24.試し切り
「おらっ!」
ザシュ!と大きな音がして、木製のマネキンは真っ二つに割れる。
「……凄い、本当に初めて?」
「ああ、剣は全く。この間のダンジョンで初めて触った。」
「それでこれね、才能あるわ。」
俺達は武器屋の傍らにある練習場で試し切りをしていた。店主曰く「マネキンは腐るほどあるからいくらでも切って良い」だそうで、俺とアリナはラミの指導を受けながら初めてまともに触る剣の指導を受けている。
「次、アリナ。」
「はーい……。」
「折角強い剣買ったんだから、その分働いてもらうからね?」
「はいはい、分かってますよーだ。」
アリナが剣を振りかぶると、その切れ味の良さも相まってマネキンには大きな傷が付く。
「見てお兄ちゃん、私切れたよ!」
「凄いなアリナ。」
「流石のシスコンブラコンっぷり……でも悪くないわね。兄妹揃って戦闘の才能はあるみたい。」
「あったりまえじゃないですか!だってお兄ちゃんは最強の能力者、私はその妹ですよ?」
「まだ最強って決まった訳じゃ……まあ良いわ。さ、どんどん行くわよ!」
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そうして(キツい)訓練が終わった後、俺達はまた新しいダンジョンへと赴いていた。
場所は王国から遠く離れた所にある海。つい先ほどまで明るかった空は、いつの間にかぽっかりと暗くなっている。
「ここ……ただの海ですよね?」
「そうね、ただの海ね。」
「この先にダンジョンがあるのか?」
「先……まあ、先って言い方は正しいのかも。」
するとラミは剣を引き抜きながら、夜の冷たい海の中へ足を入れる。
「この時間にしか出ないダンジョンがあるの。」
剣先はどこまでも続きそうな海の中へと向けられ、彼女は腰が濡れてもなおその歩みを止めない。
「ちょっとラミ、危な__」
ヒューン……
ヒューン……
「何だ!?」
そんな音と共に海中から現れたのは、小さな水色の城だった。
「クラゲの狩り場 ★4。だけど油断は禁物。」
「な、何で俺達をそんな所に……しかも、いきなり難易度が上がっているじゃないか!」
「早くキングオークの宝石を手に入れたいんでしょ?」
「え?あ、ああ……まあ……。」
「それなら、クラゲの心臓は手に入れておかないと。」
クラゲの心臓?
「さ、行くわよ。」
「あっ、ちょ、ちょっと待ってくれ!」
ずかずかとダンジョンへ入っていくラミの背中を追いかけて、俺達兄妹はダンジョンの中へと入って行った。