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他視点で「jump.2」を見てみれば……というお話。

 その男の人が店に来たのは、数週間前だった。



 第一印象は、誠実そう。目立たないけれど、物静かで真面目そうでほわっとしてて顔も標準よりは上……旦那さんにしたら、すっごくいいかもと不埒にも思った。

 彼は真剣に並べられた指輪を見比べ、シンプルなプラチナリングに決めた。でも、まだ決定ではないらしく彼女を連れてまた来ますと帰って行った。

 きっと、彼女も可愛い感じなんだろうなと微笑ましくなった。

 カランコロンと扉がなって、その地味な彼が入って来て、「あっ」と思う。

 彼女、連れて来たのかしら?

 と、あからさまにならない程度に出迎え、傍らを見る。

( ええっ! )

 ちょ、ちょっと! 貢がされてるだけじゃないの?

 かなり失礼なことを考えたけれど、それは仕方ないと思うの。

 可愛い彼女にも限度があるでしょ? 桁違いよ、この子。

 モデルみたいな小さな顔にスラリと伸びた四肢、女性らしい体のラインは美しい稜線で細いのに豊満だった。

 目はくっきり二重で黒目がち、ちょっと気の強そうな吊り目も綺麗なパーツの中だと全然キツく感じない。ぽってりとした唇とふっくらとした頬、あどけないのに色っぽい大人の表情をして、少しアンニュイな雰囲気がドキリとする。

 彼女は彼と手を繋いでいるのに、どこか心ココにあらずというふうにぼんやりとしている。

 やっぱり、彼の片想いなんだわ……と隣を見遣れば案の定緊張した硬い表情をしている。

(そりゃあ、そうよねえ? 今からプロポーズですもの)

 旦那にするにはかなりの優良物件だと思うけど、彼女なら引く手数多だろうし……どうかしらねえ?

「ニノ」

 彼が準備した指輪を彼女の前に差し出した。

 ぼんやりとした彼女はジッとその銀色のリングを見て、左手の薬指にスッと入ると「えっ! 指輪!!」とものすごく大きな声で叫んだ。

 ビックリ。

 (最初から目立ってはいたけれど)周囲も驚いたようで、かなりのギャラリーになってしまった。

 彼女は彼を見上げ、こっちを見て、周りの様子にようやく気づいたらしい。しまった、と身を縮めて彼をもう一度仰ぐ。

 ごくり、と喉が鳴ったら大変だわ。でも、なんだかドキドキするわね?

「もちろん、婚約指輪。結婚指輪も決めれたらと思って嫌なら言って」

 真摯な彼の言葉に、彼女の答えは無情だったわ。

「……イヤ、」

 なんて、言って。

 断るのかと思いきや、彼女はガバッと彼に抱きついて店中の人間に聞こえるように宣言したわ。もしかして、わざと?


「じゃない! するっ、絶対する! 今すぐ結婚して!!」


 ギュウギュウに彼を締めつけて、ウサギみたいにピョンピョンと跳ねる。

 キラキラとした笑顔が眩しいほど、輝いてた。あなた、CMに使えそうよ?

 彼女は、彼がもがいて止めるまで放さなかった。いや、彼が言っても離れはしなかったわね……渋々力はゆるめて抱きつくのも諦めたみたいだけど。

 繋ぐ手は絶対離さなかったもの。



 案外。

 綺麗な彼女も、この物静かな彼にべた惚れ? なのかもしれないわ。


ジュエリー店勤務のお姉さんから見た二人のお話(ジュエリー店のお姉さんは「天気予報士の恋」の彼女です)。

これにて、「いち にの さん」は完結とさせていただきます。本当はもう少し書きたい場面もあるのですが……というか、当初の目的だった場面はこの先にあるのですが、それはまた機会があったら書こうと思います。たぶん、結婚後のお話になるのでね(←意味深)。


ここまで、読んでいただきありがとうございます。

他の作品でもお会いできるようにこれからも頑張ろうと思います。少しでも皆様に楽しんでいただければ、それが私の糧となります。

ありがとうございました。

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