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step.7


 ごめんね、イチ……と思う。

 ここは、物分かりのいい友達を演じるべきところなんだろうな。でも、無理……全然ムリ!

 だって、好き。

 あなたが 大好き なの。



「姉、なんだけど」


「 へっ?! 」

「聖也! アンタねー少しは間をつくりなさいよっ、ツマンナイでしょ?」

「姉さんのためにつくる間はないよ」

「なんですって?」

「………」

 姉、あね、同じ親から生まれた年上の女子、つまりイチの身内っ。

 うわーっ、はじめて見た!

 そっかー、顔立ちが好みだと思ったらイチと似てるんだ。整ってるワケじゃないけど愛嬌があって、どことなく優しい感じ。癒し系、って言うの? 女の子にしたら、すっごく可愛いんだなー。気付かなかった。

 イチに文句を(見た目とは違って結構性格はキツいのかな?)マシンガンのように発射していたお姉さんが、こっちを見たから必然的にわたしと目が合った。

「わっ! すいません……えっと、二宮穂乃香です。はじめまして」

 自分の最初の態度があまりに失礼だったことに気付いて、慌てて頭を下げる。

 まさか、お姉さんだったとはっ!

 第一印象最悪じゃんっ。

「ホントにねー、弟の部屋でそーんな格好の女の子に敵視されるなんてビックリよ。聖也は真面目なんだから、遊びならやめてやってね。ホラ、前に会った 清楚な 女の子の方が聖也には合ってると思うな♪」

 最後の言葉は、隣にいるイチに対してのお姉さんの言葉だ。

 ズキッとする。

 そう。きっと、それがイチの 本当の 彼女なのだろう。

 「遊び」そんなつもりはないけれど、確かに今の状況を見ればお姉さんの心配はもっともだった。

 自分のブラウスの下から伸びた何もつけてない生足を見つめて、ぐっと唇を噛みしめる。

「着替えて、きます」

 ペコリ、と頭を下げて寝室に戻る。

 戻ろうとした時に、イチが来て「気にするなよ」と言ってくれたけど……落ちこんだ。

(ダメだー、失敗した。彼の身内に嫌われるなんて……ありえないよ)

 ニノ、一生の不覚です。




 キチンとした服装に着替えてからイチと目覚めのコーヒーをとった。けれど、目覚めのコーヒーってほど雰囲気は甘くはならない。

 そこには一緒に彼のお姉さんが座っていて、イチにメニューの注文をつけ、何故かわたしの前にも立派な朝食御膳が並べられている。

 ふんわりご飯と赤ミソお味噌汁にこんがり焼き魚。だ、大根おろしまで。

 ふわあ! イチ、完璧だよ、垂涎モノだよ、惚れ直したよっ。ステキ!!

「いただきます!」

 手を合わせて、張り切ってお箸をお味噌汁に投入。うふふ。

「シュンとしてたクセに図々しい子ね? 図太いっていうか欲望に素直っていうか」

 ん? なんか小姑みたいな厭味を何度も言われた気もするけど、心象が悪いのは諦めていたので黙っていた。

「図々しいのは姉さんじゃないの? それに、素直なのはニノのいいところだよ。姉さんみたいに打算で演技なんて器用なことできないんだから」

 代わりに、イチがフォロー(?)してくれて最後は姉弟ゲンカ? みたいになって、慌てて止めた。

「あ、あの……イチ。わたしは平気だから……わたしが失礼だったのは本当だし」

「ほら、見なさい。この子だってちゃんと非を認めて別れるって言ってるじゃないの」

 ……え? そういう話?

「姉さん。もう、いい加減にしないと怒るよ?」

「なによ、やけに突っかかるじゃない。いつもはもっと淡白なクセに……あーあ、もっと苛めちゃおうかしら?」

「姉さん!」

 わぁー! さらに姉弟間の空気がピリピリと険悪にっ。

 イチが怒るなんてすっごい珍しいんだよ。お姉さん! は平然としてるけど……わたしは呆然。


 ど、どうしよう――わたしのせい、だよね?


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