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第3魔王 水を求めて

 少年魔王たちはすぐに出発した。


 本当ならば、誰かが留守を守ったりするものだが、今のところ特に守らなければいけない物もないので、メンバー全員でちょっとした散歩がてら向かうことにした。


「なんかこういうのいいですね」


 少年魔王の隣でアーミーが微笑む。


 先頭をガーランドとダイキが歩き、その後ろを少年魔王とアーミーが歩いている。


「キラリ疲れたぁ~」


 アーミーの後ろを歩くキラリは相変わらず文句を言う。その隣のサリは似たような性格なのに意外とタフだ。


「きみ体力ないね? サキュバスってひ弱だっけ?」


「キラリはか弱いの~。サリちゃんはバンパイアだから元々の身体能力が違うじゃな~い」


 その言葉に少年魔王が反応した。


「そうなの?」


「そうですね。悪魔族と吸血族は元々身体能力は高めです。中でもバンパイア種は脅威の身体能力を持っています」


 にこりとアーミーが答える。


「オイラ達豚人種と兎人種は身体能力はそこまで高くないけど、それぞれ動物に特化した能力を得られます。だから獣人族なんです」


 キラリとサリの後ろを歩くサイタが少年魔王に補足説明をした。サイタの隣は同じ豚人種のケハタだ。


「例えば私たち兎人族はジャンプ力が高いんですよ」


 そう言ってアーミーが隣で跳ねる。


 確かに建物2階分くらいのジャンプ力はありそうだ。


 そのままアーミーは木に成っていた実を採って少年魔王に差し出した。


 今みんなが歩いている場所は、城から見て東側に広がる広大な森の中だ。


 畑や石材、金属の生産拠点の先に広がっている森。


 ガーランドが小動物を狩りに行っている時に、水が流れる音がしたと言っていたからだ。


「これは食べれるやつだね。前にダイキが採ってきてくれたやつ」


 そう言って少年魔王が木の実をかじろうとすると、キラリが泣きそうな声を出した。


「あ! ズルいですぅ~。キラリちゃんも疲れたからエネルギー補給したいですぅ~」


 そこで仕方なく全員で小休止することにした。



 アーミーとダイキとキュイが周囲にある木の実をたくさん採ってくれた。


 更にガーランドが鳥を人数分狩ってきてそれをサイタの炎の息でこんがり焼いた。


 心強い仲間がいるからか、外だというのになかなかに豪勢な料理だった。


「水の流れる音がしたのはもう少し先なの?」


 少年魔王がガーランドに訊ねる。


「あぁ。それに本当に水が流れているかは分からないぞ?」


 肉を食いちぎりながらガーランドが答える。


 食いちぎりながら肉を振り回すものだから、肉汁がみんなに飛んだ。


 それをせっせとキラリが拭いて回る。


「あんまり汚さないでよね~」


 外だというのに汚されることは嫌いなようだ。


「キラリは意外と綺麗好きだよね?」


 少年魔王がキラリを見ながら言う。


「そうなんですぅ~潔癖って言われますけど、汚れてるのは嫌なんですよ~」


 そう言いながらキラリがピタリと少年魔王にくっつく。


 それを見たアーミーが、あ! と言って離れてください。とキラリを引きはがした。


 2人の姿を見てサリは笑っている。


「きみたちホント仲いいねー」


「マスター! 何かの気配を感じます」


 ガブリスが少年魔王に言うと、言い合いをしていたアーミーとキラリがピタリと争いを辞めた。


「さすが鋼鉄族ですね。センサーに引っかかったのですか?」


 アーミーが訊ねるとガブリスはコクリと頷いた。


 鋼鉄族には、様々なセンサーがあり、そのセンサーによって色んな生物の気配を感じ取ることができる。


「生き物の気配と水の気配を感じる。」


 ガブリスがアーミーにそう答えると、ガーランドと共に立ち上がって小休止中の仲間を置いて周囲を警戒する。


 その姿を見てダイキとキュイが少年魔王を守るように挟み込んだ。


「大魔王様。私たちには戦闘向けの配下がいません。明日戦闘向けの配下を呼び出した方がいいかもしれません」


 戦闘能力などほぼないはずなのに、アーミーですら少年魔王を守るような仕草を見せた。


 ガブリスもガーランドも戦闘能力は高くない。その分索敵能力はまぁまぁある。


「もしもあの時僕を襲ったやつらと遭遇したらどうしよう……」


 怯えながら少年魔王が言うと、キラリが優しく少年魔王を抱きしめた。


「大魔王様のことは私たちが命に変えても守ります!」


 キラリが優しく少年魔王のことを抱きしめている姿を見て、アーミーが勇気づけるように言う。


 少年魔王は、目覚めたあの日に大人の男5人組に拷問をされた日々を思い出していた。


 ドクンドクン――少年魔王の心臓の音がうるさい。


 周囲を警戒するガブリスとガーランドの少し先を男女のペア5組が通り過ぎる。


「俺が攻撃したら、あのネコモンスターあっけなく死んでよー」


 通り過ぎながら1人の男が自慢げに話すのが、少年魔王の耳に聞こえる。


 キャッキャッ言いながら周りの女の子が、すごーい。とか言ってる。


 男女10人は話しに夢中で少年魔王たちに気づかなかった。


「さっきのネコモンスターって?」


「野生のモンスターでしょうか。野生のモンスターが人間に討伐されているのだとしたら由々しき事態です。助けて仲間に引き入れるべきかもしれません」


 少年魔王がほっと息を吐いてからアーミーに訊ねた。


「一旦帰ろう。今の僕たちではあの10人を倒せないと思うから」


 少年魔王が言うと、誰も異を唱えずに城へと戻って行った。


 しかし、城は何者かに破壊されていたようだ。


 田畑も荒らされ、生産されていたはずの石材と鉄も奪われていた。


 足跡の数や、残されていた形跡から先ほどの10人である可能性が高いと、アーミーは分析した。


「おで、怒りを覚えた。人間、敵」


 珍しくダイキが感情を露にしている。


 いつもはにこにこのキラリも両肩をわなわな震わせている。


「僕、決めた。人間と戦う」


 少年魔王はそう決意した。

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