17.換金①
「うん、これは高値で買い取れるわね。」
その後換金所に戻ってきた俺達は、ミーラの鑑定を大人しくじっと見つめていた。
「どのくらいの値段になりますか?」
「ざっと8000……いや一億……もしくはそれ以上……とにかく、私でも珍しい取引額よ。アンバーの紹介も頷ける。」
ミーラは宝石にちゅっとキスをして、俺に向き直る。
「ところで、この宝石を王族に見せたいんですって?」
「え?……いやいや、俺達はそんな事は一言も……。」
「アンバーがそう言ってたけど?」
あいつ、自分の考えを俺たちの物のように言いやがって……!
「でも確かに、これなら王族も気に入りそう。ただでさえキングオークは討伐が難しいのに、こんな綺麗な状態なんて……ボウヤ、どんな能力なの?」
「ああいや、それは……。」
「教えてよ。ちょっと前に剣聖の子が出たって噂になったけど、もしかしてボウヤもそれくらい凄かったり?」
すると、隣に座っていたアリナがばっと勢いよく立ち上がった。
「お兄ちゃんは、トレードって能力を持っているんです!」
「アリナ!?」
「ちょっ、何言ってるの!?」
「だって、トレードって凄く強い能力って分かったでしょ!ここで広めておかないと、お兄ちゃんの誤解が取れないままだよ!」
「とは言っても……はあ……。」
「まあまあ、そこまでにして。うるさいのは嫌いなの。」
宝石を小さな白いクッションの上に置いて、ミーラは筆ペンと紙を棚から取り出す。
「そこの……アリナ?その子の言っている事はそんなに間違っていないと思うわ。その口ぶりだと、ロクな待遇じゃなかったんでしょうし。権威を回復するためにも、まずはその宝石を見せに行くことね。」
「でも、城の中になんて入ったことが……。」
「大丈夫、私も一緒に着いていくから。」
そして何かを書き終えると、ミーラも立ち上がって鞄やらを持ち出してくる。
「何をしているんだ?」
「何って、城に行く準備だけど。」
「え、もう行くの?」
「行動は早い方が良いでしょ?さ、貴方達も早く準備しなさい。」
〜〜〜〜〜〜〜〜
城内は言葉にできない程立派だった。
城下町に何度も訪れた事があるため、その白と金の外観こそ知っていたが、中は一度も入ったことがない。
ミーラの“顔パス”で簡単に城内へと入れた俺達は、互いにその凄さに圧倒されていた。
「凄い……。」
「流石城って感じね。」
柔らかいカーペットの上を歩きながらそんな会話をしていると、突然どこからこちらへ向かってくる足音が聞こえてくる。
「何……うわっ!?」
その誰かは、俺に抱きついてきた!
「先程はお手助け頂きまして、ありがとうございます!」