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第拾緑話:死神の能力。

辺りを包む闇が少しずつ薄くなっていく。

そのことに気がついたのはルカの手に光が宿ってからしばらくしたときの事だ。

さっきまでは見えることのなかった植え込みや、外壁なんかがぼんやりと浮かび上がってきている。

いや、闇が薄くなっているのではない。

小さな。本当に小さな光がこの場所に集まってきているのだ。

数えるほどの光の粒。

しかし、時が経つにつれてしだいに数を増していった。

息をするのも忘れる――とはこのことを言うのだろう。息苦しささえ感じる。


あ、本当に息してない、俺。

すーーーーーっはーーーーーーーぁ。

大きく深呼吸。あぁ、やばかった。死ぬかと思った。

……けど、本当にそんなことになってしまうほどに目の前の光景は美しかった。


やがて、集まった光はさらにルカの元へと収束していく。

次から次へと集まってくる光は、同じようにルカの元へと吸い込まれていく。


ふと、視界の端に銀色の光が映る。

――トトの髪だ。

俺と同じようにルカに魅入っている。

服装の趣向は死神だが、美的感覚は人間と同じなのだろうか?

くだらない疑問に苦笑がもれる。

と、その音を聞き取ったかのように、ルカがこっちを向いてウインクをした。

「……いや、聞こえないだろ……ふつう」

あまりにもタイミングが良かったのでありえない考えが頭に浮かんでしまった。

頭を振りつつその考えを打ち消す。

さっきの呟きが聞こえてしまったのか、今度はトトがこっちを向いた。

その顔はほんのりと朱に染まり、上気していた。つまり興奮している顔、と。


おいおい、俺をそんな顔で見られても困るぜぇ。


なんてのにはならない。俺はロリコンじゃないから。

「……。ソテツ。あれは、何か分かりますか?」

ルカの方、正しくはるかの周囲に浮かぶ光の粒を指差して質問する。

「え、や……ん? ごめん、わかんないな」

「……やっぱり、見えるのですわね。はい、もういいですわ。じゃあ、あの光についてお話しします」

今度は体ごと俺のほうへ向ける。

「たぶん、予想がついているのではありませんの? あれは魂。この世での肉体を無くし、それでもまだ現世にとどまっている魂たちですわ」

「そうなのか……あれが――」

もう一度ルカのほうを見る。

日本で昔から言われるような魂は、半透明の球体に尻尾が生えたような姿をしている。

それか、人魂とかを思い出すのが常だろう。

しかし、実際のそれは今までの常識とは外れていた。

自ら光を発し、まるでガラスのかけらが中空で浮かんでいるように見える。

ふわふわと上下するそれはきちんとした実体を持つことなく、絶えず姿を変化させ続けている。

そう、まさにあれは――

「――大雷光ちうべふっ!!!」

トトに殴られた。

「――っさすがにそのたとえはまずいですわ。いろいろと」

さいですか。


「それで、あいつはこれから何をするつもりなんだ?」

痛む頬をさすりながら訊ねる。

「そうですわね……簡単に言えば、成仏みたいなものですわ」

トトの遠まわしな言い方に、何か引っかかりを覚えた。が、とりあえず放置しておくことにする。

どうせわかることなんだろうし、言う必要があるのなら言ってるだろう。それくらいにはこの少女も考えを持っている。

だから、そうかとだけ言ってことの行方を見守る。

そしてそれからの二人は終始無言。

特に話すことも、話さなければならないことも、話したいこともなかった。

それとは対象に、あたりの景色はだんだん賑やかになってきていた。

魂が次々と集まってくる。

際限などないかのように、だ。

水の流れのようにごうごうという様子ではない。

でも、その流れは途切れることがない。途切れるかと思うと、またひとつやってくる。

もうこないかと思うとまたひとつの魂が視界に入る。

その一つ一つがまばゆい光を放つ。

必然、中庭は煌々と照らされてきていた。

その明るさはもはや昼間となんら変わりない。ただ、上から照らされるか横から照らされているかの違い。

さすがにここまで明るいと誰かが気がつくのではないかとも思うが、何故かそんなことはないらしい。特に何の変化も起こることなくひたすら強くなり続ける光。

そして、その光を何の変化もなく俺たち二人は眺め続けていた。


一つ目の光がこの場に集まってきてから1、2時間もたったろうか。その光が、突然ふっと弱くなってあたりが再度闇に包まれる。

明るさに目の慣れていた俺の視界は闇に閉ざされる。

が、何故か周りの様子が感じ取れた。

ルカが何かを呟く。

ここからではよく聞こえない。そして、体の前に出していた手を徐々に上に持ち上げる。

ゆっくりと、力強く。

あんなに傍若無人な態度をとっていたにもかかわらず、その動きは一つ一つが繊細で、正確だった。

そして、彼女の手の動きにあわせて周囲を漂う魂も上昇する。


――光の奔流。


そう表現したら分かりやすいだろうか。

一気に光を取り戻した魂たちは、そのまま一気に空へと上った。

その瞬間の光は、先ほどの比ではない。まるで光が爆発したかのような勢いだ。

隣のトトはもうその様子を見てはいなかった。

胸の前で手を組み、目を閉じて祈っている。

俺は祈らない。

ただ、その行く末を見届ける。

遥か高みにたどり着いた魂は、ひとつまたひとつと闇に解けていく。

