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俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話  作者: 猫野 ジム


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第29話 密談

 如月(きさらぎ)の妹である結瑠璃(ゆるり)さんから、如月とのメッセージのやり取りで、如月が最近再会した面白い人についての話題が増えたとの話があった。


 それを聞いた如月はドリンクでむせながらも、声のボリュームを大きくして妹さんに「何言ってんの!?」と訴えたのだった。


「如月、落ち着けって」


「私はいつも冷静よ」


「まあ、まずは座ろうか」


 如月は立ち上がっていた。俺が座るよう促すと、如月は無言でゆっくり座り直した。

 周囲の人達がこっちを見ているわけではない。さほど大きな声ではなかったのだろう。


「結瑠璃は余計なことを言わないように!」


「えー、余計じゃないよー」


「えー、俺もその話聞きたい」


「アンタがそれを言うの!? とっ、とにかくこの話は終わり!」


 如月はそう言い残すとグラスを持って席を立った。行かないでくれー! 如月が席を立ったということは、俺と妹さんの二人だけということに。どうするんだこれ。

 一番避けたかった状況だ。本当に話題が無い。共通の話題といえば、如月のことかマンガやアニメだけど、何を話そうか。


 俺は時間稼ぎのため、ドリンクを飲んだ。すると妹さんから話しかけてきた。


「お姉ちゃんのこと好きですか?」


 俺は思わず『ブフォッ!』と吹き出しそうになったが、何とか踏みとどまった。

 この子はいきなり何を言い出すのだろうか。


「あー、そうですね。明るくて楽しいから好きですよ」


「それって人として好きってことですよね」


「そうなりますね」


「それじゃダメですよ!」


「なんで!?」


「だってお姉ちゃん、明らかにあなたのこと意識してますよ。ワンチャン(もしかしたら)好きなのかも」


「ワンチャン好きって……」


「だってお姉ちゃん、今まではラノベやマンガに全く興味が無かったんです。でも最近急にラノベにハマったみたいで。Web小説も読んでるって教えてくれましたよ」


「それは俺が勧めたんですよ」


「そこです! やっぱり! 私がマンガやアニメをいくら勧めても興味を持ってくれなかったのに、いくら知り合いが勧めてくれたからといって、あらすじしか知らないラノベをまとめ買いするなんて、その人の影響すごく受けてますよ」


 妹さんは自信あふれるように俺に向かって言う。このあたりはやっぱり姉妹なんだなと思う。


「私もなんだかすごくお姉ちゃんが推してるなー、よっぽど仲がいいんだなーって思ってたんです。今日その人が男の人だと知って納得しました」


「つまりラノベを勧めたのが俺だったから、お姉ちゃんがラノベにハマったということ?」


「私はそう思いますね」


「それはラノベの力じゃないかな」


「分かりました。この件についてはじっくりと話し合う必要がありそうですね」


 妹さんはそう言うとスマホを操作して画面を俺に見せてきた。


「来週の水曜日18時30分にここへ来てください」


 画面には有名なカフェチェーン店が映し出されている。


「平日の夕方ですけど仕事は早く終わりそうですか?」


「その日は早く終わるように別の日で調整すれば大丈夫かな」


「ありがとうございます。私なら大丈夫なので、もし何かあればお姉ちゃんまで連絡をお願いします」


「了解です」


 勢いに押されて、よく分からん約束をしてしまった。さすが如月の妹、圧が凄かった。そこへようやく如月が戻って来た。


「お待たせ。結瑠璃、何か変なことされなかった?」


「するかっ!」


「全然そんなことないよ。紳士だよ」


「ふーん、紳士ねぇ」


 今度は俺のドリンクが無くなった。取りに行かなくては。俺が席を立っている間、姉妹でどんな話をするんだろう。


 それからファミレスで主にラノベの話をした後、俺が帰ろうとする度にTシャツの裾をつままれ阻止されたため、結局夜まで三人で過ごしたのだった。



 そして妹さんとの約束の日。俺は予定通り定時ダッシュで待ち合わせ場所まで向かう。如月はまだ帰れないようだが、後から来るだろう。


 俺が一番早く着いたようだ。席に座ってすぐに妹さんがやって来た。前に会った時は長身によく似合うパンツスタイルでかっこいい印象だった。今日の服装は制服である。スタイルがいいから何を着ても似合って……制服?


「お待たせしました! 如月 結瑠璃、高校三年生です!」

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