13.ダンジョンの英雄
その時、俺の目にキングオークの宝石が写った。
胸に宝石が付いていると言う事は、もしかしたらあれが弱点かもしれない……!
「お兄ちゃん……!!」
「待ってろアリナ!今助けてやるからな!」
__トレード!
俺の言葉と同時に、赤い宝石と大きな剣が入れ替わった!
「グオオォォォッッ!!」
剣は胸に深々と突き刺さっていて、奴は苦しそうな声をあげて暴れる。
その反動で、オークの手からアリナが落ちてしまう!
「お兄ちゃん!」
「アリナ!」
俺は咄嗟にアリナをキャッチし、オークから離れた。
ラミはどうなった……!?
「二人とも、離れて!」
「ラミ!」
瓦礫の山からやっと立ち上がったラミは、両手をオークに向ける。
そこから大きく赤い魔法陣が出現して、辺りが一気に熱くなった。
「お兄ちゃん……!?」
危機感を覚えた俺は思わずアリナを抱き締め、ラミから出来る限り離れる。
それと同時に__
「火山流星!」
魔法陣から溶岩の塊が飛び出し、オークを襲った!
「グオォオオオオッッ!!」
キングオークの体はみるみる焼けていき、最後に断末魔をあげて倒れる。
「……すっげえ。」
俺達は一瞬何が起きたか分からず、ポカンとその光景を眺めていた。
そして数秒後、ラミがこちらを向く。
「……もう大丈夫。」
「ラミ!」
俺とアリナとラミは、お互いに向かって走った。
3人で抱き締め合うと、自然と笑いが込み上げてくる。
「それにしても、キングオークの弱点が宝石だってどうやって分かったの?」
「何となく?」
「何となく!?お兄ちゃん凄い!」
しばらくそうして、俺はキングオークに近付いた。
「ちょっ……お兄ちゃん、危ないよ?」
「もう大丈夫よ、流石に動かない。」
胸に突き刺さった剣を抜き、まじまじと見つめる。
剣は程よく重く、装飾もそれなりに豪華で、切れ心地も良さそうだ。
「キングオークの宝石は高値で取引されるの。傷が無ければないほど良い__だから、その剣がトレードされたんでしょうね。」
「なるほど……。」
「とりあえず、もう一回トレードしたら?剣の持ち主も困っているだろうし。」
「そうだな。……トレード。」
すると、剣が俺の手から消えて再び赤い宝石が手の中に現れる。
「そうだ、宝箱の中身を見てみないか?」
「さんせーい!」
宝箱を開けると、中にはピンク色の液体が入った小瓶があった。
「これは……回復薬ね。」
「それなら二人が飲んだ方が良い。」
「……関節キスってこと?」
「ああ。だって一つしかないし、仕方ないだろ。」
溜息を一度吐いて液体を飲み、ラミはアリナに回復薬を渡す。一口飲むなり、アリナは眉間にシワを寄せる。
「……にがーい!!」
「え、に、苦い?」
「良薬は口に苦し、よ。」
その後も苦いにがいと言うアリナを何とかなだめ、回復薬は空になった。
「さ、早くダンジョンから出ましょ。」
「ああ。行くぞ、ラミ。」
「うん!」
かくして、俺の初めてのダンジョン攻略は終わったのであった。