相談
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「お、耕太! わざわざ見舞いサンキュー!」
「青乃さん、大丈夫ですか!?」
怪人ゴライドウの襲撃の後、一番ダメージの大きかった青乃さんは検査も兼ねて入院することになった。
それで今日、僕はそのお見舞いにやってきたんだけど……。
「ん? 大丈夫だよ。何つっても、“ヴレイスーツ”は世界最高峰の技術で作られた防護服だからな! それなりにダメージは軽減できるんだよ!」
ベッドの上で胸を張ってドヤ顔する青乃さんだけど……高田司令からは、本当はかなりの大怪我だと聞いている。
多分、僕に心配かけまいとして、無理をしてるんだろう。
ああもう、あの逃げたレッドじゃなくて青乃さんがリーダーをするべきだよ。
「そういや耕太、あの後レッドは……?」
「はい……まだ見つかっていません……」
結局あの後、ブレイファイブや司令本部だけでなく、警察機関も総動員してレッドの捜索に当たっているけど、何一つ手掛かりが見つかっていない。
「そうかよ……なあ耕太、アイツ……レッドのこと、どう思ってる?」
「レッド……ですか?」
正直、僕はあのレッドが嫌いだ。
自分中心に世界が回っていると勘違いしているような性格で、何といっても、こよみさんを目の敵にするようにして……。
「ハハ、今のお前の反応で分かったよ。まあ、だろうな」
「…………………………」
「だけどよ……アイツ、あれで結構使命感が強くてさ、ヴレイファイブとしてこの国の平和を守るっつって、真面目に訓練だってしてたし、一応危険には真っ先に飛び込んでいく奴だったんだ」
そう言って、青乃さんは少し俯いた。
「……あんな奴でも、四年も一緒に闘ってきたんだ……ま、話くらいは聞いてやらねえと、な……」
「青乃さん……」
なんだかんだ言って、ヴレイファイブにはヴレイファイブにしか分からない“絆”みたいなものがあるんだろう……。
僕はそんな懐かしむような、それでいて心配するような青乃さんを、ただ黙って見つめていた。
「……ところでさあ、耕太、お前ピンクとどうなの?」
「ど、どうなのって……」
青乃さんが空気を変えるためなのか、急にそんな話題を振ってきた。
え、ええと……返事に困るなあ……。
だけど、青乃さん見た目はチャラいけど面倒見がよさそうだし、むしろ青乃さんに相談に乗ってもらうっていうのもありかなあ……。
「そ、その……ぼ、僕としては、その、こよみさんとの仲を進展させたいって思ってはいるんですが……」
「ん? 何か問題でもあるのか?」
「いえ、問題ってほどじゃないんですけど……そ、そうだ青乃さん、普通、女の子とデートしたり良い雰囲気になるような場所だったりシチュエーションだったりって、あったりしますか?」
「…………………………ホホウ?」
そう尋ねると、青乃さんが僕の顔を見ながらニヤニヤしている。
「ハハハハハ! よし、この俺に任せろ! だけどそうなると……うん、変に背伸びするより、そのほうが二人らしいな!」
「え、ええと……何かいい案が?」
「オウ! ちょっと待ってろ!」
そう言うと、青乃さんはスマホを手に取って弄り始めた。
「……っと、よし。これでオッケーだな。おい耕太、ちょっとRINEのID交換させろ」
「は、はあ……」
僕はスマホのRINEアプリを立ち上げ、QRコードを表示させると青乃さんに見せる。
それを青乃さんは取り込むと、僕あてにRINEを送ってきた。
「そこのURLタップしてみろ」
「はあ……」
僕は言われるまま送られてきたRINEメッセージに張り付けてあるURLにリンクすると、QRコードが表示された。
そしてその上には、湾岸にある有名なテーマパーク……『東京デスティニーワールド』の表示があった。
「そのQRコードが一日フリーパスになってっから。で、もう一つURL張り付けてあったろ。そっちはピンクの分だから」
「ええと、その……そ、そうだ、お金を……」
「いいっていいって! その代わり上手くいったっつー報告、絶対しろよ?」
「! は、はい!」
「でだ、告白するんなら、夜のパレードの時がお薦めだぜ?」
「そ、そうなんですね! あ、ありがとうございます!」
うん、やっぱり青乃さんに相談して良かった。
これで……いよいよこよみさんに……!
◇
「へ? 今度の日曜日?」
「は、はい!」
僕はスーパーで買ってきたアジを捌きながら、隣でサラダ用の野菜を水洗いするこよみさんに提案した。
「そ、その日はウチも用事はないさかい、別にええけど……」
「ほ、本当ですか!」
「は、はわわ!?」
良かった! 日曜日はこよみさんとデートできる!
あ、あとは、青乃さんに教えてもらった通り、デスティニーワールドで僕がこよみさんをエスコートして、そして、夜のパレードで……。
う、うん……すごく緊張してきた……。
だ、だけど! ここで僕は告白を……!
で、でも、もし……もしこよみさんに断られたら……多分僕、一生立ち直れないかもしれない……。
「こ、耕太くん耕太くん!?」
「……え? は? え?」
「もう……ボーっとしてどないしたんや? 耕太くんらしくないなあ」
「あ、ええと……すいません……」
「え、いや、別に謝らんでも……」
そう言いながら、僕達は料理の続きに戻る。
三枚におろしたアジ二匹は、中骨と小骨を丁寧に取ってお刺身にする。
あ、でも一匹は、この前テレビで見たなめろうにしてみよう。
大葉、ネギ、すりおろしたしょうが、味噌を、捌いたアジの刺身と一緒に包丁で叩く。
それを滑らかになるまで何度も繰り返したら完成だ。
「耕太くん、それ何?」
「これ、この前テレビで見て、一度作ってみたかったんです。お酒にすごく合うらしいですよ?」
「へえー、楽しみや!」
キラキラした瞳でなめろうを見つめるこよみさん、可愛いなあ……。
そんなこよみさんを見れただけで、作ったかいがあったよ。
で、残り一匹のアジの刺身の横になめろうを盛り付け、一品完成。
次に、開きにしたアジ二匹に小麦粉をまぶし、溶き卵を絡めてパン粉をまぶして……鍋で熱した油の中に投入する。
ジュワーッという音が、聞く人の食欲をかき立てる。
「はわああ……ええ匂いがするー」
早速匂いにつられたこよみさんが、鍋の油で泳ぐアジフライを眺める。
「あはは、もうすぐ揚がりますからね。その間に、サラダの盛り付けをお願いしていいですか?」
「うん! まかしとき!」
衣がきつね色になり、ちょうど食べ頃に揚がったところで、キッチンペーパーを敷いた皿に乗せ、その横に櫛切りにしたレモンとパセリを添えた。
おっと、先に作っておいた豆腐の味噌汁も温めておかないと。
コンロに火を着け、中弱火で豆腐の味噌汁を温めながら、アジフライ、アジの刺身、サラダをテーブルに運ぶ。
ごはんを茶碗によそい、コンロの火を止め、味噌汁もお椀によそう。
それと……缶ビール二本を冷蔵庫から取り出し、お盆に乗せてテーブルへ。
「はわああ……美味しそう……」
「あはは、それじゃ食べましょうか」
「うん」
「「いただきます!」」
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次話は本日夜投稿予定です!
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