その光のいっさいが消え去ったところで、視線を地上に戻す。

どことなく、花火が終わったあとのような喪失を胸のうちに感じた。



こつこつと、地面をたたく音が聞こえる。

「おし、ソテツ。見てたか?」

音がしていた方向から突然ルカが浮かび上がる。

「……ああ。成仏か。きれいだったな」

素直な感想を口にする。

「成仏ぅ? 誰がそんな――あぁ、トトか」

一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに何か納得したように薄ら笑いを浮かべた。

「あれは、な。成仏とか、そんな綺麗なもんじゃねえんだ」

ポケットに手を入れ、空――魂が消えていったところ――を見上げた。

「……あいつらは、ここらに漂ってた魂なんだよ。消えない。消えれない。未練ばっかり残って、満足できないまんまにこの世に留まってるんだ。あの技?な。できるのは、死神の中でも俺だけなんだぜ。未練を残した想いを強制的にあの世に送る。そんな力だ。な、綺麗なもんじゃないだろ?」

悲しそうな笑顔を見せてそう言う。

今すぐにでも泣き出してしまいそうな顔だ。

「……なんだ、お前でもそんな顔するのか?」

「――なっ、しちゃ悪いか? あ?」

すぐに表情を崩し、普段と同じようにがんを飛ばす。

「……お前の力、綺麗だと思うよ」

「俺が血の通ってねぇ奴だとおも――え?」

「苦しみながら地上に残っていないといけないより、遥かにいいことだと思うよ。……なあ、トト」

俺の声に、今まで俺の後ろに隠れていたトトが顔を出す。

「はい。ルカさんのしていることはとてもいいことだと思いますよ」

笑顔で肯定する。

ルカのまた違った性格を見て面食らったが、これも彼女の一面なのだ。

急に彼女に親近感を覚える。


「……けけけ。人間にそんなこと言われるなんてなぁ! 思ってもみなかったぜ」

いつもの調子を取り戻したのか、急に荒々しくなる。

「……レアルカさん、終了ですわね」

トトがボソッと何かいったような気がするが、とりあえずスルー。

「で、なんだったか。あんまり綺麗だったから当初の予定を忘れてる」

「ええ、そうですわね。本題からは少し脱線してしまいましたわ」

ルカがポケットから手を出して、手のひらを上に向ける。

そして不敵に笑って、

「ここで登場するのが俺のもうひとつの特技、だ。魂が集まってきたのは、そのもうひとつのほうの特技」

「前提条件は、その魂が残している思いを把握していること。つまり、その魂が誰の魂なのか把握できていれば、呼び寄せることが可能ということですわ」

ルカにあわせてトトも同じように笑う。ただ、年齢が年齢だけにかわいらしく見えてしまうのは本人には言わないほうがいいだろう。

「なら、明日はその魂の生きていた頃に誰だったのか特定すればいいんだな」

「そういうことですわ」

今度は普通に笑う。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「目的は決まった。じゃあ、とりあえずゆっくり休もうか」

「え、でも。ソテツ?」

特に何も言わずに指をさすトト。

とりあえず目で追ってみる。

「けけけ、空が白んでやがる」

もう日が昇りかけているのか、東の空が赤く染まりかけていた。

「……なぁ、トト?」

「じゃあ、行くかソテツ。善は急げだ」

「な、おい! ルカ、ちょっと――!!!」

俺の叫びもむなしく、身体は意思に逆らってルカの手に引きずられていく。


そんな様子を、後ろからそっとトトは眺めていた。

「……あんなルカさん、初めて見ましたわ」

ふっと微笑むと、二人の後を追う。

太陽は、彼らの背を紅く照らしていた。




それとほぼ同時刻。

ソテツとトトの二人が訪れた工事現場。

彼はいつも通り他の作業員よりも早くに来て、現場の点検を行っていた。

今日も異常はない。いや、前回の作業日において帰った道具やごみが綺麗に片付けられていることを異常だと認識しないならの話ではあるが……。

が、昨日の間か、前に自分が帰った後に誰かが片付けたのだろうと特に疑問に思うこともなかった。

むしろ、そんな奴がいるのなら飯をおごるくらいのことはしてやろうとか思っていた。


もうしばらくで他の作業員もやってくる時間か。その前にトイレでも行っておこうかと、現場の裏手にある仮説トイレに向かった。

用を足し、トイレの扉を開ける。



と、そこで彼の意識は途絶えた。

はい、そんなわけで今回はちょっと長めです。

音楽聴きながらだとやっぱり筆も進みます。集中できますね。

どうしても次に続けるためにここまではやりたかったんですよ。


で、今回から前書きを無くすことにー。

はい、見習わせていただきました。

にゃはははー。



そういえば、今日はエイプリルフールですねー。

嘘つかないまま一日過ぎたのでなんかないかなー。

うん、なんもないね。

とりあえず、エイプリルフールについて話しますねー。

エイプリルっていうのは、ご存知の通り4月のことですね。

で、フールっていうのは馬鹿とかそう意味のことを言います。

タロットの0番目の愚者って、フールって言いますよね?

ですから、本当はエイプリルフールというのは4月1日のことではなく、騙された人のことをいうですよー。

いえ、これは本当です。


ではでは。

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