シフォンケーキ②
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「じゃあ次はメレンゲを作ります。これはかなりの重労働なので、僕がやりますね」
そう言うと、僕は冷凍庫に入れてあった卵白を取り出し、ボウルへと移した。
そして。
——シャカシャカシャカ。
僕はリズミカルに卵白を混ぜていき、途中で砂糖を数回に分けて加える。
「はわあああ……みるみるうちに泡立っていく……」
「はい、これはただひたすら泡立てないといけないので、結構大変だったりします」
そう、これはかなり腕が疲れるのだ。
……今度、ハンドミキサーを買おうかな。アレがあると楽なんだよなあ……。
などと考えているうちに、卵白にツノが立ち、フニャ、と倒れる程度の柔らかさのメレンゲが完成した。
おっと、そろそろオーブンを予熱しておかないと。
僕はオーブンのダイヤルを回し、一七〇度に設定して予熱を開始する。
「今度はこのメレンゲをそれぞれのボウルに一すくい入れて……じゃあ手分けして混ぜましょう。あ、メレンゲは潰れちゃってもいいので、しっかり混ぜてくださいね」
「うん! 分かった!」
僕とこよみさんは、それぞれボウルを泡立て器でしっかりと混ぜる。
なお、こよみさんにはチョコを担当してもらった。
チョコは色がついているので、混ぜ合わさっているかどうか確認しやすいからね。
「耕太くん、これでどやろ?」
「うん、マーブルになっているところもないですし、綺麗に混ぜ合わさってますね」
「やった」
こよみさんが小さくガッツポーズをする。
ああもう、こよみさんの一挙手一投足が可愛い。
さて……だけど次がシフォンケーキ作りの大事なポイントだ。
ここばかりは僕がしないとね。
ということで、まずメレンゲを半分に分けると、こよみさんから混ぜ合わせた卵黄生地の入ったボウルを受け取り、その半分をメレンゲの入ったボウルに入れる。
そして、ヘラでボウルの底からすくうようにして手早く混ぜ、ほぼ混ざり合ったら残りを加え、マーブル模様がなくなるまで同じように手早く混ぜて……よし、チョコクリームみたいに滑らかになったぞ。
今度はそれをシフォンケーキの型に流し込んで、と。
で、もう一つのプレーンも同じように混ぜ合わせ、こちらも型に流し込む。
そして、型を持ち上げたら。
——ゴトン。
キッチンの台へと落とした。
「はわ!? 耕太くん何してるん!?」
「あ、これですか? これは生地の空気を抜いてるんです。これをしないと、中に巣が入ってしまうんです」
そう言うと、もう一つの型も落とし、同じように空気を抜く。
「はわあ、そうなんや」
「はい、シフォンケーキのコツは、メレンゲと卵黄生地を泡がなくなってしまわないように手早く混ぜることと、しっかりと空気を抜くこと、この二つです」
そして僕は、二つの型を予熱したオーブンに入れる。
「さあ、後は四十分オーブンで焼けば完成です」
「はわあ……ホンマにケーキ屋さんとかで見るようなシフォンケーキができるんやねえ」
「ええ。さて、それじゃ、焼き上がるまで休憩しましょう」
「うん!」
僕達はリビングに行き、焼き上がるまでお茶を飲みながら待つことにした。
「はわわ……その……」
「? どうしました?」
顔を真っ赤にするこよみさんに、僕はあえて気づいていないフリをする。
だって。
「はうう……いや、その、ウ、ウチはもちろん嬉しいんやけど、その……この体勢……」
そう、僕は今、こよみさんを膝の上に乗せ、後ろから抱き締めるようにして座っている。
はあ……こよみさんの髪、シャンプーのいい香りがする。
「は……ん……ア、アカンよ耕太くん、そんな匂い嗅いだら……」
「すいません、こよみさんの髪、すごくいい香りがするものですから」
「はう……ん……くすぐったい……」
そう言うと、こよみさんが膝の上でモジモジする。
「こよみさん……キス、いいですか?」
するとこよみさんは、無言でコクリ、と頷いた。
なので。
「はん……ん……ちゅ……」
僕はこよみさんの顔をこちらに向けてもらい、キスをする。
そして。
「ん!? ……は……れろ……ちゅぷ……」
僕はこよみさんの口の中に舌を滑り込ませ、こよみさんの舌に絡めた。
するとこよみさんも、同じように僕の舌に絡めてくれる。
「じゅ……ちゅ……ん……ぷは……」
しばらく続けていた生まれて初めての濃厚なキスを、僕はようやく離した。
「……耕太くん」
こよみさんの瞳がトロン、となる。
「す、すいません……少し調子に乗ってしまいました……」
「う、ううん……その……ウチ、嬉しかったよ……」
「こよみさん……」
「ん……はむ……」
そして僕はもう一度、こよみさんに濃厚なキスをした。
◇
「さて、どうかな……」
時間になり、僕達はオーブンの中を確認する。
「はわあ! すごい膨らんでる!」
「うん、いいですね」
僕はビン二本をキッチン台に置き、オーブンから型を取り出すと、そのビンに被せた。
「さて、後は冷めたら型から取り出して完成です」
「はわあああ……メッチャええ匂いがする!」
こよみさんがウットリとした顔を近づけ、シフォンケーキの香りをくんくん、と嗅ぐ。
「あはは、それじゃ、その、冷めるまでまたリビングで休憩、します……?」
「あ……う、うん……」
その時。
——ピンポーン。
「……まさか」
「……い、いえ、先輩は司令本部に行ってるはずですし、さすがにそれはないかと……と、とりあえず出てきますね」
僕は一抹の不安を覚えながら、恐る恐る玄関のドアを開ける。
「……はい」
「あー! お兄ちゃん、久しぶり!」
そこにいたのは、久しぶりに会った妹の小夜だった。
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次話は本日夜投稿予定です!
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