7.これからとその準備
「それで、これからどうしたいの?」
公園のベンチに座るや否や、ラミは心配そうに俺の顔を覗き込みながらそう言う。
「ラミの言う通りダンジョンに潜りたい気持ちは勿論あるが……でも、妹がな。」
「その妹さんって、どんな子なの?」
ラミの言葉に、妹のあの可愛い容姿を思い出す。
艶のある綺麗な黒髪、宝石の様に美しいピンク色の眼。背が低いながらも懸命に俺の下に走ってきて、ニコニコと笑う。
シスコンになってもおかしくないレベルの美少女、それが俺の妹だ。
「めちゃくちゃ可愛い。」
「ああ、あなたシスコンなのね。」
少し残念そうにラミは言うが、俺は気にせず続ける。
「だってそれくらい可愛いんだ、ラミにも一度会ってほしい。」
「ふーん……そんだけ言うなら、会わせてよ。あなたの村に行けば会えるんでしょ?」
「まあそうだが……。」
俺は真上の太陽を見て、溜息を吐く。
「今から行けば、着くのは夕方だぞ。」
「別に構わない。だってレスの今後に関わる話だよ?」
「……まあ……。」
「ほら、思い立ったらすぐ行動!それだけ時間が掛かるなら早く行こうよ!」
俺の意見も聞かず立ち上がったラミにもう一度溜息を溢して、これは止められないと立ち上がる。
「分かったわかった、じゃあ行くぞ。」
〜〜〜〜
「ここがレスの村?」
「ああ、ガーテル村って言うんだ。」
王都から数時間歩き、村に着いたのはやはり日が落ちかけてきた頃だった。
あそこに比べると俺の村は本当に栄えておらず、みすぼらしい所だなとつくづく思う。
「で、家はどこ?」
「今から案内するよ。」
村に入った瞬間、村人達のあの嘲笑が耳に届く。
「何これ?急に聞こえてきたけど。」
「……村人の声だ。俺の能力を知ったら、みんな人が変わったように馬鹿にし始めて……。」
「……最低。」
そんな事を話していると、村人の一人が俺たちの目の前に現れた。
「よおレス!どうしたんだよそんな可愛こちゃん連れて。トレードで奴隷でも交換したか?はは!」
男の名はグレン・サータニア。子供の頃は親友と言える程仲良しで、毎日のように遊んでいたやつだ。
しばらくこいつとも会っていなかったが、他の村人と同じく俺のことを馬鹿にしてくるらしい。
「……久し振りだな、グレン。俺に何の用だ?」
「いやあ、すっごい可愛い子を無能スキルのお前が連れているなんて滑稽でな!おい可愛こちゃん、こんな奴より俺と一緒に遊ばないか?俺こいつより強くて面白い事させてあげられるぜ?」
そう笑って、グレンはラミの腰に手を回そうとする。
「やめて!」
俺が止める前に、ラミが大声をあげてその手を退けた。
「アンタなんかよりレスの方がずっと性格良いし!それに強いとか言ってるけど、アンタのスキル知らないし!勝手に触らないで!」
凛としたその言葉に、グレンはあからさまに不機嫌になってちっと舌打ちをする。
「もうアンタの顔なんか二度と見たくない!さっさと行こう、レス!」
俺の手首を無理矢理引っ張り、俺達はその場を後にした。