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第4魔王 不義なるリューキ

 人間と本格的に戦うと決めた少年魔王だが、現状どうすればいいのかわからずにいた。


 少年魔王はアーミーとキラリはどんな配下を生み出すかを話し合っていた。


 サイタとサリはみんなのご飯を準備している。


 ダイキとキュイとケハタは畑をもう一度復活させている。幸いにも、鉄と石材の生産拠点は破壊されていなかった。


 ガーランドは城を元通りに戻した。


 ガブリスは城を元通りに戻したガーランドと周囲を警戒する。


「今現在最も必要な配下は人間と戦える戦闘能力が高い配下ですね」


 アーミーが指を立てながら言う。


「うん。それと僕は野生のモンスターが人間に襲われているのかどうかも知りたい」


 頷きながら少年魔王が言う。


「それなら、魔物に詳しい配下を呼び出すのがよろしいかと思います」


 ペコリと頭を下げてアーミーが言うと、キラリも話しについてきているのか頷いた。


「確かにキラリたちにはモンスターの知識を持った仲間いませんからね~」


 その言葉に少年魔王が驚く。


「そうなの?みんな結構知ってるように見えるけど?」


「あくまでも一般的に知られている部分にだけですよ。攻撃能力に優れているモンスターがどんなモンスターなのかとかは全くわかりません」


 首を左右に振りながらアーミーが言った。


 少年魔王は少し考えてから、それなら。と口を開いた。


「じゃあさ、モンスターの知識を持った仲間を生み出せばいいよね?」


 その言葉を聞いたアーミーが目を輝かせながら、それは名案です!と言った。


「キラリとしては同じ悪魔族が仲間になってくれると嬉しいです~」


 ピトッとキラリが少年魔王にくっつく。


「確かに悪魔族は戦闘能力も高いですが、それを決めるのは大魔王様とこれから呼び出す配下です」


 キラリを少年魔王から引きはがしながら、アーミーが少しむきになる。


 ここからはいつもの2人の言い合いだった。


 そんな2人を見て少年魔王は声を上げて笑った。


 さっきまで不安でいっぱいだったが、アーミーとキラリ、それに他の仲間たちのおかげで不安が自然と和らいでいた。


「やっぱりたくさんの仲間がいれば安心できるね!」


 ギャーギャー言い合っている2人に向かって少年魔王は無邪気な笑顔を見せた。


 そんな少年魔王の笑顔を見てアーミーもキラリも、この笑顔を失わせるものは全て敵だと改めて決意した。


 ●


 翌朝、少年魔王は早速モンスターの知識を持った配下を呼び出した。


「初めまして魔王様。ワシはシーワクと申します」


 深々と頭を下げたシーワクは、牙獣族猪人種だ。


 シーワクの話しによると、戦闘能力が高いのは悪魔族魔人種のリューキというモンスターらしい。


「指定して生み出せるのかな? えーと。悪魔族魔人種のリューキを誕生」


 いつも通りの小さなポンという音と煙が発生し、中から漆黒色の巨体が現れた。


 長くてねじれた3本の金色の角と長い爪を生やし、真っ赤のマントを羽織っていた。


「お初にお目に、魔王」


 リューキが深々と頭を下げる。


「あ、えっと。よろしく」


 登場しただけで分かる圧倒的な威圧感があった。


 その威圧に押されて、少年魔王は緊張しながら手を差し伸べた。


 そんな姿を見て、本来であれば自分の主であるはずの少年魔王のことをリューキは笑った。


 この態度に他の配下全員がリューキに敵意を向けた。


「おやおや。呼び出されたばかりなのに酷い対応ですね」


 リューキが長い爪で長くて大きな真っ黒の刀を握る。


 明らかな戦闘態勢だ。


 先ほどまでよかった天気は一気に曇り空へと変った。


 どう考えてもリューキの方が戦闘能力は上なのに、少年魔王を侮辱されたと思った他の仲間たちはリューキに対して一歩も退かなかった。


「大魔王様を守りなさい!」


 すぐさまにアーミーが全員に指示をだすと、全員が少年魔王を囲んだ。


 ガーランドは獣のような唸り声をあげ、ダイキとキュイはまるで自分が盾になるように一番先頭に立ちはだかる。


「私は物理耐性も魔法耐性もかなり高いです。その上このマントはあらゆる攻撃を跳ね返します。更に私は基本的に死にません。瀕死のダメージを負うと完全復活する上に自己再生能力も有しています。それでも私に敵対しますか?」


