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第1魔王 魔王城建築

「……え? どういうこと?」


 突然のことに困惑する少年魔王にアーミーは優しく微笑んだ。


「私は大魔王様の能力によって生み出された、いわゆるモンスターです。大魔王様はあらゆるモンスターを生み出せる能力をお持ちだと推測します」


「あ、少ない情報で色んなことを推測できるタイプ……僕がさっきそんな仲間が欲しいって願ったから?」


「はい。恐らくその力で私は生み出されたのだと思います」


 大きくにっこりしてアーミーが答える。


「僕にそんな力が……」


 自分の両手を見ながら少年魔王が感動する。


「大魔王様。まずはご自身のお体を手当てした方がよろしいかと思います。ここから出るならばその後でも問題はないはずです。あと、もしここに残るならば防衛機能を付けるのがよろしいかと」


 アーミーが頭を下げながら提案する。


「な、なるほど。手当てね……体中傷だらけなんだけど、何か血を拭くものとか持ってる?」


 次々に提案されて面食らった少年魔王が、頬から滴る血を手で拭いながら訊ねるとアーミーは首を横に振った。


「申し訳ありません。私は現在何も持っておりません。また、私はあくまでも相談役という立場でございます。大魔王様の身の回りのお世話をしたりする役目は担っておりませんので、傷の手当てもできませんし、どういった処置をすればいいのかなども、アドバイス程度しかできません。傷を癒す配下や身の回りのお世話をする配下を生み出してはいかがですか?」


 少年魔王が傷の手当てをお願いするのを見越したのか、最後の言葉を付け足した。


「お世話や傷の手当てか……そうだね……えーとどうやって生み出すのかな?」


「先ほどはどうやったのですか?」


 手を前に出すおかしなポーズを取る少年魔王を見ても、アーミーは一切笑わなかった。


「えーと確か……自分の相談相手が欲しいみたいなことをブツブツ呟いただけだったと思うよ?」


「多分ですが、大魔王様のお力はきちんと口に出さないといけないのかもしれませんね。それも、どんな力を持っているのかなどを具体的に言う必要があるのだと思われます。ここからは更に憶測になりますが、生み出されたモンスターの技などもしっかりと大魔王様の口から言わないと反映されないものと思われます」


「それって、アーミーが何も持たずに生み出されたことも関係してる?」


 アーミーが血を拭く物を持っていなかったことを思い出して、少年魔王が聞くとアーミーはこくんと頷いた。


「恐らく。傷を癒すモンスターを生み出すならそういう技があれば問題ないですが、どうせなら何か道具を持った状態で生み出せるか試してみてはいかがですか?」


 片手の人差し指を立てながらアーミーが提案する。


 深く考えてもしょうがないので、少年魔王はアーミーの提案通りにしてみた。


「えーと……傷や怪我を癒す力を持ってて、普段は僕の身の回りのお世話をしてくれるモンスター。手にノコギリを持って誕生……」


 5人の男が持っていた武器を思い出しながら少年魔王が、最後の言葉を付け足した。


 ポンと小さな音の後に煙がもくもくと立ち込めた。


 煙が晴れると、ピンクのショートカットに背中にコウモリのような羽が生え、右目に眼帯をしてた女の子がそこに立っていた。


 お尻からは、ちょろっと尻尾のようなものが生えており、先っぽがハートマークになっていた。


「はぁ~い~魔王様~。キラリちゃんで~す! 癒しの力を持ってまぁ~す。これから魔王様の身の回りのお世話とかをしちゃいま~す」


 眼帯の横にピースサインをしながら明るくキラリと名乗る16歳くらいの少女がウインクした。


「そ……想像と違うけどちゃんとノコギリは持ってるね」


「どうやら人格までは変えられないようですね。それに服装も自動なのでしょうか?あんな丈の短いエナメル質のスカートにおへそを出すシャツなんて、大魔王様のご趣味に合いません」


