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文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 アドリエンヌは困り顔で答える。


(わたくし)もよくわからないの」


「そうなのですか?」


 エミリアはそう言ってティーカップを覗き込むと、突然笑顔で言った。


「お嬢様、素晴らしいです! まだ魔法学校に通い始めたばかりだと言うのに、もうこんな高度に魔力を操ることができるだなんて! 流石です!」


 そう言って尊敬の眼差しでアドリエンヌを見つめた。アドリエンヌは苦笑して答える。


「エミリア、なにか勘違いしてるわ。これは(わたくし)がやったわけでは……」


「いいえ、隠さなくてもよろしいではないですか。でも、どんなに魔法を使えてもこれは私のお仕事ですから。お片付けはこちらでさせていただきますね。ではお茶菓子をお持ちします」


 そう言って部屋を出て行った。


 アドリエンヌはこれが自分がやったこととは信じられず、しばらくティーセットを見つめた。そして、ものは試しと空から水を抽出してみると、それは思った瞬間にいとも容易くできた。


 こうしてやはりこれは自分がやったことなのだと確信したアドリエンヌは、抽出した水を自在に操り水滴にして自身の回りをくるくると美しく舞わせてみせた。


 なんて美しいのだろう。


 楽しくなってそんなことをしていると、廊下から歩いてくる足音が聞こえた。アドリエンヌは舞っている水滴をそこで停止させ、目を閉じその足音に集中する。


 すると、足音の特徴や手に持っているお皿の擦れる音、そしてお菓子の匂いまで感じそれらの情報から、エミリアがお菓子を持ってい部屋の近くまで来ていることがわかった。


 アドリエンヌは水滴を一瞬で消し、椅子に座りティーカップをソーサーごと手に取った。


 その時部屋がノックされ、返事を返すとエミリアを部屋へ招き入れた。


 お茶を楽しんだあと、高揚する自分を落ち着かせて、アドリエンヌは今後のことを考えた。


 自分がどれだけ魔法を使えようと、それを周囲の人間にひけらかすようなことは絶対にしたくない。それは、アドリエンヌが一番最初に思ったことだった。


 なぜなら、前回アドリエンヌが魔法を使えないとわかっていながら、自分の力をひけらかしてきたシャウラに散々嫌な思いをさせられてきたからだ。


 あんなふうには絶対になりませんわ!!


 そう心に誓った。そして、次にアレクシのことを考える。


 正直なところ前回アレクシを追いかけ尽くしても、一切相手にされなかったことでアドリエンヌは酷く傷ついた。


 それに、死にそうな体験をした今は、地位に縛られて自分の本当の幸せを考えていなかったことを心から後悔していた。


 次はもっと自由に生きよう。


 魔法が使えないなら無理に学園に通う必要はなかった。それに、魔法が使えないならそれを公言しアレクシとは婚約解消して、本当に自分を愛してくれる人と共に過ごす。そんな人生もあったはずである。


 だから今さら魔法が使えるようになったからといって、愛してもくれないアレクシとこのまま婚姻し、王妃として生きるなんてことはとても考えられないことだった。


 婚約をさっさと解消して、王太子殿下をシャウラとくっつければいいんですわ!


 本気でそう思った。


 その後、アドリエンヌはありとあらゆる魔法をこっそり試してみたが、特に不得意な魔法はなかった。というか、ほとんどの属性を完璧に操り使うことができた。


 これでもしもなにか難癖をつけられて断罪されそうになっても、前回のように失意のうちに命を落とすことだけは避けられるだろう。


 だが、この力は隠しておかなければならない。でなければ力あるものとの婚約を有益だと判断されてしまい、一番の目標であるアレクシとの婚約の解消が困難となるからだ。


 なのでアドリエンヌは、学園では魔法を制御して使用することにした。


 ドミニクには魔法が使えるようになったことを話し、心配させたことを詫びた。それを聞いてドミニクは心底ほっとしたような顔をした。


「お嬢様、本当に良かったです。ですがあの時話を聞いていた令嬢についてはどうされるのですか? 勘違いされているかもしれません」


「気にしなくて良いわ。盗み聞きして勝手に勘違いしてるだもの。この件に関してなにか言ってきたとしても、事実ではないのだから問題ないわ」


 そう言って、放って置くことにした。それに、今回は最初からアレクシの婚約者という立場を譲るつもりでいるのだから、接点も減りそんなに絡んでくることもないだろう。


 そう考えると、これからは前回のように隠し事をしたりアレクシを追い回したりせず、自由に学園生活を楽しめることがとても嬉しかった。






 翌朝、いつもならアレクシが来るのを出迎えるためにとても早く行っていたが、それをやめたのでとてもゆっくりとできた。


 それでも他の生徒よりは少しだけ早く学園に着くと、ある人物を探した。


 その人物は前回、自分が糾弾されたあと遠巻きに白い目で見てくる生徒たちの中で唯一『大丈夫?』と、心配そうに声をかけてくれた人物だった。


 そんなルシールと友達になりたい。


 アドリエンヌは心からそう思った。ルシールは二つ三つ編みで眼鏡をかけた、少し控えめな性格で一般市民枠の生徒だった。


 アドリエンヌはそんな彼女を探した。


 この学園では市民も入学してくるため学園に通っている間は、全員が地位に関係なく過ごすことになっていた。


 だからルシールとアドリエンヌが一緒に行動することは、特になんの問題もなかった。


 唯一アレクシは王太子なので彼に関してだけは別で、それなりに敬意を払って接しなければならなかったが。


 実践講堂に入ると、アドリエンヌはルシールの姿を探す。すると、講堂の端の方に一人静かに座って本を読んでいるルシールを見つけた。


 アドリエンヌはその横まで行くとルシールに声をかける。


「ルシールさん、お隣に座ってもよろしいかしら?」


 ルシールは慌ててアドリエンヌを見上げた。


「え? は、はい! どうぞ」


 そう答えると、なにを勘違いしたのか本を片付け始め立ち上がろうとした。


「待って、(わたくし)はあなたの隣に座りたいんですの。ダメかしら?」


「わ、私の隣にですか?」


「そうですわ。ダメかしら?」


 重ねてそう尋ねると、驚いた顔をしたあと嬉しそうに微笑んだ。


「嫌なんかじゃありません! どうぞ座ってください」


「よかったですわ」


 アドリエンヌも微笑み返すと横に座り、ルシールが読んでいた本に視線を向ける。


「その本、とても面白いですわよね」


 その本はミステリー小説で、アドリエンヌは読んだことがなかった。いや、正直に今さっきまでは読んだことがなかった。


 アドリエンヌの魔法の能力はあれからも天井知らずに伸びていき、今では本を見るだけでもその内容をすべて知ることができた。


 こんなふうに役に立つなんて。


 内心そう思っていると、ルシールが嬉しそうに答える。


「ゲクラン公爵令嬢もミステリーが好きなのですか? 私もとてもミステリーが好きなんですの」



誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。


私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。


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