第52話(最終話) 俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレて人生変わった
俺に『かわいい彼女』ができた。社内恋愛ということになる。おそらく他の人にバレないようにする人が多いのではないだろうか。
俺もその例に漏れず秘密にするつもりだ。ただ、『二人だけの秘密』にするつもりはない。
やはり如月だけには、俺と彼女が付き合うことになったことを報告するべきだろう。俺に振られてからもなお、俺と彼女が付き合えるように、如月は自ら協力してくれた。
俺は如月の「私はいつでもアンタの味方だからね」という言葉を思い出す度に、嬉しくて泣きそうになる。疎遠になるどころか、本心から俺のことを思ってくれている。
やっぱり俺は人として如月が好きだ。だから俺も如月が困っている時は、喜んで助けになろう。
いつものように電車で出勤した俺は、まず一番に彼女を探した。
「先輩、おはようございます!」
「日向さん、おはよう」
あいさつを交わし、俺はあることを話しておくことにした。
「俺達が付き合ってることはみんなには秘密だけど、如月だけには話そうと思ってるんだ」
「私も賛成です。私、如月さんも好きなので、隠し事をしたくありません」
『如月さんも』という、ちょっとした言い回しにも、俺を好きでいてくれている実感がわく。
その後はお互い黙っているため、自然と見つめ合う形になっている。
だがここは職場だ。夜の公園とはわけが違う。
「二人とも、おはよ」
そこへ聞こえてきた如月の声。なんだか助かったような気分になった。
俺と彼女も如月にあいさつをして、俺は如月に話しかけた。
「後で少し時間もらえないか」
「分かったわ」
如月はあっさりと同意してくれた。仕事の合間にできる話ではないため、俺と如月は昼休みに一緒に外食をすることになった。
二人だけである理由は、俺が如月から告白されたことを彼女は知らないからだ。俺から伝えると言ってある。
昼休み。レストランで対面して座る俺と如月。回りくどい言い方はせず、シンプルに伝えることにした。
「俺、日向さんと付き合うことになったよ」
「おめでとう! やっぱりそうならなくちゃね!」
如月は笑顔で祝福してくれた。それが本心であることは見れば分かる。
「私も早く彼氏を作らないとね」
「如月の気持ちは本当に嬉しかったんだ。そしてそれからも、ずっと俺の力になってくれて本当にありがとう」
「ホントは告白してからもね、いつか私にチャンスが巡ってこないかなと思ってたの。
でもそれって、アンタと日向さんがうまくいかなかったということになるから、いわばまるでアンタの不幸を願うみたいで嫌だなって思って。やっぱり好きな人には幸せでいてほしいと思うの。どんな形でもね。あ、今は好きじゃないから安心してね!」
「俺が振られたみたいになってるんだが! ちゃんと分かってるって。今のも俺が如月に対して、後ろめたい気持ちにならないように言ってくれたんだよな」
俺がそう言うと如月は、ぷいっと顔をそむけて、「ちょっ、ちょっとは分かってるじゃない!」と怒りながら褒めてくれた。
「それともう一つ、結瑠璃ちゃんのことなんだけど」
「あの子には私からさりげなく言っておくわね」
「いいのか? 結瑠璃ちゃんは明らかに俺と如月をくっつけようとしていたよな」
「あの子はあの子なりに、私のために動いてくれただけなのよ」
「もちろん分かってるって。結瑠璃ちゃんは本当にお姉ちゃんのことが好きなんだなと思ったよ」
「これからも結瑠璃と仲良くしてあげてね! よければまた四人で遊ぼうね」
「もちろんだ! それと何か困ったことがあったら、いつでも言ってくれ。俺もずっと如月の味方だからな」
「うん! ありがとう!」
こうして昼休みを一緒に過ごし如月への報告が終わった。
そして今日の仕事が終わり、俺は彼女を誘い夕食を共にして、如月から祝福されたことを話した。
彼女は「絶対にまた四人で遊びましょう!」と、嬉しそうに言った。こういう時の意思は固いので、近いうちに実現するのだろう。
俺は異世界帰りで、魔法が使える。俺はそれを周りに知られないようにしてきた。
だけど『かわいい後輩』としか思っていなかった女の子に、突如としてバレてしまったのだ。
そこから彼女が俺に興味を持ってくれて、俺も彼女のことを知りたいと思った。
彼女は勇気を出して俺に「先輩、魔法使えますよね?」と聞いたと言っていた。
彼女が勇気を出してくれたから、今がある。あの時、ごまかさず正直に答えて本当に良かった。
俺は異世界に行った事によって、魔法が使えるようになり、親友ができ、彼女ができた。
もしも俺が異世界に行っていなかったら、俺は今も変わり映えの無い日々を過ごしていたのだろう。
俺と彼女はそれからも順調にデートを重ねている。『かわいい後輩』が『かわいい彼女』になった。そしてこれから目指すのは『かわいい家族』だ。
俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレて人生変わった。きっとどんな経験もムダにはならないのだろう。今、俺はそれを実感している。
「私、異世界に行って本当によかったです。だって、大好きな人ができたんだから!」
「まったく、最高だな!」
【俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話】(了)
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