9.困ったことに
「アリナ!?」
「……お、お兄ちゃんと離れ離れになるなんて……嫌だよお……。」
突然、アリナが俺達の前でわんわんと泣き出す。
「はぁ……。」
「ちょっラミ、溜息とか吐くなよ……俺の妹だぞ?」
「ああごめん、私泣けば何でも許されると思ってる女、あんまり好きじゃなくて。」
こいつ……俺の妹に対して何てことを言っているんだ!?両親を失ってから、ずっとずっと大切にしてきた妹に……!!
「おい__」
バン!!!!
俺がラミを注意する前に、アリナが机を勢い良く叩いて立ち上がった。
「……!?」
「ア、アリナ……?」
振動でアリナの体がぷるぷると震えている。
「……アンタなんかに……。」
「……え?」
「アンタみたいな女に、お兄ちゃんなんか任せられない!!どうしてもダンジョンに行くって言うなら、私も着いて行く!」
__え。
「「ええーーーーーーっ!?!?」」
意見が対立していた俺たちの声が重なり、室内によく響く。
先程のアリナと同じように、ラミが机を両手で叩いて立ち上がった。
「ちょっと待ってよ!あなたまだギフトも貰ってない無能力者でしょ!?そんな奴がダンジョンに行ける訳ない!」
「でもアンタみたいな性根悪女にお兄ちゃん任せられないもん!!私も行く!!」
……しばらくの間、俺を無視して激しい口論が続いた。割り込める隙間は一度も無く、止められそうにも無かったので、俺はそれをただじっと見続けることしか出来なかった。
「っはあ……はあ……仕方ない。こうなったら、レスに決めてもらいましょう。
「はあ……はあ……分かったよ、そうしよう。」
「……え?」
二人が俺の方を向き、きっと睨みつけて来る。
「レス。」「お兄ちゃん。」
思わず体が強張り、姿勢を正して二人を見返した。
「「こいつ/私のこと……」」
「連れて行かないでしょ!?」
「連れて行ってくれるでしょ!?」