第参話:死神の人生について。
今回はちょっと力抜いてます。
せりふを入れて書くのが苦手なのであまり力まずにやってみました。
文章について意見とか欲しいところですね。
温かい目でみまもってやってください。
「死神・・・ね」
目の前の少女――トトは、死神であるらしい。
頭の先からつま先まで少女を観察してみる。
髪の毛の色は銀色と、そこは少し現実離れしているもののその他はいたって普通だ。
俗に死神という言葉から連想されるような大きな鎌や黒いマントなどは見当たらない。
「わかった。わからないこともあるけど、とりあえずはわかった」
彼女が死神だということを信じていないわけではない。いや、だからといって信じているわけでもない、が。
とりあえず、人間でないのは分かっている。最低限それだけ分かれば十分だ。死神か否か、その真偽は今はどちらでも良い。とにかくこの状況から抜け出すことが最優先なのだ。
と、俺は軽く考えていたのだが、目の前の少女(落下中)はそれがお気に召さなかったらしい。
「死神よ。死神なのよ? 恐怖と畏怖の対象でしょ。なんでそんなに落ち着いてるのよ。もうちょっと恐れるなり怖がるなりびびるなりおびえるなりしなさいよ」
どれも怖がるだけだが、この際突っ込むことはしないことにした。
少なくとも、頬を膨らませてすねている姿は恐怖するような相手ではないと思う、がこれも口に出したら収拾がつかなくなりそうなので口チャック。
「いや、こっちの世界じゃ死神なんて珍しくないんだよ?」
嘘は言ってない。テレビを見たらそれなりに目にするし、コミケとかにもいるはずだ。
「へ・・・そう。な、ならいいわ」
様子を見る限りでは俺の嘘に気がついていない。このままこっちの流れで押し切ってしまおう。
「とりあえず、この状況を何とかしてくれないかな?」
「え、この状況って?」
少女は周りをきょろきょろと見回した。
「あぁ・・・。落ちてるわね。これ以上ないほどに」
「そして落ち着いてるね。異常なほどに」
どこかで聞いたせりふを繰り返す。
「で、どうしたいの? 落ちたいの?」
「いや、そもそも君が何か理由があってこういう状況にしているんじゃないのか?」
確かそんなことも言ってた。
「へ? あ、やー……。あの、あれよ、あれ!」
「あれ?」
明らかにキョドってる。視線が空中を泳いでるというか、もう身体全体が空中浮遊してるというか。
「そう、あれ! 私は、その……、死神なのよ! そう、私は死神ですの!」
「うん」
「だから、その・・・、あなたが落ちて死にそうだったからあなたを殺すために時間を・・・あれ? だから、あなたが殺される前に死んでしまう? 死神、だ、から……グス」
なぜか暴走し始めて、挙句の果てに泣き出した。
「ちょ、おい。大丈夫か? っ痛、噛むな! 噛み付いてくるな!」
「うぅ! わたひらって! ひにがみの! はひくれ! なのに! なんで! わたひだけ!」
ガチンガチンと音を立てて噛み付いてくる。死神じゃなくて犬か、こいつゎ。
しばらくの間少女の攻撃から身を守ることに従事する。こいつ、本気で噛み付いてきてやがる。
時折フェイントも交えながら、的確に手指を狙ってくる姿はもうすでに犬を超えているとすら思う。うん、今なら自信を持って言える。こいつ怖い。
「・・・はあ、はああ。うう。ぐすん」
しばらくして、少女の噛み付き攻撃が収まった。
「どうだ? 落ち着いたか?」
「・・・うん」
目を赤くして、うつむき加減に落ち込んでいる様子は見た目の年齢としっかり一致している。
「まあ、なんだ。なにか困ってることがあるなら聞くぞ?」
とりあえず、自分のこの状況に困っているんだが、どうしようもない。彼女がこうした状況を作り出したのだとすれば、俺なんかがどうしたところで抜け出せるもんでもない。出たいなら、まず彼女をなだめなければいけない。
「・・・うん。私、さっきも言ったみたいに死神なんです、の。でも、その、人を・・・殺すことができなくて。だから、その、ちゃんと認められてなくて。でも、どうしたらいいか分からなくて・・・」
つまるところ、自分が死神として認められてないということにコンプレックスを抱いているらしい。話し方も、さっきまでとは若干違っていた。おそらく、こっちが本当の彼女なのだろう。
で、だからといって俺に何かできるわけでもない。
「で、どうするんだ?」
だから、人間的に彼女を導いてやることしかできない。
「ぐすっ。……どうする、って?」
「君がこれからどうするかだよ。死神として認められるために人を殺すのか。それとも、人を殺さずにそのままでいるのか。どっちを選ぶんだ?」
「どっち……って、言われても」
「いずれはしないといけない選択だ。君のこれからの人生にも大きく関わってくる。なら、いい機会だ。考えてみるのも良いだろう」
と、気がついたら死神の人生相談に乗っているぞ、俺。
何なんだこれは。
軽く意味が分からん。
まあ、これを解決しないことには次に進むこともないんだ。我慢するしかないだろう。
それにしても・・・。
いつまで落ち続ければいいんだ、俺。
現在落下距離―30キロメートル
はい、なんだか変な展開に・・・。
ちなみに、まだプロローグなんです。
ですから、プロローグの中で脱線してる状態といいますか。なんといいますか。
とにかく、まだ本編には入ってないんです。
たぶん次くらいでこの落下地獄からも抜け出す予定。
これだけ落ちたら受験を控えているあなたはさすがに落ちないでしょう。
余談なんですが、ユニークは増えてないのにPVだけ増えてたんですね。これって、次話を待ってくださっている人がいらっさるってことですよね。
ありがとうございます。がんばらせていただきます。
では、また次話で。