13、俺はホラゲであざとく怖がってみせる
『フロンティアランド』のメイのキャラクターは、料理のスキルを無事に上げて『初恋苺のショートケーキ』を完成させていた。
アイテム画像も可愛くて――しかしこれ『初恋苺』って。
なんか、これ渡すの恋愛の告白って感じがして恥ずかしいな……!?
13、俺はホラゲであざとく怖がってみせる
「みんなのおかげでケーキできたよ〜、お裾分けするね」
チャットに打ち込んで配れば、また撮影会が始まった。
こんな風に人とワイワイやってる雰囲気が味わえるのっていいなって思う。
中毒になる人の気持ちがよくわかるよ。
ログアウトして配信を始める。
今日は、ガクとホラゲーをするのだ。そして、明日が『フロンティアランド』でコラボをする日。
チャットアプリでは、かるーく打ち合わせがされている。
『メイは、可愛くはわわショタ全開で怖がってね』というのだ。
チャットアプリに意気揚々と返事を打つ。
『わかったよガク。善処する』
――俺は実は、ホラーにめちゃくちゃ強いんだ。全然怖いと思ったことがないんだ。どうしよう。
(いやいやっ、楽しんでいこう!? ……楽しんじゃダメなのか? 嫌だーって怖がらないといけない……? あれ?)
俺は自分の演技(?)方針に戸惑いつつ、コラボ配信のスタートを彩った。
「すーっ、」
深呼吸ひとつ、開幕の初めのコメントを待って、叫ぶ。
「ホラゲーだーっ!! どうしよーうっ、こゎぁーいっ!?」
ああ、あざといっ。
自分の声があざとくてちょっと嫌悪感が湧くじゃないかっ。
「ボクね、今日はどういうテンションでいたらいいか、わかんない! 本当に!」
――それは間違いないっ!
心の底から言えば、コメント欄が励ましてくれる。
『これは期待』
『頑張って!』
――期待されているっ!
多分、ガクと同じで『可愛く怖がってね』という期待に違いない。
俺は拳を握り、自分に言い聞かせた。
(怖がるんだ。もう、何もなくても悲鳴上げていけ! 今日は最初から最後まで泣いていけ! 俺は怖いんだ……っ、怖くて仕方ないショタなんだ!)
「はーっ、よ、よし。こ、怖くないよお〜っ?」
あざとく強がるみたいに言って、ガクとの通話を開始する。
(ビビってる感じでいくぞぉっ)
あざとく頑張れっ!
自分に言い聞かせるようにしながら、息を吸う。
「よぉー、メイ」
「っふぁあああぁぁっ!!」
「っ!?」
「あっ、ガクか! びっくりした! ごめんねっ!?」
「い、い、いや……っ」
第一声を放てば、ガクがびっくりしている!
ちょっとやりすぎただろうか。
いや、しかし配信ではちょっと大袈裟なくらいが良いって、どこかのサイトだか誰かの配信だかSNSだかで見た!
「メ、メイはホラゲ苦手? 平気?」
第一声にビビったらしきガクが恐る恐る確認してくる。
「余裕! だいじょうぶっ」
いかにも『強がってます!』と言った声で言えば、コメントはそんなやり取りを楽しんでくれているようだった。




