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文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 するとちょうどその時、遠くからエメやアトラスの護衛たちとドミニクが駆けつけ、息を切らせ肩を上下させながら言った。


「お嬢様、傍を離れたことをお許しください。何故か突然モンスターの群れに囲まれてしまったのです。問題はありませんでしたか?」


 アドリエンヌは顔をひきつらせながら答える。


「そ、そうなんですのね。いないことに気づきませんでしたわ」


 するとアトラスがアドリエンヌの前に立つと心配そうに尋ねる。


「アドリエンヌ、どういうことなのか話してほしい」


 そう迫られ、嘘はつけないと思い護衛たちにもとの配置に戻るように指示すると、話し始めた。


「先に謝りますわ。実は(わたくし)、ずっと嘘をついていたんですの」


 ルシールがアドリエンヌに質問する。


「どんな嘘を?」


「実は(わたくし)、すべての魔法を完璧に操ることができますの」


「じゃあ今まで特訓してきたのも、できるのにできないように私たちに見せていたということ?」


「そうですの。ごめんなさい」


 しばらく沈黙が続いたあと、ルシールが口を開く。


「でも、アドリエンヌがそんな嘘をつくなんてなにか理由があるのでしょう? なぜ、そんな嘘をついたの?」


「誰にも言わないでほしいのですけれど、王太子殿下との婚約を解消したかったからですわ」


 その理由にエメは驚く。


「婚約の解消?! それはなぜですか? 君は学園に入学当初はとても王太子殿下に思いを寄せていたようにお見受けしましたが、なぜそんな……」


「気持ちが変わったんですの。だって王太子殿下は(わたくし)のことをなんとも思ってらっしゃらないでしょう? だから婚約の解消をして、自分を愛してくれる人と、その、婚姻したかったんですわ」


 そう答えて、恥ずかしくなったアドリエンヌは俯いた。するとルシールがアドリエンヌの顔を覗き込みじっと見つめた。


「その気持ち、私は凄く良くわかる! そうよね、お互いに尊敬し合える相手でないとダメよね?」


 そこでエメがその会話を遮るように言った。


「ちょっと待ってください。僕はアレクシ殿下が君をなんとも思っていないとは思いません。それに、婚約の解消と力を隠すことになんのつながりが……。あぁ、そうか、アレクシ殿下に知られてしまうのが困るということか」


「そうなんですの、こんなに力を使えることが知られてしまったら、絶対に婚約の解消なんてしてもらえませんわ。それに、今ならとても優秀なシャウラ様もいらっしゃることですし、利益重視で彼女を選んでくれるのではないかと」


「なるほど、だから王太子殿下とブロン子爵令嬢がペアを組んでも君は怒らなかったのですね?」


「そうですわ」


「だとしても、です。君がそんな力を持っているということは、国を根本から変えてしまいかねない事象です。それを黙っていることだけでもあまりよくないことではないでしょうか?」


「もちろん、いずれ(わたくし)が王太子殿下以外の誰かと婚姻したら隠さず本当のことを言うつもりですわ」


「いや、そういう問題ではないと思います。それにアレクシ殿下以外の誰かと、というのはとてもよろしくない」


 そこで突然アトラスが割って入りアドリエンヌを背後に隠した。


「ここはアドリエンヌ様の言う通りにするべきだ。彼女は尊い存在なんだ、我々はそんな彼女の望む通りにするべきだと思うが」


 その変わりように驚いたアドリエンヌはアトラスの服の裾を掴むと、顔を見上げた。


「アトラス? そんな、尊いとかそこまでは(わたくし)自身も思ってませんわ」


 するとアトラスは振り返りアドリエンヌの前に跪いて手を取った。


「いいえ、あなたは尊い人です。その力、あなたはきっと神の子『フィリウスディ』に間違いないでしょう」


 アドリエンヌは思わず顔をひきつらせた。


「ち、違いますわ。絶対にあり得ませんわ」


 するとエメが合点がいったとでも言いたげな顔で言った。


「なるほど、確かに。今までの歴史の中でも、こんなに魔法を自在に操った者は出てきませんでした。これが表だって発表されれば大変なことになるかもしれませんね」


 その台詞にアドリエンヌは即座に反応する。


「それは困りますわ!」


 困惑するアドリエンヌをルシールは尊敬の眼差しで見つめた。


「アドリエンヌ、でもすごいじゃない! もっと胸を張ってもいいのに」


 アドリエンヌは戸惑いながら答える。


「えっと、そんなにすごいことではありませんの。それに(わたくし)(わたくし)ですわ」


 するとアトラスが羨望の眼差しでアドリエンヌを見つめる。


「自分を飾らず偽らない。そんなあなただからこそ、『フィリウスディ』に相応しいのです」


 アドリエンヌはアトラスに向きなおる。


「本当にまだ(わたくし)が『フィリウスディ』だと決まったわけではありませんわ。すべての魔法を操れるといってもそんなに大した力ではないかもしれませんし。とにかく、この事は今は誰にも言わないでほしいんですの」


 それにはことがことだけに、全員が納得したようで三人ともすぐに承諾した。だが、その後エメはしばらく考えて付け加える。


「君の力のことはとりあえず黙っておきましょう。ですが、今日ここにデビルドラゴンが現れたこと、その時に護衛がモンスターに囲まれ足止めをされたこと。これは学園側に報告した方がいいでしょうね。ドラゴンを追い払ったのはあとから駆けつけた護衛たちがやったことにすればいいと思います」


「わかりましたわ。ありがとうございます」


 そう言って頭を下げようとするアドリエンヌを、アトラスが止める。


「アドリエンヌ様、あなたが我々に頭を下げるようなことがあってはならない」


「アトラス、(わたくし)を呼ぶときに敬称をつける必要はありませんわ。それに、(わたくし)に対する態度も今まで通りにしていただけないかしら?」


「それは……。わかりました、それがあなたの望みならば」


 そうして護衛たちとつじつま合わせの話合いをしているところに、エメが飛ばした使い魔に呼ばれた教師たちが駆けつけてきた。


「エメ! アドリエンヌ! ルシールもアトラスも無事か?!」


 そう言って駆け寄ると、全員の無事を確認し心底ほっとしたような顔をした。


「良かった、君たちは無事だったんだな。ところでデビルドラゴンは?」


 その質問にエメが答える。


「はい。護衛の者たちが追い払いました」


「そうか。とにかく君たちに被害がなくてなによりだ。君たちには詳しい話を聞きたいから来てくれ。今日のテストは中止だ、しばらく安全が確認できるまで森は閉鎖する」


 アドリエンヌはもう少しで課題をクリアしそうだったのにと、少し残念に思った。


 同じことを考えていたのか、エメが質問する。


「僕たちの課題の合否はどうなりますか?」


「それも含めて検討する必要があるだろう。まずは君たちに事情をきかなければね。そういうことで、課題のやり直しが決まったわけではないから心配しないように」


 それを聞いてみんなホッとしたような顔をした。


誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。


私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。


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