11、『俺は攻めだよ』?
灰谷さんをきっかけに嫉妬スタンプを押し合ったスクリーンショットをSNSに貼ると、そのやりとりを漫画みたいにしたガクとメイのファンアートがファンアートタグに投稿された。
『ガク、てぇてぇだよ』
チャットアプリでそれを共有すると、ちょっと照れたみたいなスタンプが返ってくる。
――ガクは可愛いなあ!
俺はほんわかとした。
11、『俺は攻めだよ』?
この事件(?)をきっかけに「こいつら面白い」と思ったのかは知らないが、灰谷さんはガクのSNSアカウントもフォローして、ガクの配信コメントにも出没したようだった。
するとガクのファンも灰谷さんのファンも大いに盛り上がって、また、ファンアートが増える――、
しかも、俺と違って社交的なもんだから、ガクは灰谷さんとサクッと相談して突発コラボ配信まで、果たしたではないか。
コラボ配信を観ながら『フロンティアランド』で料理スキルを上げて、俺はちょっと本格的に嫉妬心を覚えた。
――だって、向こうの方が数字を持っているのだもの。
配信者同士つるんでいて、『雪柳メイ』よりメリットが大きいのは、間違いなぁい……っ!
「く、くやしーっ」
これはもう、素直にぶつけよう。メイは素直なショタなんだ!
俺はスキル上げの作業の手を止めて、SNSアカウントでツイートを発信した。
『ガクが灰谷さんとてぇてぇしててジェラるぅ……!』
ぴえんな顔文字もセットにしてやれば、ハートがついてかくさんされていく。よし、よし。
『ガクは元々かわいいけど、灰谷さんにかわいいかわいいってされてるとボクは不安になるよーっ』
送信っ!
しばらくすると、『メイXガク?』『メイ?』ってリプライがチラホラとついてくる。
あっ、これ、ガクに知られたら『メイはピュアなショタで……』ってなるやつだろうか? 俺はそっと背中に汗をかいた。
でも、ガクが可愛いんだから仕方ない――見た目とかじゃないんだ。内面。中身だよ。性格が可愛い!! 昔から……。
ちょっと胸をスッキリさせて作業を再開すると、後藤さんのキャラクターアバターがつつとメイのキャラクターアバターに寄って来て、ハグのエモーションをしてくれた。
「ありがちー」
お礼をチャットに返すと、「メイくんもやって」とオーダーされる。
「ふふ、バーチャルの擬似ハグだね」
ハグエモーションを返すと、後藤さんがチャットに「なでなで」と打ってくれている。慰めてもらってる……!
「ありあり」
涙の顔文字を添えてチャットして、ぴったりとひっついたキャラクターアバターの映像を眺めていると、なんだかリアルにハグされたりなでなでしてもらったみたいに気持ちが安らぐのだった。
なお、ゲームを終えたあと後藤さんはスクリーンショットを投稿していて、それがまたSNSで拡散されていた。
自分でもハートをつけて煽りつつ、俺は責任をとってリツイートし、「しょげてたら慰めてくれたんだよ」と説明を添える。
そして、そんな説明ツイートにガクのSNSアカウントが『俺のメイが!!』と悲鳴をあげてくれたので、ファンが盛り上がってくれて俺はニコニコした。
「お、俺のメイだって~、えへへ。嬉しいね」
デレデレっとしながらスクリーンショットのお宝『ガクとのてぇてぇ集』を増やしていれば、ガクがさらにサービスしてくれるではないか。
『あと、俺は攻め』
――こういうところがキュンっとくるんだ!
『ボクも攻めた~い』
リプライで絡めば、返信がくる。
『許さん』
――許さんだって。
『受けでいいよ』
「あはは!」
やりとりにハートがいっぱいついている。
チャットアプリにまで、ガクが『俺は攻めだよ?』とチャットしてるじゃないか!
俺たち、めっちゃ仲良しじゃんっ。またスクリーンショットのお宝が増えた……。




