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異世界カードファイターのコスプレ美少女無双

作者: 睦月江介

 思い付きでネタに全振りしました。マジで色々な方面から怒られても仕方ないと思います……自重は浜で死に申した。

 俺の名は加賀美颯太(かがみそうた)、つい先日酒を嗜めるようになったアニメ、漫画、カードゲームなどを趣味とするいわゆるオタク大学生である。

 時に諸君。『異世界転移』というとどんなものを想像するだろうか? 突然異世界への門が現れるだとか、死んでしまって転生、なんてのが良くあるだろう……今回俺が遭遇したのは、ちょっと違う。

 そして諸君。異世界、というとどんなものを想像するだろうか? やっぱりエルフとかドワーフとかファンタジックな人種やら魔物やらがいる世界とか、それこそ映画みたいな超科学の発展したSFっぽい世界を想像するのではないだろうか? 今回俺が遭遇しているのは、かなり違う。

 まず、通学のためにバスに乗った。これは普通だろう……バスを間違えるのも、間抜けではあるが遅刻しそうだったのでまああり得ない話ではない。

 で、俺含め多数の客が通勤、通学のためバスに乗り込んだわけだがそれが『異世界行き』だったのである……一般のバスに偽装するとか最近の異世界転移ものは手が込んでいやがる。

 こんな事態に遭遇したらパニックが起こりそうなものだが、起こらなかった……というより起こる前に次の衝撃が来てそれどころではなくなった。いつの間にか美人のバスガイド? が現れたのである。


「おめでとうございます。今日からあなた方は、カードファイターです」


 初っぱなからニチアサっぽいセリフが飛び出てきた。


 これでヒーローの変身アイテムでも渡されるのかと思ったら、渡されたのは何やら腕に装着すると思われる大型の機械……某有名カードゲームアニメのシリーズを知っている人なら分かる、立体映像を表示させるやつだ。そして様々なイラストの描かれたカードの束……カードデッキ。


「いや今日からカードファイターですと言われてもルールわかんねえよ」


 と、流石にこれで放り出すほど無責任でもないようでデッキにちゃんとルールブック的なメモが付いていた。


「それでは、頑張ってください」


 最早有無を言わせない勢いでバスから降ろされると、そこはあちこちボロボロの道路に、廃墟が立ち並ぶ見知らぬ土地。そしてすかさず先に渡された機械と同じものを腕に装着したトゲ付肩パッドにモヒカン、ヒャッハーとか言い出しそうな世紀末な格好の連中に包囲されるという猛烈にわかりやすいエンカウントが発生し今に至る。


「オレ様達と勝負するか、素直にレアカードを渡すか、好きな方を選びな!」


 これがこの世界のルールか。即座に荒事にならないだけまだマシな世界だな。


「や、やってやる! やってやるぞ!」


 そんな言葉にサラリーマン風の男が勝負を受けると返す。その度胸は買うけど……どう考えてもフラグだよオッサン……


「ぬわーーーーっ!!」


 マンガなら即落ち2コマ、というやつである。しかも敗北するとボコられた挙げ句レアカードどころかカードデッキ丸ごと奪われた。


「弱ェヤツは! ガタガタ震えて! メソメソ泣いてりゃ良いんだよ!」


 うーわ。今度は何か別のニチアサの悪役っぽいセリフ吐いてる……が、それでひらめく。伊達にオタクではないのだ。


「ターーイム!! まずはデッキの中身を確認させてくれないか?」

「良いだろう、差し出すカードを選ぶ時間くらいはくれてやるよ」


 うん、助かった。敵を知り己を知ればなんとやら……TCG、トレーディングカードゲームである以上まずはルールと自分のデッキくらいは把握しないと話にならない。


 デッキを確認していくと、まず少女のイラストが描かれたカードが目についた。このカードゲーム、モンスターカードを用いて戦闘を行う方式で星が1個から3個、左上に記載されている。この星が多いほど強力なモンスターなのだが、悲しいかなデッキ内のモンスターはほとんど★1だった。おまけに……


 ★1 病弱少女マイヤ 攻撃力0 守備力2000 特殊効果なし

 ★1 薄幸少女フーコ 攻撃力200 守備力1800 特殊効果なし


 と、こんな具合でいかにもか弱いです、と言わんばかりの女の子カードがメイン。強いて言うなら、守備力に関しては結構高いが守りを固めるだけでは意味が無い。


「…………ん?」


 更にデッキのカードを確認していくと、引いた……もうドン引きである。


 ★1 布を食らうスライム 攻撃力200 守備力200 特殊効果 このカードを手札またはフィールドから墓地に送る事で装備カード1枚を墓地へ送る


 思いっきりエロモンスターじゃねえか。と、そこで基本の50枚のデッキの他に5枚、カードがあることに気付く。そして魔法カードにこんなものも。


 融合 指定の素材モンスター2体を融合し融合デッキから融合モンスター1体を召喚できる


「おおっ! 融合があるのか! しかもメインデッキに入らない融合モンスターならメインデッキのモンスターよりも強力に違いない! なるほど、守備の固いモンスターでしのいで融合に繋げるのがコンセプトか!」


