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第23話:死神と、終焉に向けて。

涙ながらに少女が告白してしばらくの後。

彼女らの描いた魔法陣もやがて空へ消えた。

「……ぅっう…、ひっく……ぇぐ」

周囲を照らしていた明かりが消え、宵闇に包まれた中で少女の嗚咽の声だけが静かに響いている。

その時は永く、いつまでも続くかと思われた。

ソテツには彼女にかける言葉はなかった。いや、かけられようはずもなかった。

少女が死んでしまう。逆の立場であったならば不器用ながらも励ます、支える。何かしらの方法はあっただろう。しかし、世界に見放されて消えるのはソテツ。その命を永らえさせようと努力し、そして失敗したのは少女。

自分で努力して、失敗して、それで消えるのが自分なら仕方ないだろう。

でも、現実はどうだ。

彼女は努力した。

苦心した。

普段通り、普段以上に力を出し切った。

そして失敗した。

消えるのはソテツ。

それは自分が消してしまうのと同義。

少女は約束した。どんなことがあっても、彼に明日を迎えさせると。


悔やんでも悔やみきれない後悔が残るのは目に見えている。

死神の寿命は人間よりはるかに長い。

その人間にとっては永劫とも思える時間を、この少女は悔いを残したままで生きていかなければならない。

ソテツは、どうしてもそれだけは避けたかった。

すでに死に体の自分が消えることに関してはもはや思うところはない。

でも、彼女は――。


「……トト」

静かに、そっと呼びかける。

「うぅ”……ぶぁい?」

小さく声を漏らしながらこっちを向いた彼女の顔はいろんな液体でぐしゃぐしゃだった。

思わず吹き出してしまう。

「ちょ、な”、なんですの!! 私は! こんなにも!!!!」

「く、ははははははっは。……ひぃ、はぁ。わ、悪い悪い。……ぷふっ。トト、顔が面白いことになってるから」

「なっ……」

「面白いことになっている」顔を赤くして、俺を睨み上げる。

「……ま、まあ、いいですわ。えぇ、いいですとも。私たちはパートナーですから? はい、パートナーなんですもの。少しくらいいいですわよねぇ。じゃあ、ソテツの寝言もここでカミングアウトしてしまってもよろしいですわよねぇ?」

「は? おい、ちょっと、どういう意味だ!?」

「『……メロンパン……つ』私たちが出会った初日ですわね。気絶してたソテツが言った一言ですわ」

「――ちょ、『つ』ってなんだよ、『つ』って!?」

「つづいて、『おいしそう……りきし』。勉強に疲れ果てて寝落ちしたソテツの一言。『めそぽたみあんころもちるちるみちるーばー』。はぁ……もはやわざと言ってるとしか思えませんわね」

「え、ソレ全部俺が言ってたのか? ほんとに?」

だとしたら精神科に行くべきだろうか。それとも一回死んで――もう死んでたな……。

「はぁ……、ありがとうございますわ」

「え?」

「私を元気付けようと思ってやってくださったんでしょう? ……少しは、楽になりましたわ」

「お、おぉ……、そうか」

儚げながらもわずかばかりの笑みを浮かべる。目の端には涙の粒が光っているし、まだ顔もぐしゃぐしゃだ。

でも、そんなほんの少しでもトトの気持ちを軽くしてあげられたことにほっとする。

俺としてはそんなつもりはなかったのだが……。まあ、プラスに働いたのならいいとしよう。

それはそれとして、

「でさ、トト。話は変わるんだけど、お願いがあるんだ」

「はい? なんですか?」

頭上に疑問符を浮かべながら問う。

果たして、俺がこの言葉を口にしてもいいのだろうか。下手をすれば、さらに彼女の傷を抉ることになりかねない。そんなことになれば、俺は悔やんでも悔やみきれない。もしかしたら幽霊になって出てきてしまうかもしれない。

……そんなことができるのなら、苦労はしないのだが?


ほんの少し、俺が言わなかったときのことを考えてみる。

頭に浮かぶのは悲しげな表情を浮かべたトト。

……再現はしたくない。なら、言おう。

細心の注意を払って、深く、やさしく、丁寧に。

「……お願いだ。俺を……、トトの――」


――ガシャン。


一言で言うなら、工具箱をひっくり返したような音。だろうか。

釘やねじ、ペンチやドライバー。のこぎりやレンチ。そんな工具を一気に地面に落としたような音が、俺たちのはるか横。マンションの入り口の方から聞こえた。

暗がりになっていてその周辺の様子は分からない。

「……整備の人とかが来たのかもな。俺たちをみてびっくりしたんだったりして」

とは口では言うものの、そう思っているわけではない。

何より、自分自身の目がソレを否定している。

「……整備の人……。そうかもしれませんわね。私たちを排除しようとする、ということに関しては同じですわ。……まぁ、そのあとにここが綺麗になっているか真っ赤に染まっているかはおいといて」

「笑えないな……」

二人ともソレから視線をはずすことはない。

姿は未だに見えない。でも、ソレが人間ではないことは分かる。

暗闇の中で光る紅の光。数は二つ。

光、というよりも双眸、といった方がいいだろうか。

機械的な灯ではあるが、ソレは生物的な輝きを持っていた。

上下に小刻みに揺れながらだんだんとこちらに近づいてくる。

「なぁ、これが終わったら、またクレープ食べに行かないか?」

「ふふ……それもいいですわね。……自分で立てた死亡フラグくらい、自分で叩き折って下さいね?」

身体の前で腕を一振り。一瞬の後、その手の中には湾曲した銀の刃が握られていた。


――ガシャン、……ガシャン……。


ゆっくりと近づいてくるソレは霄壤を揺らすかのようにその存在感を見せ付ける。

明かりの下に見えたその姿。

犬。猫。獅子。

そのどれにでも見えるような凶悪な姿をした――工具の塊だった。


「なるほどね。食い殺されてたってのはそういうことか」

その体中を全て工具で埋めつくされた奇怪な元生物は金属を叩きあわせたような音で一声鳴くと、俺たちに向かって飛び込んできた。

身体の表面は特に危険度の高いもの――のこぎり、鉋、釘で覆い尽くされている。かするだけでもかなりの怪我を負うだろう。


――ガシャン、ガシャン、ガシャン。


一歩ごとに工具箱(あしおと)が鳴り響く。

あらかじめ用意してあったバールを拾い上げ、ソレと対峙する。


「……悪いが、その魂。俺が使わせてもらう」

薄ぼんやりと白み始めた東の空を視界の端に、ソレに向かって疾駆する。

後書きにも物語を書いてみたいと思いました。

でも、やっぱり携帯で見てる人とかは飛ばしちゃうんだろうな・・・。


と、思ったので辞めました☆



何故かバトルものに移行してやいませんか?

描写も荒いですし、夏に向けて特訓ですねこれは!!



うん、がんばろうか!!!!

良い練習法とかあったら教えてください♪


では、また次回「第24話:工具とは言っても獣なんだからムツゴロウさんには勝てないんだよー☆」を、お楽しみに。

嘘ですが。

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