初めてのデート④
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お弁当も食べ終わり、僕達は午後からもデスティニーワールド内で売られているキャラクターでデザインされたパッケージのポップコーンを片手に、色々なアトラクションを楽しんだ。
水の中に飛び込むジェットコースターや山をグルグルと走るジェットコースター、暗闇の中を走るジェットコースター……って、ジェットコースターやたらと多くない!?
ま、まあ、こよみさんが喜んでくれてるから、全然いいんだけど。
それと、園内では多くのキャラクターの着ぐるみが徘徊していて、こよみさんがそれを見つけるたびに近づいていった。
もちろんそんな可愛いこよみさんの姿を、余すことなく撮影してスマホに収めてますが何か?
白雪姫城にもあの後二回行った。
こよみさんは相変わらず感動しきりで、そんなこよみさんを見る僕も最高に幸せな気分だった。
「はわあああ……結局全部回れへんなあ……アトラクション、メッチャ多すぎ!」
「あはは、これだけ広かったら仕方ないですね。でも……回れなかったアトラクションはまた……一緒に来ましょうよ」
「あ……ま、また一緒に……来てくれるん?」
「もちろん何回でも。あ、その代わりですけど、ぼ、僕以外の人とは行ってほしくない……かな」
って、あああ!? こよみさんを独占したくて、つい余計なことを!?
だ、大丈夫かな!? 引いてないかな!? メンドクサイ男だって思われてないかな!?
僕は不安に駆られ、こよみさんの様子をチラリ、と窺う。
あああああ! こよみさんが俯いてらっしゃる!?
その時。
「ウ、ウチには……一緒に行ってくれる人なんて、耕太くん以外おらへんし……そ、それにその、耕太くんやないと、ウチも嫌やし……」
「ぼ、僕だってこよみさんだけ、ですよ?」
「う、うん……」
こ、これ、もうパレード待たなくてもいいんじゃ……。
い、いや待て耕太よ、まだガマンだ! ちゃんとパレードの時に告白するんだ!
だって、今日のこよみさんの白雪姫城での様子からも分かった。
こよみさんは、こういったロマンチックなシチュエーションが絶対好きなはず!
だからこそ耕太よ、耐えるんだ!
「あ、こ、耕太くん、どないしたん?」
「……え? あ、ああいえ、何でもないです。それより、もう夕方ですから、パレードの場所取りに行きましょう!」
「う、うん、そやな!」
◇
「はわあああ……パレード楽しみやなあ……」
僕達はパレードの舞台となる中央広場の前に陣取り、パレードが始まるその時を今か今かと待ち構えていた。
「はい、僕も……楽しみ、です……」
ダメだ……緊張して上手く話せる自信がない。
「こ、耕太くん、すごい汗やで? 大丈夫?」
心配そうに見つめるこよみさんがそう言うと、ハンカチで僕の汗を拭いてくれた。
「も、もちろん大丈夫です! はい!」
当然理由も言えない僕は、緊張でうわづった声で大丈夫だとアピールする。
「そ、そう? それやったらええけど……しんどかったら、ちゃんと言うんやで?」
「はい。ありがとうございます」
ああ、やっぱりこよみさんは優しい。
僕はこんな素敵な人に、これから告白……するんだ。
そして辺りは暗くなり、僕達を含めた観客が、静かに待っている。
すると、電飾の光に包まれたフロートが、ゆっくりと会場へと姿を現した。
おなじみの音楽とともに、ゆっくりと僕達の前を通過していく。
そのキャラクター達は、子どもも大人もみんなが知っているものばかりで、観客達がみんな嬉しそうな表情でそれらを眺めていた。
もちろん、隣にいるこよみさんも。
「はわあああ……めっちゃ綺麗……」
こよみさんは、感動でうっとりとした表情を浮かべている。
うん……こよみさんが大好きな、白雪姫が僕達の前を通過する時、その時に僕は……こよみさんに告白するぞ!
その後も、いろんなキャラクターのフロートが僕達の前を通過していく。
そして。
「耕太くん耕太くん! ほ、ほらあれ!」
こよみさんが興奮しながら、パレードの会場に入ってきたフロートを指差す。
それは、今日のお目当てで、僕が告白をする合図となる白雪姫のフロートだった。
「はわあああ……白雪姫、可愛いなあ……」
「は、はい……」
僕の心臓がこれ以上ないくらい速く鼓動する。
その音はうるさいくらい僕の耳に響き、こよみさんに伝えるべき言葉を急かす。
「耕太くん! ほ、ほら、ウチ達の前に来たで!」
「こ、こよみさん!」
「へ?」
僕は意を決し、こよみさんの名を呼ぶ。
「え、えっと、どないしたん……?」
いつもと違う僕の様子に、こよみさんの表情にも緊張が窺える。
「あ、えと、その……こ、こよみさん、その……」
ああ、落ち着け僕。
ただ、僕の気持ちを……想いを素直に伝えるだけでいいんだ。
だから。
「僕が……こよみさんの部屋の近くでへたり込んでたあの日……」
「…………………………」
「あの時……全てがどうでもよくなって、絶望して、もう壊れてもいいって思った時、こよみさんが僕を助けてくれたんです」
周りが幻想的な光と音楽に包まれる中、こよみさんはただじっと、僕の話に耳を傾けてくれている。
「それから、こよみさんと一緒に暮らすようになって、こよみさんを知るようになって、そして、僕の中でこよみさんがいっぱいになって……」
「うん……」
「こよみさん」
僕はじっとこよみさんの瞳を見つめる。
彼女は今にも泣きだしそうな表情を浮かべていて、その瞳は、不安そうな、諦めているような、だけど、期待しているような、そんな複雑な色をしているように感じた。
僕は……。
「こよみさん、僕はあなたが……」
その時。
「我々はダークスフィア! そして俺は四騎将の一人、怪人ゴライドウ! ここにいる全ての人間よ、絶望しろ!」
……僕はこの時ほど、怪人を憎いと思ったことはなかった。
お読みいただき、ありがとうございました!
次話は明日の朝投稿予定です!
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