 ふんと鼻を鳴らしてアーミーが軽蔑した目でキラリの服装を見る。


「なぁ~にぃ~?」


 キラリが片手を頭の後ろに、もう片方の手を腰に当てて、体のラインを主張する。


「私はアーミーと言います。大魔王様の相談役です。以後よろしくお願いいたします。それではキラリさん。大魔王様の傷を癒して差し上げてください」


 きりっとした態度で言う。


 キラリは、は~い~と返事をすると、手を少年魔王の前にかざした。


 それだけで少年魔王の怪我があっという間に消えた。


「凄い……本当に癒しの力を持って生まれたんだ……」


「そうですよ~。魔王様がそう願って生み出したんですから~」


 んしょ。とキラリがノコギリを横に置く。


「これで、大魔王様が望んだ能力を得たモンスターが誕生することは間違いなさそうですね。しかも大魔王様が望んだ持ち物まで一緒に召喚されるとは……これは上手に使えばかなり凄い能力ですよ!」


 アーミーが目を輝かせながら言う。


「確かに……一度に仲間が2人も増えたしどうせならここにもう少し住んでもいいかもしれないな……」


「それなら守護モンスターを生み出すべきかと思います」


 少年魔王がこの地に住もうと考えると、更にアーミーが提案した。


「キラリは何をすればいいですか~?」


 少年魔王の傷を癒し終えたキラリは、少年魔王のお世話係だ。


 何か他にやることを探しているようだった。


「キラリさんは大魔王様の肩を揉んで差し上げてください。それでは大魔王様、守護モンスターの誕生をお願いできますか?」


 アーミーがキラリにやや強めに言った後、少年魔王に優しく微笑む。


「守護モンスターか……どんな能力がいいかな? キラリも肩揉みはいいから一緒に考えてくれないかな?」


 キラリがアーミーに言われて肩を揉もうとするのを止めて、少年魔王が言う。


 3人(匹)はどんな守護モンスターがいいのか考えることにした。


 ●


 少年魔王、アーミー、キラリは自分たちが居るこの場所を守る守護モンスターについて考えていた。


「キラリはどんなモンスターなの?」


 ふとした疑問を少年魔王が投げかける。


「キラリは悪魔族のサキュバス種ですぅ~」


 短いスカートをヒラヒラさせるようにお尻を振ってキラリが答える。


「キラリさん。腰をいちいち振るのはいかがなものかと思います。それよりも真剣にこの場所を守るモンスターを考えましょう」


「キラリは強そうならどんなのでもいいと思いま~す!」


 アーミーに怒られてもへこたれないキラリが、片手を上げてピョンピョン飛び跳ねながら元気に言う。


「キラリさんパンツが見えますよ」


 アーミーがキラリのスカートを抑えながらも真剣に考える。


「守護モンスターですから防御特化の能力がいいのではないでしょうか?」


「防御特化かー。体が硬くて防御力があってほとんどの魔法が効かない。とかできるのかな?」


「分かりませんが、さすがに何でもかんでもというのは無理なのではないでしょうか?」


 アーミーの言葉を聞いた少年魔王が、なるほどーと言って再び考え始めた。


「まずは特徴として防御力・魔法防御力が高い、そして攻撃を反射する力を持っている。ここを守る守護モンスター」


 少年魔王が言うと、ポンと小さな音がして煙がもくもくと出てきた。


 モンスターの生み出しに成功した合図だ。


「おで、ダイキ。ここを守る守護モンスター」


 巨大な灰色の岩で出来たような人間のような人形のようなモンスターがややカタコトの言葉で話す。


「あ、なんか今回は強そうだね」


 ほっとしたように少年魔王がアーミーに言う。


 アーミーもにこりと笑って、はい。と答えた。


 キラリはつまらなそうにしていた。


「もっとすごいのが出てくるのかと思ったのに~つまらないです~」


 ぷーと頬を膨らませながらダイキをポカッと殴った。


「おで、つまらなくない。おで、この場所を守る」


「まともにお話も出来ないの~?」


 きちんとした返事をくれないダイキに、ますますキラリがふくれっ面を見せる。


「ダイキさんは岩石族のゴーレム種に属します」


