おにぎりと豚汁
GOMさんの作品とのコラボ企画!
「戦隊ヒロインのこよみさん」×「僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜」
ラスト! 第5話です!
「食らうのじゃ! 全てのモノよ凍てつき、氷の棺に覆われるがよい! 永久凍結地獄!」
まず最初に動き出したのはリーヤさん。
二人に向け、リーヤさんが広範囲の凍結魔法を繰り出す。
「そう簡単に当たってあげないのー!」
「フ……ぬるい!」
芽衣さんと飯綱先生は距離を取ってあっさり躱すと、リーヤさんに向かってフェイントを加えながら迫る。
そし……て?
「え、ええと……こよみさん?」
「まあまあ、後は誰が勝ってもウチ達には関係ない話やし、それよりもご飯作るほうに集中せえへん?」
そう言うと、少しだけ頬を膨らませたこよみさんが下から僕の顔を覗き込む。
「はは、そうですね。僕達は料理を完成させましょう」
「うん! それに……やっぱり、ウチとしては脱落してしもたんもチョットだけ悔しいさかい……」
そう、こよみさんはリーヤさんと芽衣さんに遠近両方から二人掛かりで攻撃を受け、たまらず場外に出てしまったのだ。
「ま、まあ、結果は残念でしたが、僕としてはこよみさんが負けて良かったと思ってます」
「な、なんで!? 耕太くんは白雪姫城で結婚式したないんか!?」
僕の言葉に、こよみさんが驚きと悲しさを瞳に湛え、僕をじっと見つめた。
「もちろん、僕だってこよみさんと白雪姫城で結婚式を挙げたいですよ?」
「せ、せやったら!」
矛盾する答えに納得がいかないこよみさんは、背伸びして僕に詰め寄る。
「ですが……僕は、僕自身の手で……いや、違うな。僕とこよみさん、二人の努力で、白雪姫城での結婚式を実現させたいんです」
「あ……」
そう説明すると、こよみさんが頬を赤らめて息を飲んだ。
うん……こんなある意味宝くじみたいにラッキーな結果で、僕とこよみさんの大切な結婚式を飾りたくないんだ。
僕とこよみさんの未来は、僕達二人で築かないと、ね。
「はわ……やっぱり、耕太くんや」
「え?」
「ううん……ウチが世界一好きになった男の子は、やっぱり世界一やった、ちゅうことや」
そう言うと、こよみさんは僕の身体に抱きつき、胸にその幸せそうな顔を擦りつけた。
「そんな風に考えられるのも、世界一素敵なこよみさんがいるから、ですよ?」
「はわ……耕太くん、大好き」
「僕もです」
「「「「「「「「「「コホン!」」」」」」」」」」
うわあ……闘っている三人以外の全員からジト目で咳払いされちゃった……。
「あ、あはは……さ、さあて、ご飯を作らないとですねー!」
「そ、そやねー!」
気まずくなった僕とこよみさんは、パッ、と離れ、豚汁とおにぎり作りを再開した。
でも。
——ぴと。
僕達は身体を寄せ合いながら、だけどね?
◇
「優勝は、リリーヤ・ザハーロヴナ・ペトロフスカヤなのじゃ!」
リーヤさんが芽衣さんと飯綱先生の二人を同時に場外へと叩き出すと、チエさんが高らかに宣言した。
「お、終わったのじゃ……」
全ての力を出し切ったのか、リーヤさんが闘技場でペタン、とへたり込んだ。
「リーヤさん、お疲れ様」
「タケ……此方は頑張ったのじゃ……」
「ええ……頑張りましたね」
闘技場のど真ん中で、武士さんがリーヤさんと見つめ合う。
「タケ……これで此方とタケは幸せな結婚を……って、元々結婚する予定じゃから、ひょっとして……あんまり関係なかったのかや?」
「あはは、そうですね。でも……」
すると、武士さんはリーヤさんをそっと抱き寄せた。
「あ……タケ……」
「僕とのために、こんなに一生懸命になってくれたこと……僕は永遠に忘れません……愛してます、リーヤさん」
「此方もじゃ……」
「「「「「「「「「「「「コホン!!」」」」」」」」」」」」
うん、いくら優勝したからって、こんなのを見せられては目に毒でしかない。
ぼ、僕だってこよみさんと二人っきりで……。
チラリ、とこよみさんを見ると、こよみさんも潤んだ瞳で僕を見つめていた、
そして、そっと手をつなぐと、僕達は静かに頷き合った。
「ウーン……しかし、そうなったら優勝賞品はナシ、ということになってしまうのう……」
「あ、それでしたら、こうしてはどうですか?」
すると、武士さんがチエさんの傍により、そっと耳打ちする。
「うむ! それは良いのじゃ! まさにお祭りなのじゃ! それー!」
すると、闘技場全体を囲むかのように、盛大に次々と花火が打ち上がった。
「はわあああ……綺麗……」
「そうですね……」
僕はこよみさんの肩をそっと抱き寄せ、色とりどりの花火を眺めた。
おっと、そうだった。
「みなさーん! 今日はお疲れさまでした! おにぎりと豚汁をご用意しましたので、みんなで食べましょう!」
「食べるのじゃ! 実は密かに楽しみにしてたのじゃ!」
「もう……負けちゃったけど、上代くんのご飯が食べられるんだから、まあいっか」
全員に豚汁をよそいつつおにぎりを手渡すと、みなさんが楽しそうに、そして嬉しそうに舌鼓を打った。
そして。
「アレ? 俺の分は?」
「あ……あれ……? 全員分用意したはずなんですが……」
鍋の中の豚汁はもう空で、おにぎりも一つも残っていない。
「えええええ……」
「あ、あははー……」
ガックリとうなだれる青乃さん……。
僕は、思わず苦笑いするしかなかった。
おしまい。
お読みいただき、ありがとうございました!
今回で3回目となる「こよみさん」×「異世界CSI」のコラボ、いかがだったでしょうか?
ムチャ振りにもかかわらずうまく調整していただいたGOMさん、今回もありがとうございました!
異世界CSIの武士視点の番外編は下記からお読みいただけます!
物語本編と一緒にどうぞ!
「僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜」
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