朝ご飯
ご覧いただき、ありがとうございます!
今回から第4章、スタートです!
——ピピピ。
……パシッ。
「んう……もう朝か……」
僕はスマホのアラームを止め、布団から出て伸びをした。
前期テストも無事終了し、いよいよ夏休みになったのはいいんだけど……単位が思ったより取れてないから、今日から一週間、集中講義なんだよなあ……。
「はあ……っと、それより朝ご飯の支度をしないと」
僕は布団をたたんで押し入れにしまうと、顔を洗ってからキッチンへと向かう。
さあて、それじゃ朝ご飯の準備に取り掛かろう。
昨日の夜に研いでおいたお米を釜に入れて水を注ぎ、電子ジャーのスイッチを押したら、冷蔵庫からネギ、納豆、絹さや、プチトマト、鮭の切り身を取り出す。
まずはお味噌汁から。
昨日の晩に水を張ったお鍋から昆布を取り出し、絹さや、葉を取ったプチトマト、顆粒だしを入れ、一煮立ちさせたら火を止め、お玉によそった味噌を鍋の中で丁寧に溶いたらお味噌汁の完成。
次に、グリルに火をかけて温めている間に、納豆をボウルに入れ、みじん切りにしたネギとだし醤油、和からしを入れてよく混ぜる。
そろそろいいかな。
僕はグリル台にアルミホイルを乗せ、その上に鮭の切り身を乗せたら、グリル台を中に入れる。
で、タイマーをセットして……。
「えへへ……耕太くん、おはよ」
眠そうに目をこすりながら、こよみさんが笑顔でおはようの挨拶をしてくれた。
もうこれだけで、今日一日がんばれる。
「こよみさん、おはようございます!」
もちろん僕も、そんなこよみさんに笑顔でおはようの挨拶を返した。
「えへへ……なあなあ、今日の朝ご飯って何?」
「今日は絹さやとプチトマトのお味噌汁に、鮭の塩焼きに……それと納豆……」
「な、納豆っ!?」
納豆というフレーズが出た途端、こよみさんの態度が豹変した。
「あ、あれ? こよみさん、ひょっとして……」
「ア、アカンのや! ウチは食べ物は何でも好きやけど、納豆だけはアカン!」
ああー……そうなのか……。
僕は結構好きなんだけどなあ……。
「分かりました……ところで、こよみさんは納豆のどこが嫌いですか?」
「ど、どこが嫌いて、そらあの臭いや! あの臭いがどうしてもガマンできひん!」
臭いか……あ、そうだ!
「分かりました。じゃあ納豆はやめておきますね」
「はあー、良かったー……もうちょっとでウチ、死ぬとこやったわ……」
「あはは、大袈裟ですよ。それじゃ、こよみさんはリビングで待ってもらえますか?」
「うん! 顔洗ったりお着替えしたりしてる!」
納豆がないと分かって安心したこよみさんは、嬉しそうに顔を洗いに行った。
よし……今のうちに……。
僕は予定を変更し、小麦粉と卵を取り出すと、ボウルに卵を割ってよくかき混ぜ、そこに氷と水を加える。
さらにその中に小麦粉を入れ、さっくり混ぜたら、先程混ぜた納豆を投入。
火にかけたフライパンに一センチくらいの深さになるまでサラダ油を入れ、衣を入れた時に泡立ってすぐ浮いてくるようになったら、タネをスプーンでよそってフライパンの縁から流し込むように入れる。
少し揚がったところで、菜箸で穴を開け、裏返してまた穴を開ける。
きつね色になったら、納豆とネギのかき揚げの完成だ。
——ピピピ。
おっと、鮭の塩焼きも焼きあがったぞ。
グリルの火を止め、鮭の塩焼きを取り出し、お皿に盛りつける。
——ピーッピーッ。
今度はごはんか。忙しいな。
電子ジャーの蓋を開け、濡らしたしゃもじで空気を含ませるようにかき混ぜて、と。
「耕太くん! 何か手伝おか!」
着替え終わったこよみさんが、最高のタイミングでキッチンにやってきた。
「ありがとうございます。ちょうどバタバタし出したところなんです。それじゃ、こよみさんはごはんをよそってもらっていいですか?」
「まかしとき!」
よし、じゃあ僕はお椀に刻んだネギを入れて、そこにお味噌汁をよそう。
後は全部をテーブルに運べばいいだけだ。
「じゃあ、テーブルに運びましょう」
「うん!」
僕達は仲良くテーブルに運んで……。
「うーん……」
「あれ? 耕太くん考え込んでどないしたん?」
「ああいや……いつも通り向かい合わせで座るか、それともこよみさんの横に座るかで悩んでるんです」
「はわ!?」
「ほら、正面に座った場合は、こよみさんの美味しそうに食べる笑顔が見れるんですが、隣に座れば、すごく傍にいられますし……ううむ……」
「あ……うん……」
「こよみさんはどっちがいいと思いますか?」
「ウ、ウチは……今日はその……と、隣同士が、ええなあ……」
僕が尋ねると、こよみさんはモジモジしながら隣同士がいいと提案してくれた。
うん、こよみさんのその様子も可愛いですし、その答えも最高に可愛いです。
「はい。じゃあ今日は隣同士で食べましょう」
「う、うん」
ということで、今日のレイアウトはいつもと異なり、隣同士に並んで……。
「それじゃ……」
「「いただきます!」」
◇
「今日? 午前中は司令本部に行って、午後からは特に用事はないなあ……」
僕が作った納豆のかき揚げを美味しそうに食べながら、こよみさんが答えた。
「本当ですか? でしたら、僕も今日の講義は午前中で終わりますから、お昼に僕の大学に来てくれませんか?」
「そ、そらええけど……なんで……?」
こよみさんが意図が分からず、おずおずと尋ねた。
「はい。一度僕が通う大学をこよみさんに案内したくて……あとは、大学の知り合いに、その……」
「その?」
「……その、知り合いに、僕の彼女だって紹介したいなあ、なんて……」
改めて口にすると、何だか恥ずかしいなあ……。
だけど、こんな素敵なこよみさんが彼女だってこと、桐谷の奴に自慢したいんだよなあ……。
アイツ、なんだかんだでいつも僕のこと気にかけてくれてたし、もう僕にはこよみさんがいるから大丈夫だって、言っておきたいし……。
というのは建前で、やっぱり本音は自慢したいだけなんだけど。
「え、ええよ……」
「本当ですか!」
「う、うん……だって、ウチは耕太くんの彼女やさかい……」
「ありがとうございます!」
「うん……えへへ」
ああ、はにかむこよみさん、可愛いなあ……。
「あ、そ、それじゃ、校門前に来たら、RINEで連絡してくれますか? すぐ迎えに行きますから!」
「う、うん。分かったよ」
「あ、それと」
「?」
「今こよみさんが食べてるソレ、実は納豆です」
「はわわわわわわわわわわ!?」
お読みいただき、ありがとうございました!
次話は明日の朝投稿予定です!
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