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文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 気がつくとアドリエンヌは暗闇の中にいた。自分が立っているのかもどうかもわからずに困惑していると声が聞こえてきた。


「面白い、お前それだけの魔力を持ちながら魔法を使うことができんのか。ならば、使えるようにしてやろう。私もこれでしばらく退屈しなくてすむ」


 どういうことですの?


 そう思った瞬間、前方に光が現れそこへ吸い込まれた。


「なにを立ち止まっている」


 声をかけられアドリエンヌは声のする方を見ると、そこにはアレクシが立っていた。驚いて辺りを見回すと、そこは魔法学園の実践講堂へ向かう渡り廊下の途中だった。


「君が勝手について来たのだから、来ないなら置いていく」


 アレクシはそう冷たく言い放つと、アドリエンヌをそこへ残して実践講堂へ向かって歩き始めた。


「王太子殿下、お待ちください」


 アドリエンヌは考えが追い付かずに、とにかくその後ろを追った。


 卒業したのは夢だったのかしら? でも、あれは絶対に夢なんかじゃない。一体どういうことなの?


 そう思いながら実践講堂へ入る。


 実践講堂とは魔法を実践する講堂であり、座学を学ぶ講堂とほとんど同じ作りの講堂なのだが、室内全体に魔法を吸収する素材が使用されている講堂のことである。


 実践講堂へ入りアレクシの隣に座ると、しばらくしてアドリエンヌたちの魔法の先生であるニヒェルが実践講堂に入ってきた。


 そしてみんなの前に立つと説明し始めた。


「え~、では。今日は実際に魔法を見てもらおうと思う。君たちは、こんな老いぼれがちゃんとした魔法を使えるのかと心配しているかもしれんが、心配はいらん。それに君らの席にはシールド魔法もかかっているから安心せい」


 それを聞いて、アドリエンヌはここが九ヶ月ほど前なのだと気づいた。


 学校では一定の教育を受けるまでは、魔法を使うことを一切禁止されている。


 なので魔法学園へ入学して最初から魔法の実践を学ぶことはない。まずは最初の三ヶ月ほど、主に座学で魔法の基礎をしっかり叩き込まれるのだ。


 それから実際に魔法を見学し、生活魔法をまずは実践。そして魔法のコントロールを覚えそれが上達してからやっと攻撃魔法を習うことができる。


 今、ニヒェルは魔法を見せると言ったことから、座学が終了したところなのだろう。


「さて、君たちは攻撃魔法が見たくて仕方がないだろうが、まずは生活魔法から見せよう」


 アドリエンヌはこの後、ニヒェルがどんな魔法を見せてくれるか覚えていた。お茶を淹れる魔法を見せてくれるのだ。


 これはとても難しい魔法で、水、火、空魔法をコントロールしなければならない。


 後に生徒たちの課題にもなったはずだ。


 ニヒェルは軽く指先を動かすだけで、これらを問題なくこなしてゆく。それを見ていてアドリエンヌは心の中で呟く。


 中身をわざとこぼすのよ。


 そう思った瞬間、盛大にティーポットをひっくり返し中のお湯をぶちまけそうになる。生徒たちも誰もがニヒェルが失敗したのだと思い驚いて声を上げるが、その時にそれらはすべて空間で制止する。


「失敗したと思ったであろう? だが、安心せい。これは時空魔法を見せるためにわざとこぼしただけだ。こうして、魔力をしっかりコントロールできれば失敗しそうになっても、ほ~れ、この通り」


 ニヒェルがそう言って、ぶちまけられそうになっていたお湯をすべてポットの中に一滴も残さずに戻すと、生徒たちから歓声が上がった。


 親たちは魔法を使えるのだから、こんな普通の魔法で感動するのは変なことかもしれないが、この国の魔法教育は徹底されていて、親たちも子供たちが見よう見まねで勝手に魔法を使おうとしないように、子供たちの前では極力魔法を使わないようにしている。


 なので学園で魔法を見学した時は、感動し誰もが魔法に対して強い憧れを感じるものなのだ。


 自分が魔法を使えないなどと思ってもいなかったアドリエンヌも、この時は他の生徒と同様に自分が魔法を使うところを想像して胸を膨らませたものだった。


 この後、まず最初に空から水を出す魔法を実践することになるのだが、アドリエンヌはどうやっても一滴も空から水を抽出することができなかった。


 ここからアドリエンヌのつらい日々が始まっていったのだ。それを思い出すと、とても憂鬱な気分になった。


「君たちは、三ヶ月退屈な私の授業を大変良く我慢して聞いておった。だからして、今日は一番最初に見せた空から水を抽出する魔法を実践する」


 ニヒェル先生の指示で一人ずつ前に出て、細かく指導を受けながら空から水を抽出してゆく。


 ほとんどの生徒が最初はてこずるも、なんとか水を抽出することはできていた。その中に、特に指導を受けずともあっさりと水を抽出した者がいた。


 シャウラだった。


 彼女は前に出ると、サッと水を抽出して見せる。そんなシャウラを見て他の生徒たちがこそこそと話し出す。


「シャウラ様って、この前編入してきたばかりでしょう?」


「そうそう。なんか、座学もトップクラスらしいよ」


「本当? だとしたら凄くない?」


「それに、ブロン子爵はとても裕福でこの学園にも相当寄付してるらしいし。裕福で才能もあるなんて本当に羨ましい~」


 そんな内容が聞こえた。そう、シャウラはとても魔力が高く、座学も魔法の実践成績もとても素晴らしいものだった。


 あまりにも能力が高いので、神の書『エーペ・ドゥ・ジュ』に書かれている神の子『フィリウスディ』の再来ではないかと影で言われていたほどだ。


 そんな彼女はアレクシに近づき、卒業するころにはアレクシのそばにいることも多くなっていった。


 アドリエンヌではなくシャウラが婚約者になった方が良いのでは? と、言う者も現れたほどだった。


 そうなってもアドリエンヌが文句を言わなかったのは、魔法を使えないという引け目があったのと、なによりアレクシが言っていた言葉が胸に刺さったからだ。


『無理に好かれようとする必要はない。婚約は国益が優先だということを忘れるな』


 アレクシはひたすら好かれようと努力するアドリエンヌに対しそう言ったのだ。


 そのせいで卒業が近づくにつれ魔法を使うことのできない自分よりも、才能あるシャウラの方が婚約者に相応しいと思うようになっていた。


 そんなことを思い出しているうちに自分の順番が近づいてゆき、今度はみんなの前で魔法が使えず恥ずかしくてたまらなくなったあの時のことも思い出された。


 そうして気分が悪くなってしまい、横にいるアレクシに声をかける。


「王太子殿下、申し訳ございません。気分が優れないので失礼させてもらいます」


「そうか」


 アレクシが自分のことなどどうでも良いとわかっているが、一応そう断りを入れると手を上げニヒェルにも同じことを言って実践講堂を後にした。

誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。


私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。


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