11.フリーな冒険者
「ダンジョンには行けない……って、どう言う事だよ?」
「何、そんな事も知らないの?ダンジョンに行くためには、まず“ギルド”に行かなきゃいけないの。」
ギルドとは、様々な依頼やダンジョンの詳細を冒険者達に教えてくれる施設だ。
俺も耳にしたことはあったが、まさかそんな決まりがあったなんて。
「ううん……でも、ギルドには行く必要ないんじゃないかな。」
横でアリナが首を傾げながら言う。
それに対して、ラミは「はあ?」と不機嫌そうな顔をした。
……やっと喧嘩が収まったのに、嫌な予感がする。
「あのね、ダンジョンに入る為にはギルドへの入会が必要不可欠なの!フリーで冒険者なんかやったら、情報だって貰えないし、ダンジョン内で死んだら死体の回収もされない!良い事なんて一つも無いんだからね!?」
「でも、お兄ちゃんは街で酷い事されたんでしょ!?ギルドになんか行ったら、またそうなる!」
ああ、ヤバい。
また喧嘩が始まってしまった。今度はどう抑えようか__なんて心配をしていたら、ラミは納得した様子で首を縦に振った。
「…………確かに。」
「え?」
「いや、確かに言ってる事は間違ってないから。アイツは街でも有名人なの、もうレスの噂が広まったとしてもおかしくない。それなら、ギルドに行く方が逆に不都合かも。」
「ほら!だから私は言ったの!」とアリナは大声を上げた。
「それじゃあ……一旦フリーで活動するって事か?」
「正直そこまでしたい訳じゃないんだけど……まあ、レスの都合を考えるとね。」
「ラミ……。」
なんて良い子なんだろう。ラミは俺達よりもずっと冒険者の生活が長い筈なのに、その肩に囚われず柔軟な考えを持っている。
俺も見習わなくては。
「とりあえず、私が知っている一番簡単なダンジョンを案内してあげる。着いてきて。」
〜〜〜〜
少し歩き、俺達は森の中にある石造りの建物に到着した。
【オークの棲家 ★1】とご丁寧に看板まで立てられ、親切設計になっている。
「星の数はレベルを示してるの。一から十まであって、数が多い程難しくなる分、良い物が手に入る。」
「ラミはどこまでクリアした事があるんだ?」
「私は七まで。正直、七でも凄いキツかったんだけど……。」
その言葉を聞いて、俺は内心ゾッとした。
ラミで七までしかクリア出来ないなら、俺はどうなるんだ?
まして妹なんか、まだ能力を持っていない訳だし……。
「まあ、一ならそう怖がらなくても大丈夫。ほら、入りましょ!」