introduce~DAY2part2
この小説は僕の妄想をなんとか形にしてみたくて書いたものです。今まで小説を書いたことがなく今回が初めてなのでお見苦しい文章になってしまっているかもしれませんが、読んでいただければ幸いです。
・introduce
この手記は僕が入部した不思議な書道部での体験を書き残したものだ。僕は今年、高校に入学した。入学して何日かした後に、暇だしどこかの部活にでも入部してみようと思い、何とはなしに書道部に入部したのだが、それがどうにもヘンテコな部活だったのだ。最初にある文学好きの女生徒に、次に中二病に、その次に電波好きの変人に、とにかく色々な変人が部員に入ってくるような変な部活なのだ。入学したばっかりで愚痴を言えるような友達もいないものだから、夕食を食べ終わった後に、この手記に僕が体験した部活動の記録を残していこうとしているわけだ。まずは入部一日目、つまり今日あったことから書き始めていくことにしよう。
・DAY1
まず僕が入学した高校の紹介から書いていくことにする。僕が入学した高校は、山の上にあり、学校の周りは自然に囲まれている。山の上にある学校にもかかわらず生徒数は多く、クラスで言うと5クラスはある。僕は入学してから一週間以上たっているにも関わらず友達がいなかった。なので、どこかの部活動に入って友達を作ろうと思ったのだが、探しても入りたくなるような部活動も見つからず、なんとなく人数の少なそうな書道部を覗きに行った。
書道部室は一階の教室だった。部室には一人の女子生徒以外に誰もいなかった。部室はきれいに整っており、長方形の机がサイコロの四の目のように四つおかれてあって、一つの机には椅子が片側に三脚ずつ、両側合わせて六脚おかれていた。出入口は普通の教室同様に黒板がおかれている前とロッカーがおかれている後ろの二つ。女子生徒は黒板側の窓に近い机の椅子に座って本を読んでいた。
「あ、あのぉ」
僕は勇気を振り絞って声をかけた。
「書道部はここであってますかね」
すると彼女はこちらを見ずに、しかし大きな声で返事をした。
「そうだけど、なにか?」
これが最初に紹介した部員の一人の文学娘だ。文学娘というのは僕が勝手に心のなかで呼んでるだけで、本名は太宰良子という。腰まで届くほど長い黒髪を後ろに束ねていて、目は大きくて鼻は高く唇は小さい端正な顔で、身長は170ないくらいの、この学校の制服であるセーラー服がよく似合う高身長の美人だった。この時僕はあまりの美人を前にして緊張しまくりだった。
「書道部に入部したいんですけど、他の書道部員は?」
「いないわ、まずこの部活は書道部ではないもの」
一瞬何を言っているのか、わからなかった。どうやら部室を間違えたとか、そういうのでもなさそうな気がした。
「いや確かにここは書道部室だと思うのですけど」
声を震わしながら、もう一度訪ねてみたのだが…。
「去年まではそうだったみたいね。でも廃部になってしまったのよ。んで、この部室には誰もいなくなったものだから私が勝手に放課後の憩いの場として占拠しているってわけ。」
きれいな、澄んだ声だった。うしろの窓から見える小さな池や木々と相まって、どこか幻想的な雰囲気を感じた。
「でも、それなら廊下に貼ってある書道部のポスターはがした方がいいんじゃないですか?」
この時やっと緊張が薄らいできて、気づいたことがある。彼女の左前髪についているピン、よく見ると詩織なのだ。うすい水色の、縦に長い長方形の、上の穴に赤い糸がついているような、よく見る普通の詩織だったのだ。しかしサイズはそこまで大きいわけではなく、遠目に見たら普通にかわいいピンにしか見えない。
「いやホントはここ、書道部なのよ。去年卒業した先輩が最後の部員で、今年廃部になるところだったのを、私が部長になって立て直しますって、顧問に直談判したのよ。占領するためにね。」
まるで訳が分からなかった。
「なら普通に書道部であってるじゃないですか」
「それがあっているようで、あっていないのよ。私が書道部の部長になった理由は書道部室を占領したかったから、顧問は普段様子を見に来るようなことがないやる気のない先生だから、廃部になるまでは、ここは私の部屋なのよ」
したり顔で言ってのけていた。もしかしたらこの娘は頭がおかしいのかもしれないと、この時感じ始めていた。
