表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「雪女の婚前旅行」(セーラー服と雪女 第10巻)  作者: サナダムシオ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/10

⑤ 貴重なスケッチ

「ねえ、キミ……。」

 それまで京子の後ろに立って、ずっと黙っていたサン・ジェルマンが話し出した。

「これをあげるから、ちょっとその辺の物をスケッチしてみなよ。」


 そう言って彼は、A4サイズほどの紙を10枚と、同じサイズの画板、そして茶色の鉛筆を、両手に持って差し出した。

 まったく、どこまでも用意周到な男である。


「でもお母さんが、知らない人から施しを受けたらいけないって……あっ!」

 レオナルドは、サン・ジェルマンの顔を見てひどく驚いていた。

「お父さん……にそっくり。でも服装がいつもと全然違う……オジサンは誰なの?」


「顔だけでは判断しないか。さすがに観察眼が鋭いね。オジサンはね、お父さんの遠い親戚なんだよ。だから知らない人じゃないんだ。これをもらってもお母さんに怒られたり、心配かけたりしないんだよ?」

「……そうなんだ。」


 何だかんだ言ってもまだ小さな子どもである。一応、納得したようだ。

 実は、よほど絵を描きたかったとみえて、彼はすぐに、その辺の草花や落ち葉などを、夢中になって描き始めた。


 その中でも京子が一番驚いたのが、川の水流を描いたスケッチだ。

 流れる水の姿を、あっという間にリアルに線描して見せる。

 とても5歳やそこらの子どもの成せるワザでは無かった。


 そして、物の表面だけでなく、その内部構造まで捉えようとする意図が、どのスケッチからもハッキリと観て取れた。

 やはりこの子は天才だ。

 そんな気持ちで隣で様子を見ている京子に、レオナルドが言った。

「お姐さん、お礼に少しだけ描いてあげるよ。」


 すると、彼はあっという間に京子の横顔を線描した。

 それはスケッチでありながら、鬼気迫るほどのリアルな描写だった。

「はい、どうぞ。」

 彼は彼女に無造作にその紙を渡した。

「えっ、もらっていいの?……ありがとう。」

 京子は天才から直筆の作品を受け取って、ドギマギする。


「仕上げる時間が無くてごめんね。」

 彼はそう言ったが、その絵のどこをどう直したらよいのか、彼女にはさっぱりわからなかった。


「お話ができて良かったよ。レオナルド君。」

 おもむろにサン・ジェルマンがそう言った。

 もうこの会見は、切り上げた方が安全ということか。

「私も。逢えて嬉しかったわ。」

 京子も話を合わせることにした。


「紙と鉛筆をありがとう。また逢えるかな?」

 レオナルドは少し寂しそうだった。

「逢えるといいね。もしキミが本気で逢いたくなったら、逢えるかもね。」

 サン・ジェルマンは微妙な言い方で返した。


 そして、二人が馬車に乗り込むのを、レオナルドはずっと見ていた。

 馬車のドアの中がビートルの助手席になっていて、京子は少し混乱した。

「そう言えば、そうだったわね。」


 間もなく馬車は、レオナルドの目の前で垂直上昇した。

「因みに、今、光学迷彩は使ってません。」

 サン・ジェルマンがしれっと大変なことを言う。


「えっ、じゃあ、外のレオナルドに丸見えってこと?」

「それでいいのです。」

 サン・ジェルマンはまるで❝バカボンのパパ❞のようにそう言ったのだった。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