 簡単にはダイキの説明をしてからアーミーが今度はキラリに向かって話す。


「恐らくですがダイキさんは、与えられた命令を忠実に守ろうとしてるのではないでしょうか?」


 そう言ってダイキをチラリと見やる。


「おで、言われたことを守る。魔王様の役に立つ」


 こくりと頷いてダイキが答える。


「だ、そうです。とりあえずこれで安心ですね」


 にこりとアーミーが少年魔王に微笑む。


「ね~ね~。そんなことよりキラリちゃんはお腹がすきました~」


「言われてみれば僕もお腹すいたな。誰か料理とか出来ないの?」


 少年魔王が他の仲間を見るが、どうやら誰も料理が出来ないらしい。


 それどころかアーミー以外の2人(匹)は、どれが食べれてどれが食べれないのかすら分からないらしかった。


「食材は私も知識としてはありますが、料理はやったことがありませんね……」


 ふーむと考えながらアーミーが悩むと、キラリがじゃあさ。と提案した。


「料理上手なモンスター召喚しましょ~よ~」


 少年魔王とアーミーが目を見合わせて、それも有りだな。と互いに頷いた。


「それではえーと……ここに食材も見当たらないからな。料理上手な配下で何か食材を持ってここに誕生!」


 キラリやダイキを生み出したときよりも自信たっぷりに少年魔王が意気揚々と言うが、何事も起こらなかった。


「……どうしてだろ? 僕何か間違ってた?」


 少年魔王が若干恥ずかしそうに他の配下を見る。


 キラリは笑いをこらえもせずに爆笑している。


「あっはっは。魔王様面白~い。キラリこうやって笑うの大好きです~」


 キラリにバンバンと叩かれているダイキは岩でできた顔を一切変えない。


「おで、ご飯食べない。岩を体内に摂取するだけ」


「そうなんですか? 私たちはご飯を食べないと死んでしまいます」


 笑いを必死にこらえながらアーミーが言う。


「どうしてモンスターが出なかったんだろ?」


 少年魔王が困惑すると、アーミーが真面目に思案する。


「どうやら大魔王様のお力は、際限なく使えるというものではないようですね。これが魔力的な何かが要因なのか、それとも時間による制限なのか、そのどちらもなのかその他なのかは分かりませんが、使用制限があるということでしょう」


「え~キラリちゃんのご飯は~?」


 両足をバタバタさせながらキラリがわがままを言う。


「おで、外の木の実採ってくる」


 そう言ってダイキがのそのそと部屋の外に出ていった。


 暫くすると、両手いっぱいに果物を採ってきた。


「おで、果物とか木の実の知識ある。魔王様の役に立った?」


 大きくて硬そうな顔を傾げる。


「立った立った。ダイキちゃんは凄いわ~」


 キラリがダイキを撫でると、ダイキの無表情そうな顔が若干和らいだ。


 お腹がいっぱいになったみんなは、そのまま眠る準備をした。


 少年魔王はいきなりの出来事で眠気がなく、もう少し起きていることにした。


 ●


 風もなく静かな夜。


 月明かりと星明り以外の明かりはない。


 少年魔王は眠くなく起きていようとした。


 すると、お世話係のキラリはお世話をするものとして、魔王様よりも早く寝ることはしない。と言って起きるのに付き合った。


 アーミーは、第一の配下として先に寝るなどもってのほかと言って起きていた。


 ダイキはどうやら眠れない体のようだ。


「魔王様~眠くないんですかぁ~?」


 眠そうに目をこすりながらキラリが聞く。


「いきなりのことでちょっと眠くないんだよね……」


「眠ると不安なのでしょうか?」


 アーミーが少年魔王の心を正確に読む。


 午前中に酷い目に合った少年魔王は、眠っている間にまた攻撃されることを不安視していた。


 少年魔王がこくんと頷くと、アーミーが少年魔王の不安とその解決策を具体化した。


「ちょっと整理してみましょう。まず大魔王様は私を生み出すきっかけとなった人間のせいで酷く憔悴しておられる。これを解決するにはこの地をもっと防御力の高いものにする必要があります。それと罠の作成なども必要かと思います」


