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幼馴染Vtuberがビジネスてぇてぇから恋仲に発展した話   作者: 朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます!


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3、オフで会ってみたら、幼馴染だったなんて⁉


 『ガク』さんと俺が待ち合わせをしたのは、駅から100メートルほど歩いたところにあるおしゃれでレトロな喫茶店。

 クリームソーダが写真共有SNSアプリに映えると話題の店だ。

 日差しが燦燦(さんさん)と注いであったかな窓際(まどぎわ)席で、俺はメニューを覗く。


 窓の外には、自然な緑の葉っぱが見えている。

 このお店を隠すみたいに繁る葉っぱも有名で、看板なんかは埋もれるみたいになっていて、雰囲気、秘密基地って感じなのだ。



   3、オフで会ってみたら、幼馴染だったなんて!?


 スマートフォンでメッセージを確認すれば、ゆるキャラのスタンプが送信されている。

(……かわいい) 

 指を滑らせてフリック入力でメッセージを綴る。

『俺は窓際席にいます、目印に黒い帽子に白い帽子を重ねてテーブルに置いてます』

 

 ガクさんが返してくる速度が速い。


『黒の上に白?』


 メッセージを見て、俺はスタンプを選んだ。

 お気に入りの白猫のやつ。

 手でまるを作ってて、いえすって書いてるスタンプだ。


『いえすっ』

 すると、文字のメッセージの送信通知と同時に誰かが近づいてきた。背が高い――同じ年ごろ。

(あ、ガクさんだ) 

 メッセージアプリには、文字が出ている。

『逆にしよう』


「逆?」

 声に出して言えば、目の前に座る『ガクさんの中の人』が(うなず)いた。


「どうも、こんちは。(かえで)くん?」

 ガクさんの中の人は同じくらいの年頃で、俳優さんやモデルのように都会的な雰囲気のあるイケメンだ。

 ――イケメンだ!!

 まず、それが衝撃(しょうげき)だった。


「俺、『(れい)』です」

 チャットアプリで事前に教えてくれていた本名を口にして、零さんが軽く頭を下げた。

「あっ、……こんにちは。その、いつもお世話になって――」

 

 アバターなしで顔出しした方がウケるんじゃ? と思ってしまうほどの美形ぶりに息を呑み、次いで俺は「あれっ」と驚いた。


(こ、この人……いや、ちょっとビビるくらい凄い格好良くなってるけど、幼稚園から小学校低学年のころよく遊んだ幼馴染(おさななじみ)の『れーくん』じゃん?)


 れーくんは、登下校も一緒にしていて、互いの家に遊びに行ったりしていた仲良しだったのだ。

 でも、転校してしまった。

 転校してしばらくメッセージアプリでやり取りもしていたけど、少しずつ頻度(ひんど)が減って、アカウントを変えたのか、気付いたら消えていた――そんな自然消滅的に関係が途切れた友達だ。

 

 名前もそういえば『れい』だもん。

 ――あっちは、俺のことわかるのかな。


「えと……」

(聞いてみよっか)

 ――俺のこと、わかる? 昔よく遊んだね……って。

「ぼ、俺のこと――」

「初めまして」


 零さんがつるりとした声で言って、俺の言葉はそこで飲み込むことになった。


(あっ、わかんないんだ。忘れてる……そ、そっか?)

 じんわりとそんな現実を受け止めて、俺の心がそよそよとした。

 寂しいような、それもいいか、みたいな。

 そんな大したことじゃない――自分を取り成すように思うのは、そんなことだった。


「俺、SNSのオン友達とリアルで会う『オフ』は初めてだから、ちょっと緊張してる」

「俺も」

 ふにゃりと笑顔を向ければ、零さんがちょっと目を見開いてから口元を手で覆い、そっと視線を逸らした。


「あ……、ソーダ頼もっか」

「ん、」

 豊富な色のクリームソーダの写真が並ぶメニューは、見てるだけで気分がアガる。


「ちょこの、これ頼むか」

 マシュマロトーストを指して、零さんが目を細める。


 そうそう、れーくんは甘いの好きだった。

 懐かしく思い出しながら、俺はニコニコした。

 

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