 嬉々として融合デッキのモンスターカードを確認する。


 ★2 触手少女テンタ 攻撃力1000 融合素材 『少女』モンスター+『ローパー』モンスター


 ……もはや何も言うまい。モンスターが非常にアレなのでせめてそれを補助する魔法カードくらいはまともなものを、と恐る恐る確認する……『少女』モンスターに装備させるコスチューム系装備魔法ばかりだった。しかも中にはそこはかとなく危ない雰囲気を感じさせるカードもあり『美少女カードをコスチュームで強化し、エロモンスターで補助する』というコンセプトに疑う余地はなかった。

 俺にこのデッキを渡すことを決めた奴、趣味は合いそうだがもう少しこう、手心というか……自重というものを覚えてほしい。

 しかし、TCGで重要なのは見た目もだがそれ以上に効果の方である。それを見て、今度は違う意味で絶句する。


「見た目はともかく、書いてある事頭おかしいだろコレ……」


 初心者だと言っても、いくつかのTCGを遊んだ覚えのある俺が見れば明らかにわかる……確かに『少女』モンスター達はお世辞にも強いとは言えないが、専用の装備魔法群がぶっ壊れ気味だった。そしてそれらコスチューム系装備の多くは『1体に1枚しか装備できない』制約がありここでエロスライムが生きてくることがわかる……別のコスチュームを装備したい場合はこれで溶かせという事だ。じっくりテキストを確認すると、1つの結論に至る。


「…………見た目に目をつぶればめちゃくちゃ完成度高んじゃないか、これ?」


 そうとわかれば、あとはルールブックを頼みに勝負するだけだ。見れば、無謀にもサラリーマンのおっさん同様考え無しに挑んでカードを奪われた人や、自分からデッキのレアカードと思しきカードを渡す人が散見され、バスに乗っていた中で無事なのは俺を含めほんの数人になっていた……しかしこれだけ待ってくれるとか案外トゲ付き肩パッドの人達優しいな。


「待たせたな、俺のデッキにはほとんどレアなんて無いから奪う意味は怪しいと思うけど、それでもやるなら相手をするよ」

「それはオレ様が決める事だ」


「「Ready……Fight!」」


「先攻は貰った、ドローフェイズはスキップ、スタックフェイズ、手札を3枚スタック!」


 デッキを貰ったこのカードゲーム……『SummonMaster』、サモンマスターは互いにドローフェイズ、スタックフェイズ、メインフェイズ、バトルフェイズ、エンドフェイズの5つのフェイズを1ターンとして繰り返す。

 ドローフェイズでは手札が5枚になるようにデッキからカードを引くが、初期手札は5枚なのでお互い1ターン目のドローフェイズはほとんど意味が無い。

 次にスタックフェイズ、これは手札を3枚まで『スタックゾーン』に裏で置く。このスタックがメインフェイズで動くコストになる。また、自分モンスターゾーンのモンスターをそのモンスターの★の数だけのスタックに変換する事もできるため、通常であれば『手札を2枚もしくは3枚スタックし、強力なモンスターを召喚する』のがセオリーとなる。そのまま攻めるにも良いし、維持できれば続けて強力なカードを使う事もできる。


「メインフェイズ、オレ様はスタックを3枚使い★3モンスター『鬼喰いトロール』を召喚! 更に装備魔法『巨人の武具』を装備して攻撃力と守備力を1000ずつアップする」

「出た! ヤスの魔法(マジック)コンボだ!!」


 小物臭漂う奴に強キャラがすごいコンボ使ったみたいなセリフを吐くな。てかそろそろあちこちから怒られるぞ?


 ★3 鬼喰いトロール 攻撃力3000 守備力1200 効果 戦闘で相手モンスターを倒した場合、続けて別のモンスターに攻撃できる


 早速出てきた巨人モンスターにごっついハンマーと鎧が装備される……おそらくこの巨人、ヤスの主力あるいはエースモンスターだ。攻撃力3000は高いし、それが更に強化されて4000。即落ち2コマのオッサンもこいつにやられたのだ。


「これでターンエンド!」


 先攻は攻撃がルール上出来ない。正直言えばデカい事はデカいがそれだけだ。


「俺のターン! ドローフェイズはスキップ、スタックフェイズ、手札を2枚スタック! メインフェイズに入る」


 3枚の手札と、その無茶苦茶なテキストを確認する。そして……相手には手札も、妨害に使えるであろうフィールドのカードもない無い事を確認。


「ファイナルターン!!」


 後攻1ターンキル宣言である。だが出来てしまうしもうこのノリなら言ってしまって問題無いだろう。


「スタックを1枚使い、薄幸少女フーコを召喚!」

「攻撃力200の弱小モンスターを攻撃表示? バカな野郎だぜ!」

「それはどうかな? これから本物の魔法(マジック)コンボってやつを見せてやるよ」


 ボロボロの貫頭衣? を着た黒髪の少女が不安げにこちらを見てくる。このマシンの立体映像で出てくるモンスターのリアリティすげえわ……名前通り幸薄そうだが容姿そのものは整っている。