「それなら~どうせならここおっきなお城にしたいですぅ~キラリおっきなお城に住みたいです~」


 キラリが少年魔王を寝かせつけようと膝枕しながら言う。


「それならば、築城能力のある配下が必要ですね。それと調理能力のある配下ですね。大魔王様がもう一度お力が使えるようになるのかは不明ですが、まずは私たちで明日この地を強力なお城にするように考えましょう」


 アーミーが少年魔王に向かって微笑む。


「おで、魔王様を守る。魔王様、寝て休むべき」


 ふんっと、ついてもいない鼻から空気を出すような音をだしてダイキが言う。


 どうやら自分がいるのに不安そうにしているのが気に食わないようだ。


「ほらほら魔王様~、ダイキちゃんもあぁ言ってますから~寝ましょう?」


 ぽんぽんと背中を優しく叩いてキラリが少年魔王を寝かしつける。


 それを見たアーミーが感心する。


 見た目と話し方とは違って、アーミーはお世話係だ。不安そうにしている少年魔王を安心させて寝かせることも問題なく行っている。


 そして眠らないダイキ。


 意外と少年魔王の配下が、理にかなっているのだとアーミーは感じた。


 ●


 翌朝、少年魔王が目覚めると既にキラリは起きていた。


 ダイキが採ってきた木の実を、どこからか拾ってきた平らな石の上にキレイに並べていた。


「おはようございます魔王様~。食事の準備ができますよ~。アーミーちゃんはお寝坊さんのようですね~」


 まだ寝ているアーミーをチラリと見て、ニシシといたずらっ子のような笑みをキラリが浮かべる。


「本当だ。珍しいね」


 あくびを押し殺しながら少年魔王もアーミーを横目で見る。


 もそもそと出された木の実を食べていると、アーミーも起き出した。


「もうっしわけありません! 大魔王様!」


 開口一番の謝罪だった。


 少年魔王は別に気にしていないので、そこまで謝る必要はないと言ったのだが、アーミーは第一の配下としてあるまじき失態!と自分を罵っていた。


「そんなに真面目だと疲れちゃうよ~?」


 キラリが言うがアーミーは自分に何やらブツブツと呪いの言葉を投げかけていた。


「私は相談役失格だ……存在価値など皆無だ……死んだほうがいい……でもここで死んでは大魔王様のご迷惑になる……」


「アーミー? 一緒にご飯食べよう?」


 さすがに怖くなった少年魔王がアーミーに声をかけると、アーミーは自分を呪うことをやめ、木の実を食べ始めた。


「毎日木の実だとやはり力が出ませんね」


「キラリちゃんもう飽きちゃった~」


「力使えるようになってるかな? やってみようか? 料理上手な配下で何か食材を持ってここに誕生!」


 アーミーとキラリに言われて、再度モンスター召喚を試みた少年魔王は、昨日と同じ言葉をあえて使ってみた。


 モンスター召喚が成功した印の小さなポンという音ともくもくとした煙が立ち込めた。


 明らかにコックだと分かる帽子を被った二足歩行の豚が、片手に大きな包丁をもう片方の手に何やら得体の知れない肉塊を持って誕生した。


「オイラはサイタです。魔王様のために料理を頑張ります」


 ポタポタと謎の肉塊から血が垂れる。


「あー! キラリちゃんがせっかく掃除したのにぃ~」


 木の葉で作った雑巾でキラリが即座に床の血を拭き取る。


「えっとサイタはお昼くらいにみんなの分の食事の準備をお願い。ダイキは岩しか食べないらしいから要らないよ。僕はアーミーと罠とか考えるから、サイタとダイキとキラリで食材とかを採って来て。どれが食べれる物とか分かるかな?」