「はあ、そういうことでしたか」
あまりに突飛な話を聞かされた後だったから、緊張なんかは、すでに消し飛んでいた…ような気がする。そんなことを考えていると彼女はなぜだか考え込んだような顔をして言った。
「よく見たらあなた、なかなか面白そうな生徒よね。どことなく雰囲気が副部長と似ているのよね。」
僕は不自然なくらい大げさに驚いてしまっていた。
「え?他に部員はいないんじゃ…」
「いや書道部員はいるかって聞かれたから、いないって答えたのよ。私の部活には部長の私ともう一人、頭がおかしい副部長がいるわ。」
大げさすぎない淡いような表情で言っていた。
副部長がどういう人か、この時は知らなかったのだが、頭のおかしいといわれるような人と似ているなんて心外にもほどがあると思った。
「もし入る部活がないのなら、わたしの部活に入ってみない?あなたがこの部活に入れば少しは退屈しのぎになりそうな気がするし…」
口元だけをゆがめて淡々と口に出している感じがした。
どう考えてもイカれた部活動だったが、この時の僕はおかしな話を聞かされすぎて頭が変になったのか、猛烈にこの部活動に入ってみたくなってしまったのだった。あたまのおかしな副部長とやらも見てみたかったし、僕はこの書道をする気のない書道部に入部することに決めた。
「そうですね、ちょうどどっかの部活に入ってみようと考えていたところなので、入部することにします、入るためには、入部希望とか書いた方がいいですか?」
「いやどうせすぐ廃部になるし、いらないわよ、これからよろしくね、えっと…」
「田中太郎です」
「なんか普通過ぎる名前ね」
失礼すぎるだろと思った。自分でも名前が普通過ぎることは、気にしていたことだったので思わず顔をゆがめてしまった。
「私は太宰良子、これからよろしくね、太郎」
しかめ面の僕とは対照的な、いい笑顔だった。
この後は特に何もなく、彼女はずっと本を読んでいたし、僕はなにもすることがなかったので、そそくさと帰ってしまった。帰る前に彼女は淡く笑いながら言った。
「明日は副部長に部活に来るように言っとくから、明日も来なさいよね。」
こうして僕はイカれた書道部に入ることになったのだった。
・DAY2 part1
昨日は初めて書く手記に夢中になって、夜の一時頃にようやく書き終わった。だから今日一日学校の授業をまともに聞くことができないくらい、ずっと眠かったんだけれども、今日の部活動で、太宰さんの言っていた副部長と出会い、朝からの猛烈な眠気が消し飛んでしまった。今日僕が部室に入った時には、まだ太宰さんしか来ていなかった。昨日と同じ窓際の席で、静かに本を読んでいた。
「こんにちは、太宰さん」
「こんにちは、今日も別にやることがないのだけれど、そろそろ副部長がくると思うから…」
ちょうど話終わったタイミングで、黒板側の扉がけたたましい音をたてて開いた。入ってきたのは、セーラー服の上に茶色い外套を羽織った女子生徒だった。胸を張って堂々としていて、不自然すぎるほどに笑顔だった。
「やぁ、愛しの良子!待ったかね。ムム!その眼鏡をかけた普通過ぎる少年は?」
耳を覆いたくなるほどのでかい声だった。今思い返すと、よくこんなひどいことを堂々とでかい声で言えたものだなと思った。
「来たわね向井、この普通過ぎるのは新入部員の太郎君よ」
この時はあまりの衝撃的な登場に驚いて、頭が真っ白になってしまっていた。入ってきた副部長は、身長が160あるかないか程度の低身長で、髪の毛はロングでパーマのかかった美少女だったのだが、茶色い外套を羽織っていたし、目の周りをオジーオズボーンみたく黒く塗りたくっていて、正直まともには見えなかった。この人と似ているだとか冗談にもならなかった。似ても似つかないじゃないか。とても怖かったのだが、なんとか一言挨拶することはできた。
「よろしくおねがいします」
声が震えてしまっていた。
「よろしく!しかし太郎なんて名前は不思議すぎてつまらん!声に出すのも嫌になるレベルだぞ」
なんでこの人は笑顔で人が傷つくことが言えるのだろうと思った。
「しかも悪魔的に無口だ!よし今日からお前の名前はタロフェスだ!」
「いやわけわからないのですが…」
「いやなに!悪魔的だったからな!高身長で細身、まるで箒だ!」
