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さよならマーチェンナイフ  作者: 湯島結代&水鳴倫紅
ヘタレ編
19/28

燃える

「それじゃあ、この国の案内をするよ」

幼女の手を取る。

僕の手も冷たいけれど、それ以上に冷え切っていて凍り付きそうだ。

……少しでもあったまると良いなぁ。


雪は静かに沈み込む。

幼女は足をとられてしまいそうになっている。

だからそのたびにそっと手を当てて支えるんだ。


「ここが街だよ」

雪の降り注ぐ、ちいさなバザール……商店街。

雪のせいか、ひどく静かだ。

小さな宝石の中に灯った光が、街を照らして、あか、あお、きいろ。

幻想的な光景だ。


「――人がいない?」

冬とはいえ商店街だ。

この世界の常識は分からないが――人が一人もいないのはおかしい。


「普段だったら、僕の周りに人が集まってくるというのに……」

役割的には、そのはず。

集まってくるというのは言い過ぎかもしれないが、一人くらいいないのか?


「寒い……」

幼女が震える。

凄く冷たい手だし、ちょっとやそっとさすっただけじゃ温まらないだろう。

それなら、どうする? 気が咎めるが――。

幼女を風が当たらない軒下へ連れて行った。


「ここを掘れ、わん」

そう言うと犬は楽しそうに穴を掘りだした。

よし、ここが本当に商店街なら。

「ちょっと待ってて」

幼女に白布をかけて、お店を探した。


ここでは編みぐるみが喋った、ということは。

何か魔法的な存在があるのかもしれない。

魔法でもいい、科学でもいい、何か火を起こせる道具があれば。


取りあえず目についた雑貨屋に入る。

おかしい、店員が一人もいない。

ただ「ご自由にお取りください」と書かれたコーナーがあった。

そこには、薪と、火打石?

都合がよすぎるが、これをもらうしかないか。


薪を雪の穴の中に放り込む。

すぐに雪が水に溶けて意味がなくなってしまうだろうが、ないよりはましだ。

……とはいえ、火打石で火をつけた経験なんてない。

かんかんかん、そう簡単につかないよな。

無心になって打ち合わせて何とか火花が出た。

薪に移して、簡素な焚火の完成だ。


「これであったかくなるはずだよ」

幼女に向けて微笑む。

彼女はゆっくり温まりに行く。


……。


急に炎が燃え広がった。

幼女の方へぶわっと近づく。

「危ないっ!」

叫んで幼女をかばう。

やばい、炎が燃え移った――熱い以外に考えられない。

世界は白に染まった。


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