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文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

「アドリエンヌ! 遅いから迎えにきた」


 振り向くと、講堂の入り口にアレクシが立っている。それを見てシャウラは分かりやすく動揺すると、取り繕うように微笑んだ。


「あ、あらアレクシ殿下! 申し訳ありません。少しアドリエンヌ様をお借りしてましたわ」


「貸したつもりはない」


 アレクシはそう言い放つと駆け寄り、アドリエンヌを抱き締めた。


「ひとりにしてすまない」


 そう呟く後ろから、調子を取り戻したのかシャウラが言った。


「殿下、(わたくし)アドリエンヌ様を怒らせてしまいましたの。だから少しばかり不貞腐れていても怒らないで上げてくださいませ」


 アドリエンヌはムッとして振り返ろうとするが、アレクシが引き戻し額にキスする。


 驚いたアドリエンヌは顔を赤くしてアレクシを見上げた。


「な、なにをしますの?!」


 アレクシはそんなアドリエンヌを見つめ嬉しそうに微笑む。


「可愛い」


「は、はえ?」


 戸惑っていると、アレクシらさらに強くアドリエンヌを抱き締めた。


「私の婚約者はなにをしていても可愛いらしい」


 そう言うとアドリエンヌを熱っぽく見つめる。そんなアレクシの鼓動が早くなるのを感じ、急に恥ずかしくなりうつむいた。


「顔を、見せてもらえないか?」


 そう言われ、アドリエンヌはそっと顔をあげる。するとまたアレクシの熱っぽい視線とぶつかり、恥ずかしくてまたうつむく。


 二人がそんなやり取りをしていると呆気にとられていたシャウラが、気を取りなおしたように言った。


「あら、アレクシ殿下も大変ですわね」


 するとアレクシはシャウラの方を見る。


「まだいたのか。それにしても、『大変』とはどういう意味だ? 私はアドリエンヌと過ごせて毎日幸せだが?」


 するとシャウラは申し訳なさそうに言った。


「そうですの。でも後で本当のことを知ったら殿下もがっかりなさるかも。では、アドリエンヌ様、アレクシ殿下、(わたくし)失礼しますわ」


 そう言って、そのまま講堂を出ていった。シャウラが廊下に出てしばらくたったところでアレクシはアドリエンヌを見つめて言った。


「アドリエンヌ、あまり彼女に関わらない方がいい」


 アドリエンヌはアレクシの顔を見上げて答える。


「わかっていますわ。でも、向こうから絡んでくるんですもの。なぜ殿下ではなく(わたくし)に粘着するのかしら」


「わからない。だが私たちも、もう少し気をつけるようにしよう」


 そう言って二人はシャウラが出ていったドアを見つめた。


 しばらくしてアドリエンヌは自分がどういう状況にあるのか思いだし、はっとしてアレクシから体を離した。


「あの、助けてくださってありがとうございます」


「いや、当然のことだ。さぁ、みんなの元に戻ろう」


 そう言ってアレクシは手を差し出した。


 アドリエンヌは一瞬躊躇したのち、そっとその手を取ると、アレクシはその手を力強く握り返し満面の笑みを見せ歩き始めた。






 ついに最終課題の日、森へ入る順番を講堂で待っているあいだ、アドリエンヌは今までのことを思い出していた。


 過去に遡ってからと言うもの、学園生活はとても充実した日々が過ごせた。それはやり直しができたことが一番影響しただろう。


 だが、やり直したからこそ気づいたこともある。


 それは前回もアレクシに執着せず魔法が使えないことを素直に周囲に話し、先生や学友に助けを求めていたらきっとみんな助けてくれただろうということだ。


 魔法が使えないことが問題なのではなく、問題は自分自身の中にあったのだと今さらながら気づくことができた。


 ふと横を見るとルシールと目が合い微笑み合う。その瞬間、しみじみこの日常を大切にしようと、あらためてそんなことを考えた。


 だが、アドリエンヌには気がかりなことがあった。アレクシとの関係、それにワーストのことだ。


 アレクシとアドリエンヌとの関係は、アドリエンヌが行動を変えたことや、力を手に入れたことで前回とは大きくことなってしまった。


 それに最近のアレクシは以前と違ってアドリエンヌを大切にしてくれているように感じた。


 だが、やはり以前のアレクシを知っているので、そんな態度のすべてを信用することはできないと思った。


 やはり一度はアレクシとの婚約は解消し、とにかく学園をちゃんと卒業すること。