箒なら悪魔と関係ないじゃないか!と反論したくなったが緊張で言いたいことがのどに引っかかってうまくものが言えなくなってしまった。
向井さんとの会話に困ってしどろもどろになっている僕を見て太宰さんが説明をしてくれた。
「向井はこの世の科学に失望した科学者に憧れているのよ、この部活にいるときだけその科学者のコスプレをしてやってくるのよ」
「はぁなるほど」
それにしてもマニアックなものにはまるなぁと思った。しかし科学者というより、疲れ果てた探偵のようにも見えた気がした。科学者のコスプレなら白衣の方が様になるのにと書きながら感じた。
向井さんは相変わらずの不気味な笑顔のまま何やら粉の入った袋を取り出した。
「さて!今日も実験をするぞ!」
いやめっちゃ科学してる!めっちゃ研究とかしちゃってるじゃん!と書きながら思ったが、もしかしたら向井さんの考えている科学者の設定では許される研究とそうでないのがあるのかもしれないと書きながら納得しようと思った。しかしこの時はとにかく向井さんの一挙手一投足に目を向けるのに必死で、頭の中は半ば真っ白になっていた。
この後ちょっとたった時また別のやつが教室に入ってくるのだが、今日はもう遅い時刻なので続きは明日の休日に書くことにする。しかしここまででも色々なことが一気に起こった気がして、明日になって次回を書く気力がわいてくるのか不安である。
いま誰か僕の家のインターフォンを鳴らしたのが聞こえた。今は夜の11時ちょいすぎぐらいで、親はもう寝ている時刻だ。僕が出るしかないのか。
・DAY2 part2
昨日夜インターフォンを鳴らしたのは、僕の次に部活動に参加した変わった女生徒だった。その女生徒の名前は大槻梅子、好きなものは電波?とかいうもので身長は160センチくらいで髪の毛は茶髪でボブヘアー。なぜかアンテナの形の傘を持ち歩いている。このアンテナの傘というのが面白い作りになっていて、家の屋根に刺さっているあのアンテナの先端が外れるようになっていて、傘のビニールと差し替えられるようになっている。しかしそんなものを雨も降っていなかったあの部活動二日目の日にも持ってきていて、太宰さんと向井さんを見た瞬間、入部を決めてすぐ帰ってしまったのだった。その大槻さんが何の用だったのかというと…
「今日は満月だから、人工衛星の電波をたくさん受信できると思ったんダァ」
意味がわからない。僕はなぜこんな夜遅くに僕の家を訪ねてきたのかということを聞きたかったのであって、外を出歩いている理由を聞いたのではなかったのだが。しかしこの大槻さんの不自然なくらいの低い声と、語尾の部分だけ特徴的に高く発声する不思議な話し方に圧倒されてしまって何も言えなかった。
大槻さんはそれだけを言い終わると満足したように淡い笑みを浮かべて
「じゃそういうことだから、太郎君も今のうちに集めた方がいいヨ、あの綺麗な綺麗な電波たちヲ!」
それだけ言ってすぐ帰ってしまった。正直向井さんの中二病のそれより数倍も気味が悪くて、恐ろしかった。僕は昨日書いた向井さんの謎の実験から続きを書こうと思ったけど、あの後は突然大槻さんが来て、入部手続きをして帰った以外にはなにもなかったので、書くのを諦めることにする。まぁ月曜日の部活動からようやく手記が部活動に追いつくのもあって、明後日から書き始めればいいやという気になってしまったのである。
ここで向井さんのことをあまり書いていなかったのを思い出したので、少し書いておくことにする。本名は向井百合子で高校二年生。ちなみに太宰良子と大槻梅子が高校一年生なのでいまのところあの部活唯一の先輩ということになる。趣味は読書とホラー映画を見るのが好きということであった。あの不思議な科学者の設定は向井さんが好きなホラー映画からインスピレーションを受けているのかもしれないと、書きながら思った。なぜこんなに部員の情報に詳しいのかというと、大槻さんが入部手続きを済ましたあと、太宰さんの提案で少しの時間だが全員の自己紹介を少しし合ったためである。まぁ大槻さんは一番最初にやってすぐ帰ってしまったし、太宰さんは今のところ少ない部員がこれから増えてしまうのかもしれないと心配していた。そういうことで月曜日からは部活動の出来事についてよく覚えてきて記録できるように心がけようと思う。
もしよろしければここはこんな風にした方がいいなどの感想も書いていただけると助かります。