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文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 前回ドミニクに頼って不正をしていたアドリエンヌは、テストに対して苦い思いを持っていた。だが、それらはすべて自分の弱さのせいであることも承知していた。


 無言で過去の苦い経験を思い出していると、心配したルシールがアドリエンヌの顔を覗き込む。


「アドリエンヌ、緊張してるの? 大丈夫よ。あれだけ練習したじゃない」


 自分も緊張しているはずなのに優しく励ましてくれるルシールに感謝しながら、アドリエンヌはぎこちなく微笑む。


「ありがとう、ルシール。テストとか大勢の前でやるのとても苦手で。でもあれだけルシールと練習したんですものね。きっと大丈夫ですわね」


 そう言って自分たちの順番を待った。


 テストは二回、役割分担を変えて行われる。まず最初はアドリエンヌが水の担当で、ルシールはティーポット担当、そのつぎに担当を逆にして同じことを行う。


 アレクシはシャウラとペアを組んでいた。これに関して、なぜ婚約者と組まずに他の女性と組むのかと苦言を呈する者もいたが、実力があるもの同士で組むのは当たり前だと言う者もいた。


 アドリエンヌとしては、二人が仲良くなって周囲からも認められる土台ができるのだから願ったり叶ったりの状況だった。


 アレクシとシャウラのペアがアドリエンヌたちよりも先にテストを受け、二人とも完璧に課題をこなした。


 シャウラはテストが終わるとアドリエンヌを見つめて余裕たっぷりに微笑んだ。


 嫌味のつもりなのかもしれないが、今のアドリエンヌにはなんの嫌味にもならず、アドリエンヌもシャウラに余裕の笑みを返しておいた。


 シャウラはそれが気に入らないのか、一瞬嫌そうな顔をした。


 それを見てなぜここまでシャウラがアドリエンヌを敵視するのか訳がわからないと思った。そんなやり取りをしているうちに、アドリエンヌたちの順番が回ってきた。


 今回のテストは、一人で行うテストではない。わざと失敗するようなことがあればルシールに迷惑がかかるのであえて完璧にこなすことにした。


 アドリエンヌたちの順番になり、ルシールのパートで一滴だけ跳ねてこぼしてしまったものの綺麗にお茶を淹れることができた。


 そして、交代して同じことを繰り返す。次はお互いに何一つ失敗することなくこなすことができた。


 テストが終わるとルシールは一滴跳ねてしまったことをとても悔やんでいた。


「ごめんなさい、せっかくアドリエンヌがあれだけ練習して完璧に課題をこなしたのに、私が失敗をするなんて」


「なに言ってますの? あんなのミスに入らないですわ、絶対に合格よ。やりましたわね! (わたくし)たちは最高のペアですわ!!」


 アドリエンヌがそう言ってルシールに抱きつくと、ルシールは少し戸惑ったあと微笑んだ。


「そうよね、ありがとうアドリエンヌ」


 こうして二人は課題をなんとかこなすことができたことをお互いに祝いあった。


 今回のテストは減点法で、よほどの失敗がなければ合格する。この時点で大きな失敗もなかったアドリエンヌたちの合格は決まったようなものだった。


 合格発表は翌日、学園のエントランスに合格者たちのみ順位が張り出されることになっており、そこに名がない者は一週間後にもう一度テストを受ける必要がある。


 そこでも合格しなければまた一週間後にテストを行い合格するまで先に進めず、これを繰り返すことになる。


 要するに一定の能力に達しなければこの学園を卒業することはできない仕組みになっているのだ。


 そう考えると、前回アドリエンヌがやった不正は許されることではなかったとあらためて自分の過去の行いを恥じた。


 次の日エントランスにテスト結果を見に行くと、アドリエンヌとルシールのペアは二十八位だった。順位はともあれ、合格したことにアドリエンヌはルシールと喜びあった。


 シャウラとアレクシのペアも当然合格しており、順位は一位となっていた。あれだけ完璧にこなしたのだから当然のことだろう。


 これでますますシャウラが注目され、婚約解消に一歩近づくことになるとアドリエンヌは素直に二人が一位になったことも喜んだ。


 合格者はこの日から、生活魔法に加え攻撃魔法を学ぶことになった。


 さらに攻撃魔法を学ぶのと平行して防御魔法も治療魔法も覚えなければならず、合格した生徒たちもここから先は手こずる者たちが増える。


 今は戦争もなく、森に住むモンスターたちもこちらが積極的に関わらなければ攻撃してくることはないので戦闘することはほとんどなかったが、それでも稀にモンスターと遭遇することがあり攻撃魔法を覚えるのは必須だった。


 実践講堂に集まった合格者たちは、ニヒェルの講義を聞く。


「さて、合格者諸君。生活魔法を初めて使ってみたことで、諸君らは自分がどの属性魔法が得意なのかわかったであろう? 攻撃魔法は自分のもっとも得意な属性魔法を特訓するのが基本になる」


 ニヒェルはそう言うと、手前に座っていたエメ・ル・ロワ伯爵令息に訊く。


「エメ君、君はそれがなぜだかわかるかな?」


 エメは突然質問されたにもかかわらず、戸惑うことなくすぐに答える。


「攻撃魔法は攻撃力が高くなければ、効果がありません。ですから得意な属性を特訓し、その威力を高める必要があるからです」


「素晴らしい、その通りだ」


 そう言ってニヒェルは満足そうに頷く。


「これは最初に基本でまなんでいるからして、聡明な諸君らには簡単な質問だったかな?」


 ニヒェルがそう質問すると、エメは苦笑しながら軽く首を振った。それを見てニヒェルは微笑むと続ける。


「もちろん、色々な属性の攻撃魔法を使えればそれにこしたことはない。だが、広く浅くで威力の弱い攻撃魔法を習得したところで相手にダメージを与えられないのでは、攻撃魔法を習得する意味がないからの」


 すると他の生徒が手を上げた。ニヒェルはそちらに向きなおる。


「どうしたね、エヴァンス君」


「はい、治療魔法が一番得意な者はどうすれば良いでしょうか?」


「うむ。モンスターたちは邪気を餌に生きている。だが、体内にあるその邪気を治癒魔法で消したとしたら? モンスターは存在ができなくなるであろう? すなわちそれは攻撃となる」


 これは基礎で習っていたことだった。


「さて、他に質問はあるかの?」


 講堂内は静まり返った。

誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。


私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。


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