表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/15

step.3

step.2から引き続き、やや赤裸々な単語(会話)があります。ご注意ください!


「な……なん? なんでっ!」

 わたしの明らかな動揺にイチは首を傾げた。

「なんで初めてだってわかったか、ってコト?」

 その通りだが、頷くことはできない。パクパクと口の開閉を繰り返す。

「そりゃ、わかるよ」

 と、彼は苦笑した。どうやら、男の人からすると一目瞭然らしい。なんで?

「まあ、詳細は伏せるけど。ニノ、あの時痛がったし、血も……出たし、慣れてそうになかったしね」

「じゃあ、なんでやめなかったの? 面倒でしょ? 初めての女なんて」

 浮気ならなおさらだ。イチの行動は、わたしの 今までの 彼のイメージからすればかけ離れている。

 たとえ、それが男の本能なのだとしても、彼は変わってしまったのだろうか?

「やめるハズないよ。せっかくニノがその気になったのに」

 イチの表情はわたしに対してほんの少しの同情を含んでいた。

「え?」

 同情される意味が分からないんですけど……むしろ、わたしの方がイチに同情するよ。

 なんで、抱いちゃったの? って。

 わたし、喰らいついちゃうよ……スッポンみたいにタチの悪い女なんだからねっ。

 そっ、とイチはわたしの頬を手のひらで包んで、上向かせる。

「そんな顔しないで。もう絶対逃がさないし、手離す気なんてないんだ……ごめんね」

 彼の謝罪を理解するより先に口づけられて、裸の胸を揉まれた。そこが感じやすい場所だって、さっき初めて教えられたばかりのところを弄られて、わたしは始まってしまったことにすら気づかず、従うしかなかった。




 それから何度か美味しいお店を教えてもらうついでに、そういう関係になった。

「イチって、ちょっと変わった……よね?」

「そう? 僕はむしろ全然変わってなくて自分で嫌になるけど」

 今日の料理は和風創作だ。刺身が美味しくて、色の調和もいい。知らず、箸が進む。

「そうかなー? すんっごく大人になったよ。昔も大人びてはいたけど」

「大人? 例えばどんなトコロが?」

 彼女がいるのにわたしと……なんてことは、自分の首を絞めることなので言えない。婉曲に、婉曲に。

「んー、女性に対して器用になった? とか」

「不器用だよ。呆れるくらいね」

「嘘だー」

 わたしは笑った。イチは「分からないならいいけど」と情けない顔で肩をすくめて……そんなところは高校の頃と少しも変わってなくて、なんだか無性に彼の言葉が本当のように思えてきた。


(そうかー、そうだよね。彼女がいるのにわたしと……しちゃってるんだもんね。イチからしたら不本意か)


 ごめんねー、と心の中で謝って、でも利用しちゃうよとその腕に甘え――わたしは、そっと彼に寄り添った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