怪人ゴライドウ③
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『オラアアアアアアア!』
ブルーがゴライドウの腕めがけ、ヴレイブーメランを投げつけた。
『ん? なんだ?』
だけど、ゴライドウには全く効いた様子はなく、ヴレイブーメランは無常にも地面へと転がった。
「っ!? ブルー! 青乃さん! 早く逃げてっ!」
僕はタブレットに向かい、必死で叫ぶ。
『……耕太。悪いけど逃げらんねーのよ……!』
「な、何言ってるんですか!? 早く!」
『バーカ、俺が……俺達が逃げたら、みんなはどうなるんだよ……だったら、俺達がコイツを何としてでも止めるしかねえだろ……!』
「しかし……」
すると、青乃さんの背後でレッドが突然立ち上がった。
そして。
『ヒイイイイイイイイイイイ!!!』
「なっ!?」
なんとレッドは踵を返し、一目散に走っていってしまった。
ゴライドウから少しでも離れるために。
「な、何考えてんだよ! まだ青乃さんが闘ってるのに!」
『耕太……しょうがねえよ。実際俺だって、怖くて両足がガクガクしてんだぜ? アイツが逃げるのも無理ないって……』
「だけど! 青乃さんが!」
『へへ……当たって、砕けっ……!?』
近づくゴライドウに攻撃を仕掛けようとした青乃さんだったけど、ゴライドウに頭を鷲づかみされてしまった。
『ぐああああああああ!?』
ヴレイスーツ越しに、ミシミシ、と悲鳴をあげる青乃さんの頭蓋の音が聞こえる。
『しかしアレだな。ヴレイファイブというのは手ごたえも全くないわ、仲間を捨てて逃げ出す奴もいるわで、なんでこんな奴等に俺達ダークスフィアは負け続けたんだ?』
ゴライドウは悲鳴を上げる青乃さんを眺めながら、さも理解ができないといった様子で首を傾げた。
「くそ……! 誰か……!」
その時。
『むっ!? これは!?』
ゴライドウの身体にいばらの蔦が無数に絡まり、その動きを止める。
さらに。
『っ!? ぐあっ!?』
青乃さんをつかんでいた右腕が突然肘から両断され、青乃さんがドスン、と下に落ちた。
「こよみさん! 先輩!」
現れたのは、こよみさんと先輩……ヴレイピンクとヴレイバイオレットだった。
『ゴメン、遅くなった!』
『ホントよねー、ピンクが邪魔しなかったらもっと早く着いたはずなのに』
『何言うてんねん! 全部アンタのせいやないか!』
『二人とも! 今はそんなことを言い争っている場合ではないだろう!』
『『ハッ!?』』
二人めがけて突進してきたゴライドウに気づき、二人は咄嗟に飛び退いた。
『この蔦……オマエッ!?』
『フン、おあいにく様。今までよくも私を騙してくれたわね……ただで済むと思うな!』
ゴライドウはバイオレットの正体に気づいたんだろう。
先輩を鋭い目つきで睨むが、先輩も先輩で思うところがあるのか、殺気を込めて啖呵を切った。
『それより、これで形勢逆転や! このまま切り刻んだる!』
『クウッ!?』
こよみさんがゴライドウに素早く密着するとヴレイソードをゴライドウへと一閃する。
だが。
『カアッ!』
こよみさんに向け、超至近距離から四人に放ったあの攻撃……ジオイヅナを放った。
『っ!? チッ!』
こよみさんは咄嗟に身体を翻し、間一髪かわすと、ジオイヅナはその後ろにあった街路樹に当たった。
ただ、いきなり撃ったためか、威力はそれほどでもなく、街路樹の樹皮が剥がれた程度だった。
『クソッ! 一度撤退するぞ!』
『『『『ギー』』』』
ゴライドウは形勢不利と見たのか、戦闘員とともにその場を離脱した。
『っ! 待ちなさい!』
『待つんだバイオレット』
先輩はゴライドウ達を追撃しようとしたところで、高田司令が制止する。
『だけど!』
『まずは他の隊員達の救助が先だ。二人は三人を回収してくれ』
高田司令の指示に、仕方なくバイオレットは従い、こよみさんと二人で三人をヴレイモービルに収容する。
それより……。
「高田司令」
『ん? 上代くんどうした?』
「その……レッドはどうするんですか?」
『……撤退ではなく、敵前逃亡をしたんだ。おそらく諮問会議にかけ、その処分を検討することとなる』
「あ、いや、それはそうなんですけど……どこに逃げたか分からないんですが……」
『そんなはずはないだろう。ヴレイウォッチからその位置情報が……なぜ出ない!?』
そう。レッドが現場から逃げ去ってしばらくした後、突然レッドの位置情報が表示されなくなっていたのだ。
『くそっ! ピンク! すまんが急いでこの周辺を捜索! 上代くんの指示に従いレッドを探せ!』
『分かりました! 耕太くんお願い!』
「はい!」
僕はタブレットでレッドの位置を最後に見たポイントをもう一度確認する。
「こよみさん! 有楽町駅前のビルの前に向かってください! レッドの反応はここを最後に途絶えています!」
『分かった!』
こよみさんはヴレイビークル……モモに跨ると、大急ぎで指示した場所に向かった。
そして。
『アカン……どこにも見当たらへん……』
◇
■赤田将人視点
「ハアッ! ハアッ……!」
冗談じゃないっ!
なんだあのバケモノは!?
俺が今まで戦ってきた怪人と全然違うじゃないか!
あんなの……あんなの、勝てるわけがないっ!
「そ、そうだとも! これは戦略的撤退なんだ! リーダーで最も強い俺が殺されたら、これから誰が怪人に対抗するっていうんだ!」
そうだ! ブルー達他の隊員は替えがきくが、俺は特別なんだ!
俺はここで死ぬわけにはいかない!
「そ、そもそもピンクとバイオレットの到着が遅いのがいけないんだ! あの二人、後で覚えていろ! ピンクは戦隊から追い出し、バイオレットは一生俺に仕えさせてやるっ!」
そうだ! そうだとも! 今回の件は全部あの二人のせいなんだ!
だったら、相応の報いを受けさせないといけない……!
そう……特にバイオレットはその身体に分からせてやらないと……。
「アハハ! 君、本当に正義の戦隊ヒーローなの? すごくクズだよね!」
「っ! 誰だ!」
「えへへ、やあ」
現れたのは……子どもだと!?
「貴様! 子どもの分際でこのヴレイレッドに意け……あえ?」
今、首に“プスッ”って……?
「あええええええええええええ!?!?!?」
そして、俺の意識は途絶えた。
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次話は明日の朝投稿予定です!
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