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文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 そうして鍵を渡され嬉しく思いながら書斎へ向かう途中、運悪くシャウラに出くわす。


「あら、アドリエンヌ様ごきげんよう」


 シャウラはそう言うと、リオンを見て微笑む。


「その小さな子猫ちゃんと契約できて良かったですわね。そんなに小さくても、一応精霊ですものねぇ」


 なんて感じの悪い言い方!


 そう思いながらアドリエンヌはなんとか作り笑顔を返す。


「あら、ありがとうございます。シャウラ様も早く精霊と契約できるとよろしいですわね」


 それを聞いたシャウラはアドリエンヌに嫌みを言われたと勘違いしたのか、一瞬鋭い目付きでアドリエンヌを睨んだが、突然にやりと笑うと今度は憐憫の眼差しを向けてきて言った。


「そうですわねぇ、(わたくし)ならその子より成体の精霊と契約したいですわ。それにしても、その小さな子猫ちゃん。ふふ、アドリエンヌ様にはとてもお似合いですわぁ。これからはドミニクにお願いしなくても、その子猫ちゃんに魔法を使うようにお願いすればいよろしいですわね」


 リオンを小馬鹿にしたようなその言い方に怒りをおぼえたが、なんとかそれを抑え気持ちを落ち着けると答える。


「シャウラ様、先日からなにか誤解なさっているみたいですけれど、(わたくし)はドミニクが居なくとも、もちろんリオンに頼らなくとも魔法は使えますわ。それに……」


「やだぁ、うふふ!」


 シャウラはアドリエンヌが話すのを遮るように声を出して笑い出すと言った。


(わたくし)の前では強がらなくてよろしいんですのよ? お友達だもの、二人の秘密ですわ。あら、そういえば(わたくし)アレクシ殿下とお約束していたんですの。これで失礼しますわね、んふふふ」


 そうして自分の言いたいことだけ言うと、その場を去っていった。


「人の話しは最後までちゃんと聞きなさいよ!」


 アドリエンヌがそう呟くと、リオンが言った。


「なんだ、あの小娘は、気に入らんな」


「リオン、起きてましたの?」


「最初から起きていた。あいつからは嫌な匂いがプンプンして、とても寝ていられるものではなかったしな。あいつには気を付けた方がいい、あまり近づくな。だが、いつかギャフンといわせてやれ!」


「もちろんですわ」


 そう答えて気を取り直すと書斎へ向かった。


 書斎へ入ると背の高い本棚の前の床に何冊もの本が雑に平積みされている。本棚に残されている数冊の本も適当に並べられているように見えた。


 そして書斎全体しばらく掃除もされていないようで床には埃がたまっており、アドリエンヌはまずはドアと窓を開け放つと本棚の前に立った。


「お前ならこんなもの一瞬で綺麗に並べられるだろうな」


 そう言うと、リオンはアドリエンヌの肩から横にあったテーブルへと飛び移った。


「そうですわね、でもいつもそうやって魔法を使っていると、思わず考えただけでそれを実行してしまうことがありますの。だから、他の人がやるようにゆっくりやりますわ」


 それを聞いてリオンは大きく頷く。


「確かにな、そのせいで私はこの姿にされたのだから」


 そう言われアドリエンヌは苦笑いをして誤魔化した。


 そして、本棚の整理にもどる。まずは本棚のすべての本の内容を魔法で見ると、すべて読みやすいよう並び替えることにした。


 アドリエンヌが本棚に向かって指を振ると、本が一斉に空に浮かび縦横無尽にアドリエンヌの周囲を飛び交い、そしてあるべき位置に綺麗に収まっていく。


「それにしても、ずいぶんまだるっこいやり方だな」


 様子を見ていたリオンは、面倒臭いと言いたげな顔でそう言った。


「でも、このやり方の方が(わたくし)には合っていますの」


 そう返すと、今度は床に平積みされた本の整理に取りかかる。


 先ほどと同じように、すべて本の内容を魔法で見ると綺麗に並び替え、次から次へ整理して行く。


 その時だった、開け放たれた書斎のドアがノックされた。誰も来ないだろうと油断していたアドリエンヌは、驚いてすべての本を空中停止させた。


 こんなところに生徒がいるはずはないので、きっとニヒェルか他の教師だろう。そう思いながら振り返ると、そこにはアレクシが立っていた。


「王太子殿下?!」


 アドリエンヌは魔法を自在に操れることを隠すため、慌ててすべての本を床にもどすとすと、アレクシの方へ向き直り膝を折った。


「やあ、アドリエンヌ。今誰と話していたんだ?」


 会話を聞かれていたことに動揺しながら笑顔で答える。


「独り言ですわ」


 するとアレクシは書斎に入り、床に置いてある本を拾いながら言った。


「いや、確かに君の声ではない声がした。もしかして、その精霊と?」


 そう言ってレオンを見た。


「い、いえ違います!」


「そうだろうね、それだけ幼齢の精霊が会話をできるはずはないのだから」


 そう言ってアドリエンヌの手を取ると、拾った本をアドリエンヌの手のひらに乗せた。


 アドリエンヌは渡された本を胸に抱くと、目を泳がせ無言で必死に言い訳を考えた。だが、アレクシは返事を待たずに話を続けた。


「それにさっきの魔法、君があれだけ魔法を操れるなんて本当に驚いたよ。君は学園に通う必要がなさそうだが?」


「そ、そんなことありません! 魔法が使えず失敗して本を床に落としてしまいましたし」


「ふーん。そう」


 そう答えたが、アレクシは信じていないような顔で言った。


「君がそういうことにしたいなら、そういうことにしよう。ところで、一人でこの書斎を片付けるのは大変だろう。手伝おうか?」


 は? なに言ってますのこの王子?!


 アドリエンヌは心の中でそう叫ぶと、微笑んだ。


「まさか、王太子殿下にそんなことをしていただくわけにはいきませんわ。それに、これからシャウラ様とお約束があると聞いております。どうぞ、(わたくし)のことはお気になさらず行ってあげてくださいませ」


 するとアレクシは無表情でこたえる。


「約束? そんなものをした記憶はない」


「そうなんですの? では(わたくし)の聞き違いですわ。申し訳ございません」


「いや、マチアスの娘がそう言ったのか? あの娘にも困ったものだ」


 マチアスとはマチアス・ド・ブロン子爵のことでシャウラの父親のことだ。アドリエンヌはアレクシがシャウラのことを名で呼ばないことに驚いていた。


 ペアでチームも組んでいるのに、なんて他人行儀なのかしら。二人をくっ付けるのは前途多難ですわ……。


 そんなことを考えていると、アレクシが不思議そうに訊く。


「アドリエンヌどうした?」


「いえ、なんでもありませんわ」


「そうか、ならいい。ところで私たちのことで少し話がある。私たちは、その、婚約者なのに最近一緒にいる時間が少ないと思わないか?」


 は?! 本当に、この王子ときたらさっきからなに言ってますの?!

誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。


私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。


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