第27話:正式な死神。
太陽が地を照らし、ちらほらと人の出入りも見られるようになって来た頃。
ルカは例の廃マンションへとたどり着いた。
「ここらへんは‥‥、何も変わったところはないな」
もっとも、仕掛けを施したのは中庭。2人も中庭にいたはずだ。だから入り口近くのここらは何も起こっていなくて当然。
中庭へと急ぐ。いや、心だけが急ぐ。
結果は知らなければならない。一刻も早く。しかし本能?理性? 正体不明のもやもやした感情がそれを拒否する。
無残な結果は知りたくないとルカの中の一部分が現実を拒否する。拒絶する。
「‥‥くそっ、別にあいつらが死んだと決まったわけじゃねえダロ!!」
無理やり歩を進める。
普段から彼女を見ているものからしてみれば、今の姿はとても珍しく映っただろう。
たった一人で数十人、数百人を討ち取ったといわれるあの死神が今にも不安に押しつぶされそうというような表情で歩いているのだ。
そして事実、彼女自身その不安を自覚しなお抑えられるものではないということも感じていた。
その不安を打ち消すにはただひとつ。
結末を知ることだけ。
その結果不安が絶望になるのかどうかは知れたことではないが‥‥。
そうしてやがて中庭へとたどり着く。
目に入るのは、横たわるトトの姿。
「ととぉぉぉおおおおっ!!!」
全力で駆け寄る。周囲にソテツの姿は見えない。逃げたのかはたまた例のヤツにクわれたのか。真実を知るすべはない。
「おい、トト! オい!!」
彼女の体をゆする。反応はない。
何度も何度も揺らす。それこそ何かに執着するかのように。
そして数分たったろうか、トトにわずかな反応があった。
「‥‥ん、ぅ‥‥ん」
「と、トトっ! あたしがわかるカ!?」
必死に呼びかける。
果たして目が覚めているのか、ただ寝ぼけて目を開いているだけなのか、意識が朦朧としているようで視点が定まっていない。
ペチペチと頬を叩く。
「‥‥‥‥ル、ヵさん?」
「そうダ! ルカだ! わかるカ?」
少なくとも命に別状はないのだろう。ふらふらとあぶなっかしい雰囲気はするが苦痛を感じている様子はない。
これでようやく一安心できた。
その後の結果を見るために、周囲を見回す。
すでに怪物の気配はない。よく見ると、あちらこちらに金屑や工具が散乱している。あれらあ集まって異形になったのだろう。
少し離れているところにひときわ大きな塊がまぷたつに両断されて横たわっているのが見えた。
「‥‥よくやったな、トト」
やさしくトトの頭をなでる。
しかし彼女は何かを探すように視線を走らせる。
「おい? どうしタ、痛いのか?」
首を振る。
「‥‥s。げほっげほっ! ‥‥そ、テツ。は?」
ソテツ?
首が回る限り限界までまわしてソテツを探す。
「ソテツ! おい、ソテツ!! いないのカ!!」
なんども大声で呼んでみる。
しかしそれに対する返答はない。
「トト、どうなったんだ? ソテツは? まさか‥‥」
怪物に?
最後まで言い切る前に口を閉じる。
それに対する反応は、まず無言。
そうして、ゆっくりと首を横に振る。半ばあきらめとも取れる表情で。
何か熱いものが胸をこみ上げてくるのを感じた。
トトを抱きしめる。
あたしがしてあげられることは何もない。
ただ、彼女が落ち着くまで一緒にいるだけ‥‥。
「‥‥で、何で二人とも俺が死んだことにして話を進めてるんだ?」
「は?」
「‥‥バレましたか」
背後からソテツの声が聞こえた。
振り向くと、ぼろぼろの服をまといながらもそれなりに元気そうなソテツの姿。
「な、え? あれ、どういうことダ??」
ソテツは死んだんじゃ‥‥?
「うん。まぁ、死んではないわな。元気だし」
「トトー? どういうコトカナー?」
かたかたかたかた
某人形のように首を回転させる。
ロックオン。
「わ、たし、は。なにも 云ってません、わ?」
‥‥確かに。
「え、じ、じゃあなんでお前は首を横にふったのかナ?」
「‥‥空が、青いですわね」
「人に余計な恥かかせやがらるりゃったゃりゃぁぁあああ!!」
正式に死神となったトト。
正式な死神のパートナーになったソテツ。
おそらく、彼らがこれからの死神を変えていくのだろうな。なんか思いながら、ソテツをいたぶるルカだった。
前回の更新からかなり間が開いてしまいました。
文章もかなりレベルが落ちてる気がしないでもないです。
とりあえず第0章終了ってところです。
次からは新章?
とりあえず適当にキャラ紹介とか入れようかな。
とりあえず、今後ともよろしくお願いします。
ちなみに、ソテツが生きてる理由とかは新章に持ち越し☆
だから、読んでくださいorz