 そしてワーストが再びその姿を現した時には、この力を使って浄化しこの日常を守ること。


 それが今の目標だと考えた。


 よほど真剣な顔をしていたからか、アレクシが声をかけてきた。


「君ほどでも最終課題は緊張するのか?」


 アドリエンヌは急に話しかけられ、戸惑いながら返事を返す。


「はい、やはりこれに学園の卒業がかかってますもの。心配ですわ」


 すると、アレクシはそっとアドリエンヌの手を握った。


「大丈夫。君なら絶対に大丈夫だ」


 そう言って優しく微笑んだ。


「殿下、ありがとうございます」


 その時アドリエンヌの名が呼ばれる。


「君の番だ、森へ入りなさい」


 そう言われみんなに手を振ると、アドリエンヌは講堂を出た。


 過去に遡る前のテストの時は、最終課題のみ護衛を連れて歩くことが許されなかったので、探索スキルの得意な者にあらかじめ星の欠片が落ちている場所を調べさせ、地図にマーカーして持ち込んだのを思い出した。


 治癒魔法の使えない者は回復できる森の雫を持ち込むことができたので、アドリエンヌはひたすら森の雫を使いながらモンスターから逃げ星の欠片を集めた。


 今度は不正せず、胸を張って卒業しよう。


 そう思いながら森へ続く廊下を歩いていると、シャウラが待ち伏せしているかのように立っているのが見えた。


 アドリエンヌは視線を合わせないようにして目を伏せ前を通りすぎる。


「アドリエンヌ様、昆虫系モンスターが苦手なんですってねぇ。昆虫系モンスターが出なければいいですわね」


 突然そんな質問を投げかけられ、思わず振り向いて返事をする。


「なぜそれを?」


 すると、シャウラは(あざけ)るような眼差しをアドリエンヌに向けた。


「あら、どこかの誰かさんが前の課題で端なくアレクシ殿下に昆虫が苦手と言ってへばり着いたと、学園内ではとても有名だからじゃないかしら?」


 そうは言ったが、シャウラがわざわざアドリエンヌのことを調べさせたのかも知れなかった。シャウラならそこまでしかねない。


 それに先ほどシャウラが『昆虫系モンスターがでなければいいですわね』と言ったことも少し気になったが、相手にはしていられないのでそのままシャウラを無視して先を急いだ。


 急ぐアドリエンヌの背後でシャウラは嬉しそうに笑うと、鼻唄を唄っていた。





 最終課題は簡単に魔法で片付けてしまわずに、正攻法で挑むことにしていた。それは、みんなと同じように課題をクリアしたいとも思ったからだ。


 昆虫系のモンスターが出ない場所は把握していた。なのでそこで星の欠片を集めることにして、そのエリアに向かう。


 このエリアには植物系モンスターが多かった。アドリエンヌはできればモンスターを浄化したかった。


 だが、そうすると星の欠片は手に入らなくなるので、採集するつもりでいた。


 そうして浄化しながら歩き、周辺を探索しながら歩き必要な数を収集することができた。


 これで課題がクリアできると安堵し、学園の方へもどろうとしたその時、突然前方から凄まじい瘴気を感じた。


 立ち止まりその正体を見ると、どこから現れたのか巨大な蜘蛛のモンスターがそこにいた。そのモンスターは今までに見たこともないようなモンスターだった。


 あまりの恐怖に動けずにいると、リオンに軽く耳を噛まれ我に返る。


「しっかりしろ、早くあいつを浄化しないか!」


 そう言われ、恐怖と戦いながらすぐにそのモンスターを浄化した。


 するとそのモンスターは五十センチほどの、大きなお尻の足の短いまん丸な可愛らしい蜘蛛にもどった。


 昆虫が苦手なアドリエンヌも、この蜘蛛には嫌悪を感じなかった。不思議な昆虫もいるものだと見つめていると、その蜘蛛は突然鳴き始めた。


「うぇ、えぐっ。お姉ざん、た、たずげでぐでてあじがとう」


「なぜ、蜘蛛がしゃべってますの?」


 アドリエンヌは驚いてその蜘蛛を見つめる。するとリオンが呆れたように言った。


「お前、これはただの蜘蛛ではないぞ。たぶん精霊だろう」


「えーっ!!」


 するとその精霊は、小さな声で言った。


「僕、精霊には見えない?」


 八つのつぶらな瞳がアドリエンヌを見つめる。アドリエンヌは慌てて否定する。

誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。


私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。


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