さよならマーチェンナイフ
15話担当水鳴倫紅
15話目サブタイトル
何か、夢を見ていた気がする。怖い夢。
何を、何をしていたんだっけ?
・・・ああ、そっか。私は彼と2人で冒険して、それで、それで・・・。
刺のステージまで来て、彼は、あのヘタレは・・・。
台座の所、出血多量で力尽きたヘタレ……。
足だけでなく、体の全てが傷だらけだ。
雪で眠っていたあの時より、格段にグロテスクだけど――。
でも、愛しかった。
助けなきゃ、助けたい、どうしたら助かる?
ふと、ポケットの中を探る。
ことり、落ちてきた飴玉。それは、最初の部屋で、見つけたものだ。
はっ、これは栄養なんだ! 口に入れてあげなくちゃ!!
無理矢理、彼の口に飴玉をねじ込んだ。
「ん……? お嬢さん……?」
ヘタレは目覚め、ぼんやりとした顔で言う。
私は、彼に抱き着いてしまった。
「どうしたの……?」
ヘタレはまた、眠ってしまいそうだった。
だから、その前に私は叫んだ。
「ごめんねっ、ごめんねっ、こんなに傷つけて!! このステージにある棘、この棘は拒絶、私の拒絶そのものなんだ! お前のことも……拒絶、していたの! でも……もう、拒絶しない! 私、お前と……生きていきたいんだっ!!」
きつく、きつく抱きしめても、血は流れ出さなかった。
むしろ傷口は少しずつふさがって行った。
はっ、とヘタレは目を見開く。
「お嬢さん……×××!! 帰ろう!! 一緒に」
私達は、光り輝く玉に触れた。
一瞬周りは見えなくなったけれど、二人なら大丈夫!
――――***―――***―――***―――***―――***――――
二段ベッドのようではあるが、下がベッドになった机が、二組。
私はその間の、カーペットの上でぼんやりとしていた。
――いや、一人では無い。
ゆっくり見渡すと、柔らかく微笑む彼。
カーテンから差し込む光に照らされて、輝いていた。
そっと、手を取られた。
王子様のように、優しい儚い手つき。
それでも言葉は大胆に。
「――僕と、結婚してください」
そう。私は子供でない。あの姿は、偽物の姿。
本当は、彼と結婚できる年齢だったんだ。
頬がかっと、熱くなった。
それからじわり、涙がにじむ。
嬉しいんだ、もう寂しくも怖くも、気持ち悪くもないの。
だけど、ひどく恥ずかしくて。
「な、何馬鹿なこと言ってるの? 結婚なんてするはずないでしょ? 意識なんてっ、してないしっ!! でも、でもっ!! 出来るなら一緒に暮らしても良いよっ!!
だから、ここから連れ出して! ×××っ」
それはナイフのように直球で、でも突き刺さるよりは染み渡る言葉――だったら良いなぁ。
ここから逃げ出せたら、楽しくなれる「包丁」なんていらなくなるから。
だから――さよなら、さよなら! マーチェンナイフ。
第一部完
しばしストック貯の為お休みをいただき、来年1月から3月くらいに第2部開始予定です。




