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文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。
「うむ、よろしい。昨日は君たちの出した水を私が空間にとどめ、そして消滅させたであろう? だからして、今日は水をとどめるところまでやることにする。いずれは何属性もの魔法を制御、コントロールすることが諸君の目標となるわけだが、一ヶ月後にはペアでティーセットを完全に準備することを課題とするから頑張りたまえ」
ペアで課題をこなす理由は、一人で課題をこなすよりもペアで課題をこなす方が、お互いに息を合わせなければならずより難しくなるからだ。
ペアは好きなもの同士で組むことができた。以前はアレクシと強引にペアを組んだものだった。
「ルシール、私とペアを組んでくださらないかしら?」
その場でルシールに小声でそう呟くと、ルシールはとても驚いた顔をした。
「私でよろしいんですか?」
そう言ってちらりとアレクシに視線を送り、アドリエンヌに視線を戻す。
「あの、アドリエンヌにはペアを組む相手がいらっしゃるのでは?」
「なぜ? そんな人、いませんわ」
「は? ふえ?」
ルシールは驚いたのか、変な声を出した。アドリエンヌはそんなルシールを可愛らしいと思い苦笑しながら言った。
「私とペアを組むのは嫌かしら?」
「そんなことありません! アドリエンヌは、その、私の憧れだったのでそんな人とペアだなんて、夢みたいで……」
「じゃあ良いってことですの?」
「はい! よろしくお願いします」
「そんな、こちらこそよろしくお願いしますわ」
こうして今回はルシールとペアを組むことになった。
きっとアレクシはシャウラと組むのだろう。アドリエンヌはそれに満足した。前回はシャウラにまったく興味を示さなかったアレクシも、これだけ早くからシャウラのそばにいればシャウラを気に入るに違いない。
親友を見つけ、王太子殿下とは婚約を解消する。これは幸せな人生への大きな第一歩だった。
この日は二属性を同時に扱えるよう特訓した。すんなりできる者もいたが、一つの属性に集中するともう一つの属性に集中できずに困惑してしまいうという者が続出していた。
アドリエンヌはそれをやっとのことできたように装ったが、ルシールやシャウラ、アレクシは余裕で二属性を操っていた。
一ヶ月後の課題までには最低でも三属性を同時に操らなければならず、学園内にある演習場で各々必死に魔法の練習を重ねていた。
アドリエンヌの屋敷には演習場があったが、ルシールと練習するためなのと周囲にアドリエンヌがあまり魔法が得意ではないとアピールするためにも、学園の演習場で練習を重ねた。
地道だがこうしてアドリエンヌよりも、シャウラの方がアレクシの婚約者として相応しいと周知し外堀をうめたかった。
来年の春にはアドリエンヌにとって頭を悩ませるイベントがある。カミーユ帰還祭だ。それまでには婚約を穏便に解消したい理由があったのだ。
カミーユ帰還祭とは文字通り英雄カミーユの帰還を祝う祝日で、大々的に王宮で舞踏会も開かれる。
今から四百年前の春、英雄カミーユは隣国との戦いで無事に勝利を納め長年続いた戦に終止符を打った。
そして、カミーユは帰還すると、妻のマリーが待っていてくれていたからこそ、国を救うことができたとマリーに感謝の言葉を贈った。
そのことから帰還祭は、国の戦勝を祝うと共にパートナーや仲間がいる者はお互いを労い、パートナーの居ないものは自分が好意を寄せている者に声をかけてペアとなり舞踏会へ参加する祝日となっていた。
前回、アドリエンヌは当然婚約者であるアレクシとその舞踏会に参加したのだが、周囲の者から「アレクシの横に立つのはアドリエンヌよりも『フィリウスディ』ではないかと言われているシャウラの方が相応しい」そんなふうに囁かれた。
それに気づいたアドリエンヌは、段々自分がアレクシの横にたっていることが申し訳なくなり、アレクシから距離を取った。
そうして気づけばシャウラはそれが当然かのようにアレクシの横に立っていた。
だがアレクシは横に誰が立とうと気にならない様子で、終始退屈そうにしていたのも印象的だった。
引け目のあったアドリエンヌは、そうやってシャウラが好き勝手にアレクシに付きまとっても文句が言えなかった。
今回は特に引け目があるわけではないので、堂々とアレクシの横に立つこともできるが、せっかくの華やかな場所でペアになった相手にあんなにも退屈そうな顔をされるなんて耐えられそうになかった。
だから最初からシャウラとアレクシがペアで舞踏会に出れば良いとアドリエンヌは考えたのだ。
帰還祭はだいぶ先の話であり、それまでに婚約を解消すればアレクシとペアになることを避けられる。
それにアドリエンヌもそれまでには自分を心から大切にしてくれる相手を探したかった。
学園では一ヶ月後の課題に向けて演習場でまずは各々で三属性の魔法が使えるように練習を重ねていた。ルシールには迷惑をかけないように、ギリギリまで一人で練習することにした。
そんなアドリエンヌにルシールは気を遣って一人での訓練に付き合ってくれたりして、アドリエンヌは少し申し訳なく思った。
そうしてルシールと仲良くなって行くに連れて、ルシールが美味しい店や本屋、可愛い雑貨屋などに詳しいことがわかると、休日は一緒に城下町へ買い物や食事に出掛けるようになった。
アドリエンヌはこんなに楽しいことをせずに過ごした前回の一年間を心底勿体無いと思った。
演習場で魔法の練習をしたあと午後からはルシールと城下町へ出掛けるのがほぼ日課となっていたある日、宝石店の前で素敵なカフスボタンを見つけた。
それは女性用のイヤリングとネックレスのセットとペアになっているもので、サンタマリアアクアマリンが使われていた。その色味がアレクシの瞳と同じ色で、アレクシがこのカフスボタンを着けたらさぞに会うだろうと思った。
誤字脱字報告ありがとうございます。
※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。
私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。