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夫は色の名前をひとつも知りませんでした。けれど私が染めた布を、一枚も手放しませんでした  作者: ヲワ・おわり


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第三十六話 冬の訪れと枯れた植物

霜の翌朝、旧染料園に行くと、昨日まであった緑がなかった。


南方由来の植物の葉が、しなびていた。水分が抜けて萎れ、触ると葉が黒ずんでいる。低温に当たりすぎた時の典型的な症状だ。


「……これは」


「北の寒さに勝てなかった」とヨハンが言った。「仕方ない」


「仕方ない」という言葉を、ヨハンはよく使う。落胆ではなく、事実として言っている。この土地で長く生きてきた人の言葉だ。


「根は生きていますか」


「それを確認する。根が生きていれば来年復活できる」


二人で土を掘り始めた。


表土は固く凍り始めていた。でも少し深く掘ると、土の温度が違う。根が残っているものがある。根を丁寧に掘り出して、麻袋に入れる。室内で越冬させれば、来春に植え直せる。


「乾燥させれば一部は使えますか」と枯れた葉を見ながら聞いた。


「葉が生きていれば。枯れたものは難しいが——試してみろ」


一日かけての作業だった。


枯れた葉を選別して、乾燥できそうなものを取り分ける。根を保護して袋に入れる。来年の植え付けのために、畑の土を覆う藁を敷く。


夕方になって、体が芯から冷えていた。


工房に戻り、椅子に座った。手が悴んでいる。作業の疲れと冷えで、頭がぼんやりした。


しばらくして、廊下に人の気配がした。


クラウスだった。


イレーネに何も言わなかった。工房に入ってきて、部屋の隅に掛けてあった自分の外套——植物の保護に使った後で工房に置いてあったものを持って出ていこうとした。


それでなく、自分が着ていた外套を脱いで、椅子の背に掛けた。


そして出ていった。


「……」


外套を見た。


クラウスが今、着ていたものだ。まだ温かい。


「これは……」


返しに行こうか、と思った。でも体を動かす気力がなかった。外套を手に取ると、山の木と革の匂いがした。


——ということで、今夜はこれを借りておこう。


そう決めた。

次話も更新されます。引き続きよろしくお願いします。

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