詰問
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『やあああああああ!』
こよみさんが、アリス目がけて“ブリューナク”を突き出す。
だけど。
『なっ!?』
アリスはカウンターのようにこよみさんへと無数の羽根を射出した。
『フン! アンタが近づいてたことくらい分かってたわよ!』
アリスが勝ち誇ったかのように口を歪める。
『くっ!? “アイギスシールド”!』
間一髪、こよみさんは“アイギスシールド”で羽根を全て防いだ。
『さあて……それじゃ始めようカシラ……って言いたいところだけど、興が冷めたから今日は帰るわ』
『はあ!?』
そう言うと、アリスはクルリ、と踵を返す。
『あ、そうそう。耕太……約束、忘れないでよね』
思い出したかのようにアリスはそう言い残し、一瞬でその場から消え去った。
◇
「お兄ちゃん、どういうことか説明してくれる?」
今、僕はリビングで正座しながら、腕組みして仁王立ちの小夜に詰問されている。
「え、ええと……ま、まあそういうことで……」
「そうことで、じゃ分からないんだけど」
はい、ごもっともです。
「そ、その、一応僕もヴレイファイブの裏方的な役割を担っていたりいなかったりしていて……」
「裏方? さっき、『ウチやブルーがピンチになった時、少なくともアンタ等より一般人の耕太くんのほうが助けに来てくれとるわ!』ってこよみお姉ちゃんの声が聞こえたんだけど?」
チクショウ、ぐうの音も出ない。
「ねえお兄ちゃん、なんでお兄ちゃんがこんな危険なことしてるの?」
「そ、それは……」
その時、ガチャリ、と玄関のドアが開く音が聞こえた。
「耕太くん……」
こよみさんは不安そうな、今にも泣きだしそうな表情で僕の名前を呟きながらリビングに入ってきた。
「こよみお姉ちゃん」
「あ……小夜ちゃん……」
「とりあえず、こよみお姉ちゃんもお兄ちゃんの隣に座って」
「あ、う、うん……」
こよみさんも、おずおずと僕の隣に正座する。
「二人とも、まさかあの“ヴレイファイブ”の一員だったなんて……ホントにもう……」
そう言って、小夜が頭を抱える。
「……ねえ二人とも、ヴレイファイブを辞めることってできないの?」
「「っ!」」
小夜から僕達にヴレイファイブ脱退を促されるだなんて……って、当たり前か。自分の兄がそんな危険なことしてるだなんて知ったら、普通は止めるよね……。
「あ、あの……」
すると、こよみさんが小夜の顔を窺うように手を挙げた。
「なあに、こよみお姉ちゃん」
「そ、その、ウ、ウチ達も辞めたいのはやまやまなんやけど、辞めたら多分、機密保持のためにウチ達と家族まとめて拘束される可能性があって……」
そうだった。
元々僕も、こよみさんがヴレイピンクだってことを知ったから、監視の意味でこよみさんと一緒に住むことになったんだし。
それに以前、こよみさんも辞めたいって言ったら、両親も拘束して一生日の目を見れなくすると脅されたって教えてくれたことがあった。
つまり、どう転んでも、僕達に辞めるって選択肢はもうないんだった。
「じゃあ何!? 二人ともこれから先もあんな怪人相手に危ない目に遭わなきゃいけないってわけ!?」
「「…………………………」」
取り乱す小夜を見ながら、僕達は押し黙る。
小夜が僕達のことを本気で心配してくれていることが分かるからこそ、僕達は何も言えなかった。
「……はあ、もう最悪……」
「ご、ごめん……」
「あ、ち、違うんや! 耕太くんは悪くなくて、全部ウチのせいで……せ、せやけど! ウチがどうなっても、耕太くんだけは絶対護ってみせるさかい!」
「もう! 今はそんなこと言ってないでしょ! 大体、私はお兄ちゃんだけじゃなくて、こよみお姉ちゃんも危険な目に遭っているのがイヤなの!」
「っ!」
小夜の言葉に、こよみさんが息を飲んだ。
「……当たり前でしょ? こよみお姉ちゃんはお兄ちゃんの彼女なんだし、その……私もこよみお姉ちゃんのこと好きだし、多分、私のお姉ちゃんにもなるし、家族だし……」
「あ……小夜ちゃん……」
「小夜……」
こよみさんが瞳を潤ませて小夜を見つめる。
僕は嬉しかった。
小夜がこよみさんのこと、そんな風に想ってくれて。
「だ、だから! 私は二人に何かあったりしたらイヤなの! 本気で何とかならないか、ちゃんと考えてよ!」
そう言うと、小夜は恥ずかしくなったのか、プイ、と顔を背けた。
「うん……うん……そやね、ウチも何とかならへんか、がんばってみる……」
「僕も……何か手がないか考えてみるよ……」
「絶対、だよ……?」
小夜がチラリ、と僕達を見る。
だから。
「「うん」」
僕達はそんな家族の優しい問い掛けに、ただ、力強く頷いた。
お読みいただき、ありがとうございました!
すいません、ちょっと明日からリアルが忙しくなる関係で、しばらくの間一日一話投稿とさせていただき、今後は夜一回のみの更新となります。
次話は明日の夜投稿予定です!
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