司令本部③
ご覧いただき、りがとうございます!
僕達は今、全員で応接室へと移動しているんだけど……何でこよみさんと青乃さんが二人並んで話してるの……?
い、いや、青乃さんはこよみさんについての誤解も解けたし、メンバー同士仲良くすることはいいんだけど……。
な、何の話をしてるんだろう……?
僕はススス、と二人の傍に近寄ろうとすると。
「そうだ上代くん、例のノートとレポート、明日大学に持ってきたらいい? それとも家に届けよっか?」
隣を歩く先輩から声を掛けられ、二人に近づくことができない……。
「そ、そうですね。でしたら明日学校でお願いします」
とりあえず早く話を切り上げて、二人の会話を……。
「了解。あーでも、せっかく上代くんのために重い荷物を運んであげるんだから、それなりの見返りが欲しいなー?」
「ああハイハイ、いいですよ」
「本当! やったー!」
それよりあの二人が……って、もう会話が終わったのか、二人は離れ、こよみさんが僕のほうに近寄ってきた。
「……なあなあ耕太くん、その、なんでコイツと仲良く話してるん?」
「はい?」
「ちょっと邪魔しないで欲しいかな。今は私と上代くんは取り込み中なんだけど?」
「別にアンタには聞いてへんやろ」
「「は?」」
アレ? なんで二人ともそんなに険悪なの!?
「フン! 本当に目障りな奴だ!」
で、お前はさっきから何なの?
僕と先輩の周りをうろうろして、出てきた台詞がそれって……。
……もう帰りたい。
◇
「やあ、上代くんわざわざすまないね」
応接室に着くと、既に中にいた高田司令と秘書? の人が出迎えてくれた。
「い、いえ、その節はどうも……」
「はは、そういえばあの時以来だね。二人とも仲良くやっているようで良かったよ。ところで、まだこの時間は大学の授業があると思うんだが、こんなに早く来てもらって大丈夫だったのかい?」
高田司令が握手を交わしながらそんなことを尋ねてきたので、僕は先輩をジト目で睨む。
すると先輩はバツが悪いのか、明後日の方向に顔を背け、目を合わせてくれなかった。
先輩……覚えていてくださいよ。
「ま、まあいいか。今日みんなに集まってもらったのは他でもない。彼……上代耕太くんについてだ」
「僕ですか!?」
急に名指しされ、僕は思わず慄く。
「そうだ。先日の怪人の一件もそうだが、君は危険を顧みず、桃原くんと上手く連携して見事に対処してくれた。ついては、君にも今後、ダークスフィアとの闘いにおいてチームに参加してもらいたい」
「は、はあ!?」
司令の言葉に、こよみさんが机をバン、と叩いて立ち上がった。
「司令! どういうことですか! ダークスフィアとの闘いに、なんで耕太くんが巻き込まれなアカンのですか!」
「君の言いたいことは分かる。だが、これは司令本部として決定事項だ」
「そんな! そんなん……そんなん、また耕太くんに怪我させるんですか! いや、この前かてひょっとしたら死んでたかもしれへんのですよ!」
こよみさんが凄い剣幕で詰め寄ると、司令は宥めるように両手を前に出す。
「まあ話は最後まで聞け。もちろん耕太くんにヴレイファイブのような直接戦闘に関わらせるつもりはない」
「……どういうことですか?」
司令の言葉が理解できず、僕は司令に聞き返す。
「上代くんにはこの司令本部と連携して、君達ヴレイファイブの後方支援をしてもらうことにする」
「「「「「「「後方支援!?」」」」」」」
「うむ。先程も言った通り、先日の一件は上代くんの作戦と機転によって対処することができた。それに彼は、大学で生物工学を学んでおり、怪人について一定の知見も有している。なら、彼に君達のフォローをしてもらうことによって、今後激化する怪人との闘いを優位に進めよう、ということだ」
「僕が……皆さんの……こよみさんのフォローを……」
高田司令のその言葉に、僕は思わず呟いた。
「上代くん……どうだ?」
みんなの視線が僕に集まる。
そしてこよみさんは、不安そうに、心配そうに僕を見つめていた。
僕は。
「はい……僕でよければ、よろしくお願いします」
「耕太くん!?」
僕が出した答えに納得できないのか、こよみさんが詰め寄る。
「耕太くんよう考えや!? 現場に出えへんっていうだけで、組織に所属することになるんや! 色々と制限されてまうこともあるし、百パーセント危険がないわけでもないんやで?」
こよみさんが必死に僕に訴えかける。
だけど。
「こよみさん……僕、受けるよ。僕は、こよみさんを支えたい。こよみさんの隣に立ちたいんだ」
「っ!?」
僕の言葉に、こよみさんが口元を押さえ、泣きそうになる。
「……………………そやけど……そやけど、それで耕太くんが……」
「こよみさん」
僕はこよみさんの手を取る。
「こよみさん、高田司令も言ったじゃないですか。僕の役割は基本的に後方支援だって。もちろんこよみさんの言う通り、絶対安全とは言えません。ですが、僕、決めたんです。だから……だから」
こよみさんの目を見つめると、彼女の瞳から涙が零れ始める。
「ぐす……もう……ホンマに頑固やなあ……分かったよ、ウチが……ウチが耕太くんを守るから……せやから、よろしくお願いします……」
そう言って、こよみさんは深々と頭を下げた。
「はい……こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」
そして、僕も同じように頭を下げた。
その時。
「はあ? 何でこの俺が、こんな奴のフォローを受けないといけないんですか! 俺は反対ですよ!」
リーダーのヴレイレッドが、場の空気を壊すように横やりを入れてきた。
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次話は明日の朝投稿予定です!
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