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文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

「そんな、堅苦しい呼び方はしなくても良いですわ。学友なんですもの、アドリエンヌって呼んでくれないかしら?」


「えっ?! よろしいのですか? ならば私のこともルシールと呼んでください」


「よろしいの?」


「もちろんです」


「ルシール、ありがとう」


 二人は微笑み合った。そしてアドリエンヌは、もう一度本に視線を落とす。


「ところで、その本はどこまで読みましたの?」


「ちょうど主人公が親友たちと別荘についたところです」


「そうなんですの。内容を言ってしまうと面白くなくなるから話せませんけれど、そこからとても面白くなりますわよ? ところで、この作家のデビュー作は読みまして?」


 この本の作家は有名な作家で、デビュー作は特に人気が高くアドリエンヌもそれだけは読んでいた。


 本当は新しい作品が出る度にすぐにでも読みたかったのだが、学園に入学してからは特にアレクシの婚約者として忙しく読む時間がなかった。


 そんなことを思いだすと、なんてつまらない人生だったのだろうと思いながら、ルシールと本の話で盛り上がった。


 そうしてお互いにおすすめの作家を教え合い本を貸す約束をした。


 そんな会話をしていると、ちょうどニヒェルが実践講堂に入って来た。


「静粛に、ほれほれ授業を始めるぞい。おしゃべりをやめんか」


 ほどなくして講堂内が静かになった。


「よしよし。昨日君たちは初めて魔法を使った。魔力を制御して魔法を使うことは精神的にもとても疲れることだったろう。だが、あのように毎日日常的に魔法を使っているうちに少しずつ魔力も増えるし、慣れればほんの少しの魔力で魔法を使うことができるようになる。これから自在に魔法を使えるようになるかどうかは、君たちの努力次第ということだ」


 そう言うと、アドリエンヌに目を止める。


「アドリエンヌ君、君は昨日体調が悪いと帰ってしまったね。予習は必要かな?」


「ありがとうございます。よろしくお願いしますわ」


「うむ。では、昨日の予習も含めて。君にはみんなの前で実践してもらうとしようかの」


 アドリエンヌは前回のことを思い出し、少し緊張した。が、その様子を見てルシールが小声で言った。


「アドリエンヌ、あなたなら大丈夫!」


 アドリエンヌも小声で返す。


「ルシール、ありがとう。頑張りますわ」


 以前ならこんなふうに声をかけてくれたり、慰めてくれるものはいなかった。唯一シャウラが慰めるふりをして、アドリエンヌが魔法を使えないことを哀れんだだけだったのを思い出す。


 そんなシャウラが、教壇の前の席にアレクシと並んで座っているのが見えた。シャウラは振り向き、アドリエンヌに憐憫の眼差しを向けている。


 一方アレクシは興味なさげに前方を向いていた。アレクシにとっては婚約者が魔法をうまく使えるかとか、隣に誰が座るかなどすべてがどうでも良いことなのだろう。


 シャウラはアドリエンヌに憐憫の眼差しを向けると、突然前方を向いて手を上げた。


「なんだね、シャウラ君」


「はい、アドリエンヌ様は病み上がりでいらっしゃいます。もしも魔法を使って何かあってはいけませんから、護衛の方を呼んだ方がよろしいのではないでしょうか?」


 前回、貴族の護衛を実践場にも入れるよう主張したのはアドリエンヌだった。魔法が使えずドミニクが使った魔法を自分が使ったかのように装っていたのだから、それは苦肉の策だった。


 そのお陰で実践講堂にも貴族たちの護衛が入ることになった。


 まさか、今回シャウラがそんなことを言い出すとは思わず、慌ててニヒェルに言った。


「先生、(わたくし)は大丈夫です。護衛は必要ありませんわ」


 すると、シャウラが憐憫の眼差しをアドリエンヌに向ける。


「アドリエンヌ様、遠慮しなくても大丈夫ですわ。先生はわかってくださると思います」


「でも……」


 困っているアドリエンヌにニヒェルが声をかけた。


「アドリエンヌ君、シャウラ君が心配することももっともだ。私も君に対する配慮が足りなかったかもしれん。護衛を呼んできたまえ」


 そう言うと、他の生徒に向けて言った。


「他の生徒諸君も護衛を入れたいものは、入れてかまわないぞ。この実践場は魔法攻撃の防衛には優れているが、物理的な攻撃には弱いしの。シャウラ君の意見はもっともだ」


 すると、生徒たちはお互いの顔を見てお互いにどうするか探っているようにしていたが、アレクシの護衛が実践場に入って来ると、次から次に貴族令嬢や令息たちの護衛が実践場に入って来た。


 アドリエンヌもドミニクを実践場へ入れると、改めて教壇へ向かった。


 ニヒェルの横に立ち、指導通りに行動した。


 空から水を抽出するだけなんて、今のアドリエンヌにとってはあまりにも簡単過ぎる魔法だった。だが、逆にそうだからこそ制御が難しく感じ、アドリエンヌはとても集中しながら魔法を使った。


 おそらく周囲の者にはアドリエンヌが空から水を抽出するのを、とても苦労しているように見えただろう。


「素晴らしい、アドリエンヌ君。では席に戻りなさい」


 そう言われ、教壇で一礼した。席にもどる途中小声でシャウラが話しかけてきた。


「問題なくできて良かったですわ。(わたくし)どうなるかとハラハラしました。公爵令嬢が魔法も使えないなんて、ばれたら大変ですものね」


 アドリエンヌは苦笑して返した。


 シャウラは前回とまったく変わらない。今は魔法を使えるのでこんなことを言われても平気だが、以前はシャウラがこうやって慰めてくれる度に悔しく思ったものだった。


 席に戻ると、ルシールはほっとしたような顔をしていた。


「うまくいってよかったですね!」


「ありがとう」


 そんなやり取りをした。アドリエンヌが席に座るのを確認してニヒェルは授業を続ける。


「予習が済んだところで、今日は一歩先に進めよう」


 そう言うと、全員を見回した。


「さて、次に君たちがやることは二つの属性の魔法を同時に使うこと。昨日は空から水をただ出しただけだったであろう? しかし、あれだけでは器がなければ床は水浸しになる。そこで空から出した水をそこへ留めるため空間魔法も使わなければならん。私の言っていることがわかるかな?」


 生徒たちはその問いに無言で頷く。

誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。


私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。


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