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25.クラゲの心臓

 ダンジョンの中は薄暗いのに加えて、足首くらいまでの高さの水が張っていた。蛍のような小さな灯りで所々確認できる水色の壁には海洋生物が描かれている。

そんな内に俺は、浸水していない正方形の足場を発見した。


「そこに乗って。」


ラミに言われるがままに乗ると、彼女は鞘から剣を抜いて水を混ぜ始める。


「クラゲの心臓は綺麗だから魔物が食いつきやすいの。それはキングオークも同じ。」


数秒混ぜると、ふよふよと奥から何かが近づいて来る。目を凝らせば、そこには半透明のクラゲがいた。クラゲの中には金色に輝く丸っこい何かがある。あれが心臓なのだろう。


「でもクラゲの毒は危険だから気を付けて、個体にもよるけど基本的に刺されない方が賢明。」

「心臓と何かをトレード出来ないか?きっとここなら安全に取れる。」

「出来るんじゃない?やってみれば?」

「ああ__【トレード】」


 俺がそう唱えると、心臓があった場所に見覚えのある剣が出現し、隣で何かが輝き始める。


「それがクラゲの心臓か?」

「ええ。……って、あれ私の剣!?何勝手にトレードしてるの!?」

「えっ!?」


確かにそれはラミの剣だ。見覚えがあると思ったが、まさかそんな……


「もう、仕方ないわね!」


 ラミが剣をクラゲから引き抜こうとする。もう心臓がないから毒も無いんだろう。


「きゃっ!?」


すると、突然ラミの体が引っ張られて水の中に沈んだのだ!


「ラミ!」

「ラミさん!」


俺達は何とか引き上げようとするが、全く持ち上がる気配がない。しかも、別のクラゲらしき半透明の触手がラミの体をまさぐっている!


「ふ……ぅ……。」

「待ってろラミ、今助けてやるからな!」

「でも持ち上がらないよ!どうすれば良い?」


 アリナの声に、ふと先程買った高級な剣が映る。


「アリナ!その剣で触手を切ってくれ!」

「え?あ、うん!分かった!」


俺の指示でアリナは丁寧に触手を切っていく。しかし触手の動きは止まりそうにない。

すると__


「いやっ!?」

「アリナ!?」


 アリナまでもが触手に引っ張られ、水に落ちてしまったのだ!


「ひ……いいっ、気持ち悪いよぉ、助けて、お兄ちゃん……。」


触手はアリナの衣服の中に侵入し、体中をまさぐる。


「ふぁ……ぁ、うぅ……。」

「二人とも!」


俺は焦って水に手を伸ばすが、その瞬間に激痛がはしった。これではまるで駄目だ!

……

……


そうだ。

さっき不可抗力とはいえ、剣と心臓がトレード出来たんだ。心臓とアリナの剣も同じように出来ないだろうか?


ラミの剣はクラゲの心臓と一個分の価値。この剣はどのくらいか分からないが、ラミが高いと言っていたのだからきっとそれ相応の価値があるのだろう。


ドワーフの時だって何とかなったんだ!きっと今回だってできる!


「トレード!」


 俺は叫んだ。

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