10.英断
「え、ええ……。」
突然の質問に俺は対応出来ず、たじろいてしまう。その間も二人は、俺の返答を待ち続けてわあわあと怒り声を上げている。
「こいつはまだ何の能力も持ってないの!」
「お兄ちゃんだって私と離れるの嫌でしょ!?」
「あーもう!分かったって、ちょっと待ってくれ!」
耐えきれず、俺は叫ぶ。
二人の反応を伺いながら、静かになった部屋で俺はゆっくりと口を開いた。
俺は__
「……俺は、アリナを連れて行くべきだと思う……。」
「はあ!?」
当然、その言葉にラミは再び机を叩いた。
「私の話聞いてなかったの!?こいつはまだギフトも貰っていない無能力者!連れて行くなんて危なすぎる!」
「でも__」
「ダンジョンには危険なモンスターがうじゃうじゃいるの!……私達よりずっと大きい狼とか、顔が何個も付いている蛇とか……。そんな所に妹を連れて行くの!?」
「でも!!俺はアリナと離れたくない!!」
側から見ればただのシスコンだ。
でも俺は、妹と離れたくない。
「……え?」
「アリナは親が亡くなってから、ずっと大切に育ててきたたった一人の妹なんだ……。そんな大切な妹と何年も離れ離れなんて、俺には耐えられない。」
「……レス……。」
「お兄ちゃん……!」
しばらくの間、部屋に沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのは、誰よりも声を荒げていたラミだった。
「……じゃあ、勝手にすれば?」
「__え?」
「だから、勝手にしたら?そんなに連れて行きたいんなら、私は止めない。」
「ラミ……!」
「ただし!」
ラミが人差し指を向けてくる。
「ちゃんとこいつを守る事!さっきも言ったけど、ダンジョンには色んなモンスターが住み着いているの。油断したら最悪死ぬ。大事な妹って言ってるんだから、ちゃんと守ってよ!」
「……ああ、ありがとう!」
外の空気は、いつもより清々しかった。
これからこの二人と一緒に、俺は様々なダンジョンを攻略していくのだろう。
不安な反面、とても楽しみだ。
「じゃあ__行くぞ!」
俺は意気揚々と走り出した。
「ちょっと待って、まだダンジョンには行けないよ。」