 念のためにというつもりでリューキが問うが、誰一人その場から離れる者はいなかった。


 ふー。と長い息を吐きながらリューキは首を左右に振り、更に続ける。


「この悪魔刀で付けられた傷は、時間の経過と共に深く広くなっていきます。つまり、どんな小さな傷でもこの悪魔刀で付けられた傷は最終的に死に至る傷になります。命をかけるお覚悟があるのですか?」


「当たり前です! 大魔王様を侮辱した罪! 身をもって思い知りなさい!」


 アーミーがいつになく激情している。


「貴女たちもですか?」


 リューキのこの言葉は、同じ悪魔族であるキラリと同じく高い戦闘能力を持つ吸血族のサリに対するものだ。


「キラリの心は魔王様のものだから~」


 プイッとキラリがそっぽを向く。


 その隣でサリも大きく頷いていた。


「私もこの世界に呼び出してくれたことに感謝してるから」


「貴女たちほどの方の言葉とは思えませんね。仕方ないですね。私の力の一部をお見せしましょう。地獄の雷!」


 落胆して見せた後、ギラリとリューキの目が怪しく光った。


 ●


「やめろっ!」


 リューキが攻撃を仕掛けたのと同時に少年魔王が叫んだ。


 魔王らしい有無を言わさぬ言い方に、リューキの体も竦む。少年魔王の周りを取り囲んでいた仲間たちの体も硬直している。


 しかし既にリューキは攻撃を仕掛けてしまっている。


 地面より地獄の雷が天へと登る攻撃、地獄の雷はわざと攻撃対象を外したにしても、少年魔王の目の前に発生させようと発動した。


 魔王らしい有無を言わさぬ言い方をした少年魔王の言葉は、例えばリューキに対してでも絶対であり有効。


 だが攻撃は止まらない。


 ――しかし。


 少年魔王の叫び声と同時にリューキの地獄の雷は発動し、地面から雷が発生した。


 それと同時にさっきまで曇り空だった天気が一気に変わり、空から雷が落ち、地獄の雷を一瞬にしてかき消してしまった。


「なっ……」


 その凄まじさは、モンスターの中で間違いなく最強であるはずのリューキを絶句させるほどだ。


『まさか……天候をも自在に操るというのですか――?』


「これが大魔王様のお力です。分かっていただけましたか?」


 誇らしげにアーミーが言う。


「え? ぼ、僕の力?」


 我に返ったかのように少年魔王がアーミーに聞き返す。


「どうやら」


 やや悲しそうにシーワクが口を開く。


「魔王様は、そのお力の凄さにまだ自覚がないようですの」


「無自覚にあれほどの力を使っていると言うのですか?」


 驚きと恐れの入り混じったような声をリューキが出すと、シーワクがそうじゃ。と頷いた。


 その言葉を聞いたリューキは、まさか。と呟いた。


 ●


「どうやら今回は私の負けのようですね。魔王。先ほどの非礼を詫びます。私を呼び出してくれたこと、恩義に感じます。貴方の手となり足となり敵対する者を葬りましょう」


 リューキは再び深々と頭を下げた。


「え? う、うん。よろしくお願いね」


 戸惑いながら少年魔王が頷くが、隣でアーミーはまだ怒っていた。


「今回は。とはどういう意味ですか? また次も攻撃を仕掛けるというような物言いですが?」


「貴女の洞察力には感服いたします。私は自分よりも弱い者に仕える趣味はありません。魔王が私よりも弱いと判断したならばいつでも私は敵に回ります」


 にこりと微笑みながらリューキが恐ろしい宣言をした。


「え? そんなの困るよ。ちゃんと仲間になってよ」


「大丈夫です大魔王様。先ほどのようなお力を出されれば何も問題はございません」


 アーミーがなぜか自信たっぷりに言う。


「さっきの力って僕どうやったのかわからないよ~」


「大魔王様なら大丈夫です」


 アーミーの謎の根拠のない自信がどこから来るのか、少年魔王はたまに不安になる。


 そんな2人のやり取りを見てリューキは、自分ももっと鍛錬せねばと決意を新たにした。

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