕を助けてくれてありがとう、お嬢さん」

男性は私を見て、へにゃりと笑ったのだった。

2話目&2話目サブタイトル担当 水鳴 倫紅

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