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第死地話:死神のお仕事。

前回の第く話。本当に申し訳ありませんでした。

自分が書いた中でもダントツにクオリティの低いものでした……。

たぶん、プロットを考えずに書き始めてしまったからかと。

でも、どうしたらいいか分からなかったんだよぅ。ふぇーん。


反省はしています。後悔もしています。

機会があればリメイクします。

そんなわけでどうぞよろしく。

山田リョウジ。

彼の人生はそこそこ幸せなものだったと思う。

生まれたのは普通の家。さしてお金持ちというわけでもなかったが、特別お金に困るということもなかった。不自由だと思うこともなかったし、それこそ思春期の頃くらいは反抗もしたが、良い母親で、良い父親に育てられたと思う。

大きな病気にかかったこともなかった。

地元の小学校に入り、そのまま中学へ。

成績は悪くなかった。真ん中より少し上くらい。だから、高校も真ん中より上くらいの高校に入って、卒業。真ん中より上くらいの大学に入った。ちなみに浪人はしなかった。

少しばかり地味だが、先生や友人からの評価は高く、人望も厚かった。

学生の時に書いたレポートが認められ、その時に知り合いになった人に紹介されて、卒業と同時にとある製薬会社へと就職した。

就職からしばらくたって、先輩から紹介された女性と交際を始めた。

器量もよく、美しい女性だった。

それからしばらくして、会社で新しく始めた事業も軌道に乗り、安定し始めたので彼女との結婚を決めた。

それから、5年の間に二児の子供をもうけた。

彼は仕事に打ち込むばかりでなく、家庭もきちんと気にかけ、仕事と家庭の両立ができていた。

そんな彼の家庭は、もちろん幸せだった。

彼の子供たちも元気に成長したし、妻にも苦労はかけさせないようにできていた。


彼より幸せな人生を送っている人間だっていただろう。しかし、彼の人生は確かに幸せだった。

そう、彼が生きている間は確かに幸せだったのだろう――。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


時刻は午後2時。駅前。

その光景は、かなり奇異に見えることだろう。

一人の銀色の髪をした少女が、おそらく20代半ばごろの男の手をとって引きずり回していた。

銀色の髪はやたらとめだつ。しかし、そういうのが流行っているのかそれともそういうイベントがあるのかと思えば多少目立ちこそすれ気にすることもない。

彼が、おそらく社会人であろうことも別に気にすべきことでもない。

今どきの若い子は…。と、話のネタにでもすればいいだけの話だ。

文字通り、引きずり回していたのだ。

年端も行かない少女が、倍の体重はあるであろう男を。


「ちょ、トト。痛いって。ある、歩けるから。自分で歩けるからぁ!」

「そう言ってさっきも逃げようとしましたわ。目的地に着くまではこのままで行きます」

「地域の奥様方の目線が刺さるって。おい、今度からここら辺歩けなくなるぞ」

「構いませんわ。そのときはまた違うところに居を移せばいいだけの話」

「おい、…って、うわぁ――」

俺の抗議もなんのその。トトは、お昼過ぎの駅前をずんずんと突き進んでいく。文字通り、俺を引きずりながら。

襟だとか、腕だとかならまだましだと思う。

足だ。

かかとを持って、ただずっと引きずられている。

しかも、なぜか彼女の力が異常に強い。抜け出せない。立ち上がれない。

「……ああ、買ったばかりの服が」

血で汚れていた服を捨て、代わりに買った服がもう砂にまみれている。

何度か抵抗してみたものの、とても逃げ出せる気がしない。

いや、一度逃げ出そうとしてしまったことがそもそもの間違いだった。

俺が必死になって彼女を説得した結果、何とか立ち上がらせてはくれた。しかし、あろうことか代わりに手をつなごうと提案してきたのだ。

昼ごろ>小さな女の子>大のおとな>怪しい>めくるめく大人の世界へ☆

とか思われたくはない。というか、そんなことになれば社会的に死んでしまう。(もう死んでいたりもするが)

必死に抵抗し、手をつなぐという行為から逃げ出す。と、少しも走ることなく彼女に引き倒されてしまった。で、今の状況である。

素直に手をつないでいればよかったのか、これでいいのか……。


ふと、足を引っ張る力がなくなる。

「……あれ、どうした」

突然力がかからなくなれば戸惑いもする。

決して俺はMではない。これだけは言っておこう。

「目的地ですわ」

「……ここが?」

周りを見ると、どこにでもあるような住宅街の一角だった。

いかにも平和という感じで、そこかしこで暇な時間をもてあましているご人が趣味や井戸端会議に夢中になっているようだった。

「ここに、なにがあるんだ?」

死神が必要そうな場所には見えない。

トトの仕事は……「成仏」だっけ?

ここで誰かが死ぬようなことがあったのだろうか。

「そっちじゃなくて、こっち。この建設中の住宅ですわ」

彼女の指す方を見ると、確かに防音のシートのかけられた立体が聳え立っていた。

ちなみに、あれがあってもうるさいと思うかもしれない。でも、中に入ってみると想像しているよりもうるさい。だから、あれは確かに効果があるのだ。ご近所で建設途中の建物があるなら、我慢してあげてください、って誰に言ってんだ俺は?

とにかく、ここで何かがあるらしい。トトは灰色のシートを潜り抜けて中に入っていくところだった。

「早くするのですわ」

シートの隙間から顔だけ出したトトが声をかける。

「ちょ、おい」

すぐに俺も中に入る。

正直、周りの人に見つからないのかとか不安になったが、何も聞こえないところを見るととりあえずは問題なかったようだ。

中に入ると、よく見る金属の足場と、家の骨組みだけが立っていた。

今日は作業が休みなのか、作業員の人はいない。

あたりには、おそらく作業に使うのであろう道具や、ごみなどが散乱している。やはり、シートにさえぎられるからか、太陽の光は見えず、ここは先ほどの住宅街の中にありながら、そことはまったく違う空気を醸し出していた。

一言で言えば陰気、だろうか。

いつお化けが出てもおかしくない雰囲気だった。いや、少なくとも『魂』は存在するのだろう。トトがここに来たということはそういうことだ。


そもそも、俺たちがここに来るまでにはそこそこややこしい事情があったようだ。

あったようだ、とは俺が関わっていることではなく、トトが関わっていることだからだ。

いや、彼女のパートナーとなってしまっている俺にも関係のあることなのだろう。

なにせ、今回の仕事がうまくいかなければ俺が殺される。とまで言われたんだからな……。

ソテツ君の順応が早い気がしないでもありません。

トトちゃんの言葉遣いが少し硬い気がしないでもありません。

それは、この話の少し前、その日の朝にまでさかのぼります。


この話は続きます。

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