りんごが潰れた
手を伸ばす。
あなたはこちらを振り向かないけど、それでも手を伸ばす。
「どうかした?」
振り向いてそう問いかけるあなたになにも言えず、手を引っ込めてへらっと笑ってみる。
「なんでもない」
「そう?」
優しいあなたの笑顔を見ると目頭が無性に熱くなるから堪らず俯いて、何度も頷いた。
「じゃあ、また明日」
「うん、今日はありがとう」
「ふふ、こちらこそ」
じゃあ、と手を振って去っていくあなたの後ろ髪をただ見つめていると、どうしようもなく叫びたくて嫌になった。
いつかあなたの隣に素敵な幸せが訪れますように。そう心から思える日が来たら、この思いを伝えよう。
そう思うほど上手く息が出来なくて苦しい。