出逢い①
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いよいよ本編スタートです!
今日、僕は彼女にフラれた。
彼女曰く、僕という男はつまらないそうだ。
『あなたって、いつもヘラヘラしているわね』
『あなた、本当にグズね。なんでこんなこともできないの?』
『彼氏? うーん、優しさだけが取り柄かな?』
彼女からはいつもこんな言葉を投げかけられていたけど、それでも、僕は彼女と一緒にいられて幸せだった。
彼女の名前は織部アリス。
僕と同じ大学の同級生で、同じゼミで、そして、僕の彼女。
いや、今は元彼女が正しいか……。
そんな彼女から今日、大学のキャンパスで告げられた言葉。
『あなたじゃ私と釣り合わないから、もう近寄らないで』
その言葉を聞いてから、僕の心にポッカリと穴が開いて、気がつけば雨に打たれながら壁にもたれ、地べたに座り込んでいた。
ここはどこだろう……。
キョロキョロと辺りを見回すけど、全く見覚えがない。
少なくとも住宅街のようだけど、周りには人もおらず、雨だけがしとしとと降り続ける。
まあ、いいや。
もうどうでもいい。
そう思い、僕は静かに目を閉じて、もう何も考えないようにした。
すると。
ついさっきまで雨に打たれていたはずなのに、もう雨がかかっていない。
雨が止んだのかな。
そう思ったけど、周りからはまだ雨音が聞こえる。
不思議に思い、僕はゆっくりと目を開けると、目の前には僕を傘に入れながら僕を覗き込む女の子がいた。
近所の小学生? いや、中学生だろうか。
その女の子は、おさげの髪型で眼鏡を掛けており、愛くるしい顔をしていた。
身長も百四十を少し超えたくらいだろうか。デニムのオーバーオールに長袖のTシャツを着ており、雨で少し裾が濡れていた。
「ニーちゃん、こんなところでどうしたんや? どっか具合でも悪いんか?」
女の子が心配そうに声を掛ける。
だけど、僕は女の子に返事をする気力もなくて、無言で視線を下へと落とした。
すると女の子は突然僕の顔を両手で挟み、そのままグイ、と無理やり自分のほうへと向かせた。
「こらニーちゃん、人と話すときはちゃんとお互い顔を合わさなあかんやろ。学校で習わんかったか?」
女の子は少し頬をふくらませ、怒った表情をした。
僕は、そんな彼女の表情が、仕草が可愛くて、思わず口元を緩めてしまった。
「お、ニーちゃん笑ったな。まあ、こんな美人が怒ってるのに笑うゆうんも、チョット失礼や思うけど」
そう言うと女の子は微笑み、僕の腕をつかんで、グイ、と引っ張った。
「とにかく、このまま雨に濡れたままやと風邪引くで。ウチの家、この近所やさかい、とりあえずおいで」
女の子に促され、とりあえず立ち上がったものの、僕はどうしていいか分からずオロオロしていると、スッ、と傘を差し出された。
「ほら、何してるんや。早よ傘持って」
「へ? 傘?」
「そや、傘は一本しかないんやさかい、ニーちゃんが持ってくれんと。ウチが持ってたら、背伸びして歩かなアカンやん」
そんな風に言われ、僕はおずおずと傘を受け取ると、持ち手に腕組みされた。
「え、えーと……」
女の子の行動に僕が思わず戸惑っていると、女の子はニヤリ、と笑った。
「ん? なんや? さてはこんなカワイイ美少女に腕組みされて、緊張してしもたんちゃう?」
「え、あ、えと、その……」
「なんやなんや、カワイイなあ。ま、あんまりからかうのもなんやし、早よ行こか」
「わ!? ちょっ!?」
僕は彼女に腕をグイグイと引っ張られながら、見知らぬ住宅街を歩いて行った。
◇
「ほら、ここや」
女の子に引っ張られながら連れてこられたのは、住宅街の中にある一軒のアパートだった。
「ここの二階の一番奥が、ウチの部屋」
そう言って、彼女は階段を軽やかに上っていく。
「ん? ホラホラ何してるんや。ちゃんとついて来な」
「え? う、うん……」
女の子に促されるまま、僕もその後に続いて階段を上がった。
そして、女の子は鍵を開けると。
「とりあえず、すぐバスタオル取ってくるさかい、そこで待っとって。ほら、そのまま入ってまうと、部屋の中びちゃびちゃになってまうし」
そう言って、女の子は中に入っていった。
言われた通り入口で待っていると、中からドタバタと音が聞こえる。
一体何してるんだろう……。
「ゴメンゴメン! はい!」
彼女からバスタオルを手渡されると、僕はそれを、顔を覆い隠すように頭から被って拭いた。
「あ、靴下は脱いでから上がるんやで」
彼女の指示通り靴下を脱ぐと、足の裏を丁寧にバスタオルで拭いてから部屋に上がる。
「んで、コッチがお風呂場やさかい、シャワーでも浴びてき」
「え!? い、いや、さすがにそれは……」
「何を遠慮してるんや。風邪引いたら元も子もないやろ。ええから、サッサと入る!」
女の子の言葉に思わず僕は躊躇すると、彼女はそんなことお構いなしに僕を脱衣所へ押し込んだ。
そして、見えないようにカーテンを閉められた。
「脱いだ服はそのまま洗濯機に放り込んどいて……って、さすがに下着だけはどうもならんから、自分で絞るだけでガマンしてや。羽織るモンくらいは何とか用意するさかい」
仕方なく僕は彼女の指示に従い、脱いだ服を洗濯機に入れ、浴室に入る。
蛇口をひねると、シャワーから熱いお湯が出てきた。
僕はパンツをそのお湯ですすいだ後、固く絞り、浴室の外へと置く。
そして、お湯を頭から浴びた。
……温かい。
雨で冷え切った身体が温まると同時に、彼女の言葉がこみ上げてくる。
『あなたじゃ私と釣り合わないから、もう近寄らないで』
気づけば、僕の目からはシャワーのお湯とは別のものが溢れていた。
「う……うう……!」
女の子に聞こえてしまわないように、僕は、声を押し殺して泣いた。
お読みいただき、ありがとうございました!
次話は本日夜更新予定です!
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