 少年魔王がサイタに聞くと、サイタが頷いて答える。


「もちろんです。食材の知識をふんだんに使って最高級のおもてなしをします」


 ぶんぶんとまた肉塊を振り回して血をそこらじゅうにまき散らした。


「あー! もぉ~」


 怒るキラリを無視して少年魔王はアーミーと一緒に外に出た。


「じゃ、よろしく頼むよ。サイタは調理長ね」


 手を振って外に出て少年魔王は、アーミーに自分の力がどんな感じか聞く。


「確定ではありませんが、1日に3回使える力の可能性が高いですね。残り2回使ってもう一度使えなくなって、また明日使えるならば確定ですね」


「自分の仲間をどんどん増やせる力か……仲間が増えるっていいね」


 ダイキの肩にキラリが乗って、サイタの指示で食べれる動植物を採っている姿を遠くに見て少年魔王が言う。


「これからもっと賑やかになるなら、この城は大きくて強力なものであるべきですね。まずは築城能力のある配下を生み出しましょう」


 アーミーの提案で、築城能力のある配下ガーランドが召喚された。


 大きな狼で、真っ黒でふさふさの毛が特徴的だった。


「魔王、俺は触れた物を使って色んな物を作れる能力を持っている。複雑な物を作る場合には設計図が必要だが必ず役に立つはずだ」


 低く渋い声でガーランドが話し、傍にあった石をいくつか触れて小さな塔を作って見せてくれた。


「ガーランドさん。あそこが私たちが今寝泊まりしている場所です。あそこを大きくて防衛機能もついているお城にしたいのですができますか?」


 アーミーが聞くとガーランドが首を振った。


「ここらにある石や木だけではかなり強い城は作れないだろう。それに俺の築城能力はあくまでも俺が運べるサイズの物にしか適用されない。巨大な物に触れてもそれを使えないんだ」


 それと、と更に続ける。


「一度に巨大な建築物も作れない。俺にはそこまで魔力があるわけではないからな」


「最初はどのくらいの高さまでなら作れるの?」


 少年魔王が聞くと、近くにある木を見てせいぜいその高さくらいまでだろうとのことだ。


 今少年魔王たちが寝泊まりしている場所は畳8畳程度の広さ。木の高さはちょうど2階建て分くらいだろう。


 つまり一度に畳8畳2階分くらいまでが建てられるということになる。


「今作ったお城を後から変更することはできるの?」


 とりあえずで作り、後から他のエリアなどを作りたい場合もあるだろう。


 そういう意味での少年魔王の質問は、材料さえあれば問題ないとのこと。ただし、それも畳8畳分2階建てまで。


「大きなお城を作るにはかなり時間がかかりそうですね」


 アーミーが少年魔王に言う。


「うん。でも時間はあるしさ、とりあえず僕たちが寝てるところ壁も弱いし穴空いててすき間風とかあるから、まずは周囲をぐるりと壁で囲ってくれる?」


 ガーランドは心得た。と嬉しそうに言って魔王城のエントランスになるであろう部分を一周ぐるりと回った。


「それでは魔王、必要な石材の摘出を頼んでも?」


 さも当然のようにガーランドが言う。


 つまり、壁となる石を採って来いということだ。


 もちろん少年魔王にもアーミーにも、他の誰にもそんな力はない。


「この辺に落ちてる石じゃためなの?」


 近くにある小石を拾って少年魔王が聞く。


「構わんが、かなりの量が必要だぞ?」


「大魔王様、石材の生産能力がある配下を呼び出しましょう」


 アーミーにそう言われて少年魔王は、石材を生産できてさらにそれを切り出したり加工できるモンスターを召喚した。


 ダイキと同じゴーレム種の女の子、キュイが召喚された。


 城となる場所の近くの小高くなった場所を石材生産地点と定め、一定時間が経過するとそこに石材が湧き出るようにした。


「石材生産能力って便利だね」


「これで石材を採ったら、ガーランドくんが運べるサイズに加工しておきますね」


 可愛らしい声でキュイが言う。


 この日の召喚能力はやはりこれ以上使えなかった。


 夜にはサイタの謎の肉塊料理が想像以上においしかった。


 城の建築はまだ材料がないため出来ていないが、入り口には2匹のゴーレムが守っている。


 今夜は安心して少年魔王は眠れた。


 少年魔王の魔王城建築は少しずつ形になっていった。

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