怪人イタチソード①
ご覧いただき、ありがとうございます!
■イタチソード視点
「……ゴライドウまでやられてしまったな……」
ゴライドウ敗北の報を受け、私は腕組みをしながら静かに瞑想する。
それは、四騎将の同胞として、同じ“ファースト”としての哀悼の意を表するためのものなのか、それとも、私とヴレイファイブとの闘いが目の前に迫っていることに対する高揚を静めるためのものなのか……。
その理由は、私自身にも分からなかった。
「ねー……ゴライドウもバカだよね、もう少し待てば、対ヴレイファイブ用の新兵器が間に合ったのに」
カネショウはヤレヤレといった表情で肩を竦めて首を左右に振り、皮肉交じりに呟いた。
だが、そんな憎まれ口を言いながらも、カネショウはどこか哀愁を漂わせていた。
彼は彼なりに、ゴライドウの死に思うところがあるのだろう。
これも同じ“ファースト”である私だから、分かるのだろうな。
「……それで、新兵器というのは……?」
「うん。これなんだけどね」
そう言うと、カネショウはどこから取り出したのかは分からないが、円卓の上にその新兵器を並べる。
「これが……」
「そう。これが対ヴレイファイブの新兵器、“ダークパワードスーツ”と“ヴレイブレイカー”だよ」
「“ダークパワードスーツ”と“ヴレイブレイカー”……」
「そう。この前捕まえた“アイツ”から情報を入手したという体で、開発したものだよ!」
カネショウは誇らしげに胸を張りながら、新兵器について説明を始める。
まず、“ダークパワードスーツ”について。
これは、ヴレイファイブが着ているスーツ……“ヴレイスーツ”と同じ機能を有しており、着る者の筋力を補助して二倍以上の能力向上の効果があるらしい。
しかも、その外皮は柔軟かつ強固な素材が使用されており、防御力、耐久力も大幅に向上するとのことだ。
次に“ヴレイブレイカー”。
こちらは、特殊合金で成形された刀……いや、形状からして“鎌”と形容したほうが正しいだろう。
これは、ヴレイスーツのその強固な外皮すらバターを切るかのような切れ味だということだ。
「……で、このヴレイブレイカーは君の能力、“高周波振動”とすこぶる相性がいいと思うんだ」
「ああ、そうだな……その二つが合わされば、もはやこの世界で切れない物質はないかもしれない……」
私は、そのヴレイブレイカーと自身の両腕を交互に見つめた。
だが、これは……。
「うん……君が今考えている通り、君の両腕にあるブレードはこのヴレイブレイカーに交換する手術を行わないといけない。つまりこれは、“三回目の怪人化”を意味するんだ……」
そう言った後、カネショウは神妙な顔をして俯いた。
「ああ、分かっている……だが、それしか方法がないならば、そうするまでだ。お前が気に病むことではない……」
「イタチソード……」
「カネショウ、で、怪人化の手術はいつ行うのだ……?」
「今すぐ……って言いたいところだけど、まだアリスの“怪人化”が終わってないから、それが終わり次第ってことになるよ」
「そうか……」
そう呟き、私は席を立つ。
「イタチソード、どこに行くんだい?」
「……決まっている。まずはヴレイファイブ……いや、ゴライドウを倒したヴレイピンクについて、この目で調査する」
「どうして? “怪人化”さえ成功すれば、さすがに負けるなんてことはあり得ないと思うんだけど?」
「カネショウ……そう言いながら、我々は既に三桁を超える怪人が倒され、そして、四騎将が二人までも敗れたのだぞ? なら、今度こそ万全を期すべきだろう」
「それはそうだけど……」
私がそう説明すると、カネショウはなぜか困った表情を浮かべた。
だが。
「よく考えてみろ。スオクインは己の作戦に溺れて失敗し、ゴライドウは奴等を過小評価して敗れた。私は二人と同じ轍は踏まん」
「そう……だけど、くれぐれも気をつけるんだよ? もう四騎将に残ってる“ファースト”は、僕と君だけなんだから……」
「忠告、痛み入る」
私はそう言葉を残し、人間だった頃の姿へと戻ると、静かに部屋を出た。
■カネショウ視点
「イタチソード……」
ボクはこの部屋から出ようとする彼女の背中を見送りながら、静かに彼女の名を呟いた。
そして、彼女の背中が見えなくなった、その時。
「プ……プププ……アーッハハハハハハハ!」
ボクはこらえ切れず、とうとう吹き出してしまった。
「アハハハハ! いや、ホントバカだよね! なんで“ファースト”ってバカしかいないの!? 所詮二人とも、“あの御方”にとってただの捨て駒でしかないのに! なのに必死に尻尾なんか振っちゃって! あーオカシイ!」
ダ、ダメだ……おかしすぎてお腹が……!
「ちょっとお、私も大概だと思うけど、アンタも相当よね?」
「ヒー、ヒー……って、アレ、アリス?」
「そうだけど?」
「なあんだ、来てたんなら早く言ってよ」
そう言うと、アリスは腰に手を当て、深い溜息を吐いた。
「ハア……まあいいわ。それよりさあ、なんで私の“怪人化”がとっくに終わってるのに
あんなウソついたの?」
「んー、アレのこと? だって、死刑宣告を受けてから執行されるまでの期間が長いほうが、より心にダメージが与えられるからねー!」
そうそう、そのほうが見てるコッチは楽しいからね!
それに多分、“あの御方”も喜んでくれると思うんだよね。
「うわーサイアク。アンタ、仲間でしょ?」
「元カレをイジメることを最高の娯楽だって言う君のほうがサイアクだと思うけど? まあいいや。それよりイタチソードの次は、いよいよ君のお披露目なんだから、シッカリね!」
「分かってるわよ。まあ、あのヴレイピンクは私が……この、“怪人アリス=ヒュブリス”が絶対グチャグチャにしてやるんだから! ……そして耕太を……ああ……アイツの泣き叫ぶ顔が見たいわあ……!」
ヴレイピンクに憤怒の表情を見せたかと思ったら、今度は元カレのことを考えて恍惚の表情になるだなんて……ホント、イカレた怪人だよ……。
ま、だからこそ“あの御方”が気に入ったわけだけどね。
さあて……楽しくなってきたぞ!
お読みいただき、ありがとうございました!
次回からいよいよ第4章!ついに付き合った二人のイチャコラ振りに拍車がかかる中、敵もパワーアップ!
さてさて、こよみさんは、耕太はどうなるのか!? お楽しみに!
次話は本日夜投稿予定です!
少しでも面白い! 続きが気になる! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!