「装備魔法『魅惑のバニースーツ』をフーコに装備!」


 魅惑のバニースーツ 装備魔法 『少女』モンスターにのみ装備可能。場の装備カード1枚につき2000ポイント守備力をアップし、装備モンスターはプレイヤーを直接攻撃できる


「バニースーツは相手フィールドの装備カードもカウントする。よって薄幸少女フーコは守備力4000アップ、守備力5800になる。更にスタックを使い装備魔法『従属の首輪』を……フーコに装備!」


 実はほとんどの装備系魔法カードはノーコストで使えるが、この『従属の首輪』は相手にも使用可能かつ強力な効果を持つため使用にスタックが必要になる。その効果はというと、攻撃力と守備力を入れ替える代わりに、装備モンスターを従えるというものだ。

 スタックを使い召喚する召喚モンスターには『攻撃力』を参照し相手にダメージを与える『攻撃表示』と『守備力』を参照し相手の攻撃を防ぐ『守備表示』があるが大抵の攻撃表示モンスターは攻撃力の方が守備力より高いし、守備表示なら逆に守備力が高いのが普通だ。つまり本来なら、コントロール奪取という強力な効果に対して能力低下というデメリットがある。

 さて、ここで問題……の前にバニースーツ姿となった薄幸少女を見る。魔法のバニースーツの恩恵なのか、服装と同時に長くボサボサだった髪もキレイにセットされツインテールになっていた。更に……


(あの貫頭衣? だと分かりにくかったけどスタイル良いなこの子)


 痩せぎすのイメージがあったが、実際はそこまででもなく細身という方が正しい……しかしそれでいてこれでもかと言わんばかりにバストの大きさが主張されているのだ。

 セクシーなバニースーツに可愛らしいウサ耳カチューシャ、すっかり垢抜けた印象の美少女だが、すかさず物々しい鎖付きの首輪が装着され涙目になって困惑する……薄幸少女の肩書きに偽りなしである。

 話を戻そう。通常、従属の首輪は『相手モンスターのコントロールを奪う』ために使うものだが目の前の薄幸少女は『最初から俺が従えている』。彼女に『従属の首輪』を装備するとどうなるか?

 答えは『攻撃力と守備力を入れ替えるデメリットだけが適用される』。だが、そのデメリットは今のフーコには『絶大なメリット』になる。


 薄幸少女フーコ(魅惑のバニースーツ、従属の首輪装備) 攻撃力200→攻撃力6800


 従属の首輪もまた装備魔法なので、バニースーツの効果適用範囲となり守備力が6800まで上昇、それから攻守反転が起こりご覧の通りである。しかもこの攻撃力で直接攻撃可能なのだ。そしてこのゲームのプレイヤーの初期ライフは4000……つまりワンキル確定である。しかしこれマジで某カードゲームにそっくりだな……。


「バトルだ! フーコでプレイヤーに直接攻撃!」


 バニースーツに物々しい鎖付き首輪と刺さる人からすれば大変股間に響くであろうツインテ美少女……フーコ本人はおそらくヤスにパンチを入れたかったのだろうが、バニースーツに定番のヒールでダッシュなどできるわけもなく。更には従属の首輪の重苦しい鎖のためかバランスが悪いようでふらふらしながらヤスに向かっていった挙げ句、ヒールが折れてずっこけた。やはり薄幸少女である……で、それによって金的にヘッドバッドをかます形になりヤスは昇天した。フーコさんや、完全にアクシデントでかました一撃なのにこっちを恨めしい目を見るのやめてもらえませんかね? ここまでくるともうただの立体映像の域を超えている……正直色々いたたまれないので無言で立体映像装置のスイッチを切る。


 さて、初心者である俺が最初から大型モンスターを出してきたトゲ付き肩パッド……ヤスをあっけなくワンキルできた事でハッキリした。やはりこのデッキ、見た目はやや問題がある……と言うより問題しかないがスペックそのものは非常に高い。そうとわかれば話は早い、まずは自身の身を守るべく目の前の世紀末集団と片っ端から勝負し……一部は取り逃がしたものの何と全勝して襲い掛かってきた奴らは全滅させてしまったのだった。


 その日の夜、某所。

「……と、言うわけでして」

「ほお……転移バスが連れてきた奴の中にそんな奴がいたのか。面白そうだ」

「ってことは……」

「場所を教えろ。オレが戦う」

「お、お願いします、キング!!」


 何やら嫌なフラグが立ったようだが、颯太はそんなことを知る由もないのであった。

 露骨に強キャラ感のあるキングフラグ立てましたが、基本一発ネタのつもりで書いたので気が向いたら書くくらいかと思います。

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